2 勇者なき勇者パーティ、出撃2
ティアナたち四人にパーシバルを加えたパーティは、作戦会議を行っていた。
ティアナは当然のように彼の隣だ。
「魔王国は強固な結界に覆われている。そのため、通常ならこちらから攻め入ることは不可能だ」
パーシバルが言った。
その横顔も凛々しく、ティアナはつい見とれてしまう。
「先日の魔王との決戦時に南部地域の結界を勇者の聖剣で切り裂き、侵入した。が、その結界も修復が進んでいるらしい。グズグズしていては結界を修復されてしまい、再侵入は不可能になる」
「魔王のダメージも癒えてないでしょうし、今を逃せば、当分は手を出せなくなる――ということですね、パーシバル様♡」
「そうだ」
ティアナの言葉にうなずくパーシバル。
「ああ、それと――今の俺は王子ではなく、君たちの仲間のつもりでいる。だから俺のことは『パーシバル』と呼んでもらえると嬉しい」
「そんな、恐れ多い……」
「仲間だと言ったはずだ」
パーシバルが彼女を見つめる。
やっぱり、素敵……!
ティアナはうっとりとした。
「で、本題に戻すが――実際のところ、勇者なしで魔王に勝てるのか?」
パーシバルがたずねた。
「魔王に大ダメージを与えたというのは、勇者の最終奥義だったな。それでも倒せなかった相手に、何か策はあるのか?」
「策は――ありません」
ティアナが言った。
先ほどまでパーシバルの横顔を見てうっとりしていた気持ちを抑え、頭の中を作戦会議に切り替える。
「ですが、そもそも先日の決戦では魔王は万全の状態でした。今はまったく違います」
「通常攻撃の連打で押し切れるはずだよ、パーシバル」
イングリットが言った。
敬語ではなく通常の話し方だった。
彼の言葉に従い、王子ではなく仲間の一人として接することにしたらしい。
「ボクの矢とティアナの剣、ユーフェミアの魔法。で、カトレアがみんなのバックアップ……いつもどおりの戦い方をするだけだね」
「わたくしも今の戦力で押し切れると考えておりますわ、パーシバル」
と、カトレア。
「私たちは……強い。勇者パーティは、勇者シオンの力だけで魔族と戦っていたわけではない……」
ユーフェミアも言った。
「つまり、普段の力を出し切る――それこそがあたしたちの作戦よ、パーシバル様……じゃなかった、パーシバル」
ティアナが彼を見つめる。
まだ照れが残っているが、彼のことを普通の仲間として話すことができた。
この調子で距離を縮めていきたいところだ。
まずは仲間として。
いずれは男と女として――。
「……分かった。俺も力を尽くそう」
うなずくパーシバル。
出立は二日後と決まった。
今度こそ、魔王を討伐するのだ――。







