12 口づけの余韻は
俺とヴィラは引き続き彼女の私室で話していた。
「やっぱり、呪詛兵器をこのままにはしておけないよな」
「……そ、そうね」
「もっと警備の厚い場所に移した方がいいんじゃないか?」
「……そ、そうね」
「ん、ヴィラ?」
さっきから上の空っぽい返事だな……。
そう思って彼女を見つめると、
「っ……! あわわわわ」
ヴィラが慌てたように視線を逸らした。
顔が真っ赤だった。
――やっぱり、さっきのキスに照れているんだろうか。
まあ、俺もめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
「さ、さっきは、その」
「ご、ごめんね、気分が高ぶって、ああいうことになったんだよね?」
ヴィラがますます慌てたように両手を振った。
「あたし、別に勘違いしたり、付きまとったりしないからっ……シオンだって、あたしなんかじゃ迷惑だよね……?」
「えっ? えっ?」
「あ、愛の告白的な行為じゃないって分かってるから……」
ヴィラがうつむく。
その横顔は悲しげだった。
「いや、その……」
俺は言葉に詰まる。
けど、ここははっきりと言っておくべきだろう。
「流れとか、雰囲気とか、いい加減な気持ちで君にキスをしたわけじゃない」
「っ……!」
「君を信じたいと思ったし、君ともっと深く心を触れ合えたら、ってそう思ったんだ。だから、あとは――夢中で」
「……あたしも、夢中だった」
ヴィラがぽつりとつぶやく。
「シオンと、もっと近づきたいって思って……気が付いたら、顔を近づけて……キス……してた」
言って、また顔を赤らめるヴィラ。
「ああ、もうっ、恥ずかしいよぉ……初めてだったのに……ぃ」
「えっ」
「ファーストキスよ、悪いっ?」
ヴィラが俺を軽くにらむ。
「い、いや、悪くなんて……ないよ」
俺は驚きつつも言った。
「可愛い」
言ってから、俺は照れてしまった。
「~~~~!」
ヴィラも声が出ない様子で、めちゃくちゃ照れているらしかった。
うう、なんだこの空気は……。
呪詛兵器の今後の対応について話そうと思ったのに、とてもそんな雰囲気じゃなくなってしまった。







