16 魔界について
魔界。
それはこの世界とは別の空間に存在する『異世界』なのだという。
そして、魔界に住まう知的生命体を総称して『魔族』と呼ぶ。
魔族たちは太古からひそかにこの世界を訪れており、その一部は人間界にとどまり、亜人として扱われるようになった。
そんな人間界在住の魔族たちが築いた国こそが、俺が今いる『魔王国』なのだった。
「あたしたちは移住者なのよ。だけど、人間たちの中にはあたしたちのことを『侵略者』と呼ぶ者もいる。そんな人たちが集まり、魔王国を討伐する軍を定期的に結成しては、魔王国との戦いに発展している――」
「じゃあ、侵略者は人間たちの方なのか……?」
「最初はそうだったかもしれない。ただ、歴代魔王の中には人間の国を侵略した者もいるから、今では完全に泥沼ね」
ヴィラがため息をついた。
「あたしが願うのは平和だけ……でも、この国や魔界の魔族の中には『人間を滅ぼすべし』なんていう強硬派がいることも事実よ」
「……魔族にもいろいろあるんだな」
「ええ、人間にいろいろあるように、ね」
ヴィラは悲しげに言った。
とりあえず、『真の魔王』についてはヴィラが配下を使って調査し、新たな情報が出てくるまでは静観ということになった。
というわけで、俺とヴィラの緊急会議は終了した。
呪物の処理と『真の魔王』について、この二つがとりあえずの議題だったからだ。
「色々ありがとう、シオン」
ヴィラが礼を言った。
「あなたがいてくれてよかった」
「君を守りたかったんだ」
俺は彼女に微笑んだ。
「……感謝してる」
言って、ヴィラが抱き着いてきた。
「ヴィラ……?」
「また、相談してもいい……?」
「当たり前だろ。何かあったら力になるよ」
俺は――自然とそんなことを口にしていた。
相手が宿敵だという意識はすでになくなっていた。
俺は、彼女のことを――。







