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3 以前よりも強くなっている

魔王がデレはじめる回

 俺は魔王と別れ、聖剣のチェックをしていた。


「よかった……どこも壊れていないな」


 この聖剣と俺はつながっている。


『勇者』というのは、正確には『聖剣との適合者』を意味している。

 俺が傷つけば聖剣も傷つき、その逆も真。


 俺が瀕死の重傷を負ったから、聖剣にも相応のダメージがあるかと思ったけれど――。

 見たところ、刃こぼれ一つない。


「よし、トレーニングに付き合ってくれ」


 ヴンッ。


 俺の呼びかけに応えるように、聖剣の刀身がきらめいた。


「ふうっ」


 大きく息を吐き出し、俺は聖剣を掲げた。


 真っすぐに振り下ろす。


 ぶおんっ!


 風を裂く音とともに、地面に大きな亀裂ができた。


「これは――」


 俺は息をのんだ。


 今のは、攻撃スキルとかじゃない。

 ただの素振りで――その剣圧だけで大地を割ったのである。


 異常な腕力だった。

 いや、仮に攻撃スキルを使ったって、ここまでできるかどうか……。


 とにかく身体能力が異常なまでに増強されていた。


「どうなってるんだ、これ……?」


 俺の体は、いったい――。


「随分と体のキレがいいな。私と戦ったときより動きが鋭いんじゃないか?」


 驚いたような声が背後から聞こえた。


 魔王が立っている。


「あ、別に監視しに来たんじゃないんだ。休憩にコーヒーでもどうかと思って。紅茶もあるぞ」

「ああ、わざわざありがとう」

「邪魔をして悪かったな」

「いや、ちょうど一息つこうと思ってたんだ」


 頭を下げた彼女に、俺は言った。


 魔王が勇者に素直に謝る光景なんて、ちょっと前までは想像もしていなかったな。


 そもそも魔王とこうして日常会話をするなんて――。

 本当に、不思議な気分だ。


「一つ、相談してもいいか?」


 俺は半ば反射的に話を持ち掛けていた。


「ん、なんだ? 私でよければ話を聞くぞ」

「実は――なんか体がちょっと変なんだよ、魔王」

「変だと? 私の治癒が失敗していたのか?」


 魔王は心配そうに俺を見つめる。

 オロオロとしていた。


「なんだよ、そんなに慌てなくてもいいだろ」


 思わず苦笑する俺。


「いや、やはり心配だから……」

「魔王……?」

「ヴィラでいい」

「えっ」

「いつもいつも『魔王』と呼ばれるのは仰々しいのだ。ちょっと苦手……」


 ぽつりとつぶやき、はにかんだ笑みを浮かべた彼女は――宿敵である魔王とは思えないほど可憐だった。


 思わずドキッとしてしまう。


 いや、魔王相手に何ドギマギしているんだ、俺は……。

 確かに見た目はすごい美人だけど。


「じゃあ――ヴィラ」

「っ……!」


 魔王……いや、ヴィラの顔が真っ赤になった。


「あわ……あわわわわわ……」

「? どうしたんだ?」

「そ、その、男から愛称で呼ばれるのはお前が初めてだから……」

「えっ」

「そ、想像していたより1億倍くらい恥ずかしい……」

「意外と乙女なんだな……」

「うあああああ、【魔王火炎(ロードファイア)】!」


 いきなり巨大な火球をぶっ放す魔王。


 ぐごおおおおおおおうううううんっ!


 ……地面にでっかいクレーターができました。

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