16 そして最後の戦いへ
「なぜ邪魔をする!」
ティアナが憎しみを込めて王子をにらみつけた。
他の二人も同じ顔だ。
「――これ以上の暴挙は見過ごせない。今のお前たちこそ、魔族そのものだ」
パーシバルが苦々しい顔で言った。
「メリーアン、お前もだ。彼女たちを変えたのはお前の術だろう」
と、振りかえる。
すると、そこに王女メリーアンの姿が現れた。
いつからいたのか――おそらく隠密系の魔法で隠れていたんだろう。
その表情は醜く歪んでいた。
俺が知っている優しくて穏やかな王女の顔じゃない。
一体、何があったんだ――?
「邪魔を為さらないで、お兄様!」
メリーアンがヒステリックに叫んだ。
「私を裏切って魔王などと結婚した男など――いっそ、ここで討ち果たします。そうすればシオンは永遠に私だけのもの……!」
言いながら、彼女は俺の背後にいるヴィラをにらんだ。
「メリーアン殿下……」
俺は呆然となった。
正直、俺は彼女の想いに気づいていなかった。
けれど、これではっきり分かった。
ティアナたちを悪鬼に変えたのは、全部――。
嫉妬からだった、というのか。
「メリーアン殿下……俺からもお願いします。もう、おやめください」
俺は悲痛な思いで言った。
「やめる? 何をです?」
メリーアンがニヤリとする。
「ティアナたちは元々あなたを裏切った極悪人……それにふさわしい姿に変え、捨て駒にしたまでです!」
「メリーアン……殿下……!」
「だいたいシオンもシオンです。なぜそんな女と一緒にいるの? ああ、騙されているのですね! ならば、その女を殺して差し上げましょう。そうすれば、あなたは私の元に――」
「もう、いいでしょう」
俺は首を左右に振った。
「俺はここでヴィラと一緒に生きていきます。あなたと話すことはもう何もない――」
「……そう。そうですか」
メリーアンはうつむいて、か細い声でつぶやいた。
「シオン様がそうおっしゃるのなら、仕方ありませんわ」
ふたたび顔を上げた時、その瞳にはさらなる狂気が宿っていた。
「命令です――ティアナ、カトレア、ユーフェミア!」
三人に対して叫ぶ。
「そこにいる裏切り者の勇者と汚らわしい魔王を、仲良く一緒に殺してしまいなさい!」
メリーアンの絶叫が響き渡った。
それに呼応して、三体の戦鬼が禍々しい殺気を放つ。
ヴンッ……。
三人の瞳から光が消え、その気配から生気自体が失せていく。
まるで意志のない戦闘人形にでもなったかのように――。
「――来るか」
俺は聖剣を構えなおした。
もう話し合いはできない。
最後の戦いが、今、始まろうとしていた。
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