6 信じてほしい
「……私を疑っているのか、シオン」
ヴィラは硬い表情で俺を見据えた。
「私が嘘をついていると……人間界に禁忌の呪詛兵器をまき散らし、大量殺戮を目論んでいると……そう思っているのか」
「ヴィラ、俺は――」
思わず答えに詰まった。
まさに、その可能性を考えていたところだったからだ。
とっさに言い返せずにいると、
「答えてくれ」
ヴィラが前に出て、俺を促した。
彼女の瞳は悲しげだった。
「俺は」
言葉が、なかなか出てこない。
彼女を見つめる。
胸の鼓動が早まる。
胸の奥が、痛い。
裏切られたときの記憶が、何度も脳裏を巡る。
勇者パーティの仲間たちに裏切られたときも、ここまでの痛みはなかった。
ヴィラとの関係が揺らいでいるのが、つらいんだ。
気づかないうちに、俺はヴィラのことを――。
ごうんっ!
そのとき壁の一部が爆発して吹き飛んだ。
「なんだ……!?」
数体の魔族が入ってくる。
「――何者か。名乗れ!」
ヴィラはすぐに『魔王の顔』になり、彼らを一喝した。
「俺たちは――」
「真の魔王の配下――」
奴らはニヤリと笑った。
「真の魔王……!?」
俺は奴らを見据えた。
いずれも黒いマントとフードに仮面をつけている。
シルエットからすると人型か、あるいは獣人型の可能性もある。
「――魔族にもいろいろな勢力がいるのだ」
ヴィラが俺に耳打ちした。
「真の魔王と名乗っている奴に五人ほど心当たりがあるが――お前たちは、どの勢力か」
と、彼らに問いかける。
ヴンッ……!
彼女の両眼が妖しく輝いた。
催眠や洗脳系の魔法だろうか。
奴らから情報を聞き出すために、そういった精神操作系の魔法を使ったんだろう。
「ぐっ……」
奴らは顔をしかめつつも、魔王の魔法に抵抗してみせる。
どうやら、魔力が高い連中らしい。
「へへへ、それは言えませんねぇ、魔王様」
「言えば、俺たちの主に迷惑がかかる」
「俺たちの役目は、ここに封じられている呪詛兵器を持ち出すこと――」
言ったそいつの手には、黒いオーブがあった。