8 勇者と魔王の共闘2
「真の魔王、か。ヴィラルヅォード以外にも魔王がいるなんて知らなかったよ」
俺は奴らに向かってゆっくりと歩み寄る。
「お、おい、近づくな……というか、お前はなんだ……?」
「こいつ、人間じゃないか――」
魔族たちはようやく気付いたようだ。
「そうだ。俺は勇者シオン。今は魔王の元に身を寄せている」
俺はさらに近づいた。
奴らを刺激しすぎないように慎重に間合いを詰める。
――チャンスは一度だけだ。
俺はチラリと後方で控えるヴィラに視線を向けた。
彼女は小さく――奴らには気づかれない程度の、ほんの小さな動作でうなずく。
「勇者だと?」
「なぜ、勇者が魔王国に……?」
奴らはますます訝しそうな顔をした。
「人間たちが俺を犠牲にして魔王を殺そうとしたからさ」
俺はニヤリと笑った。
「なら、魔王側についた方がいいと判断したまで。幸いにも魔王は俺を重用してくれるようだ。こっちにいた方が、色々と美味い汁を吸える」
「……ふん、人間ってのも中々あくどいもんだな」
「ああ。だからお前たちとも仲良くできると思ってさ」
俺はニヤニヤ笑ったまま、もう一歩、二歩と近づく。
「近づくなと言っただろう。こいつを破裂させてもいいんだぞ?」
「ん? この距離で破裂させたら、お前たちも呪詛に巻き込まれるんじゃないか?」
俺は右手を前に突き出した。
聖剣ファリアレイダを呼び出す。
「お前――」
「いちおう警告するぞ。そいつをおとなしく寄こせ」
俺は奴らをにらんだ。
言いながら、背後のヴィラに視線を向ける。
こくん、とうなずく彼女。
よし、『準備』はできた。
「寄こさないなら――斬る」
「――ふん。こんなもの、放り捨てればいいだけだ!」
魔族は手にしたオーブを振りかぶった。
そのまま窓に投げ捨て、破裂させるつもりか!
「じゃあな! 俺たちは逃げるからよ!」
言いながら、オーブを投げ捨てる魔族。
その瞬間、
「ファリア!」
ヴンッ。
魔族の傍にファリアが現れ、放り捨てられて空中にあるオーブをつかみ取った。
奴らは、ファリアの存在を知らない。
だからヴィラにファリアを透明化する魔法をかけてもらい、奴らのところまで接近させた。
そしてオーブを放り捨てた瞬間に、そいつを奪わせたんだ。
「な、なんだ、こいつは!?」
「おおおおおっ!」
戸惑う魔族たちに向かって突進する俺。
一瞬で間合いを詰められたのは、それだけ俺の能力が以前より上がっている証だ。
聖剣を、振るう。
「がっ……!」
奴らを次々と斬り伏せ、残るは一人――。
「そいつは殺さずに捕らえろ、シオン!」
「分かった!」
そう、こいつからは『真の魔王』とやらの情報を得る必要がある。
俺はそいつに近づき、羽交い絞めにした。
「【バインド】!」
すかさずヴィラが拘束呪文を唱え、捕縛完了だ。