17 浄化一閃
「シオン、どうして私たちの邪魔をするの?」
ティアナが鬼の姿で叫んだ。
その声からは、かつての快活な響きは失われ、まさしく外見通りの悪鬼のような禍々しさがこもっていた。
他の二人も同じだろう。
姿だけじゃなく、存在自体が――『悪鬼』に侵食されつつあるのか?
「俺は、君たちをメリーアン様の呪縛から救う」
聖剣を構える。
かつて彼女たちに裏切られた痛みは、今も俺の中に残っている。
けれど今、俺が一番感じることは――。
ティアナたち四人を全員救いたいという気持ちだ。
たとえ甘くても、それが俺の本音なんだ。
だから――。
「おおおおおおおおおっ!」
俺は聖剣の力を最大限に高め、【浄化】を放った。
――一瞬、だった。
ティアナたちが悪鬼の姿から元の可憐な美少女へと戻る。
そのまま力尽きたように倒れた。
「なっ、こ、こんな……」
メリーアンが愕然とした顔で俺を見つめる。
「……メリーアン様、もう終わりにしましょう」
俺は静かに言った。
「俺が魔王との戦いで姿を消して……あなたはずっと心を痛めておられたのでしょう? 申し訳なかったと思っています。俺は――勇者としてではなく魔王の伴侶として、新たな人生を見出しました」
「私の元から姿を消して、あなたは……」
メリーアンが俺を憎々しげに見据えた。
「こんな女と……魔王なんかと添い遂げるのですね」
さすがにここまで態度に出されれば、俺だって理解できる。
メリーアン様は、きっと――俺のことをずっと想っていてくれたんだろう。
でも俺は、その想いに応えることはできない。
「私の恋心だけじゃない。あなたは多くの人々の期待を裏切り、勇者の地位を捨てるのですね」
「確かに、勇者ではなくなるでしょう。けれど、他者を助けたいという志まではなくしていません」
俺はきっぱりと言った。
「俺は魔王ヴィラと共に生き、魔界の側から人間界と魔界の平和を築いていく道を模索します。立場が変わるだけで――俺の『勇者の戦い』はこれからなんです」
メリーアンはハッとした顔になって、うつむいた。
「……意志は固いのですね」
「はい」
「その女と一緒に生きていくのですね」
「ヴィラは俺にとって誰よりも大切な存在ですから」
俺はメリーアンを見て言った。
「かけがえのない女性です」
「……人間と魔族が結ばれても、その関係は長続きしないでしょう」
「かもしれません。だから俺は」
決意を込めて、告げる。
「魔族に、なります」
あらためて――その場の全員に宣誓するように。
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