10 悪鬼弓聖3
イングリットが今度は俺の足元を狙ってきた。
俺は即座に横へ跳んだ。
ほぼ同時に、地面が大きく爆ぜる。
「――なるほど」
この攻撃は彼女の視線と一瞬の溜め――おそらく意識の集中だろう――が引き金になっているようだ。
「なら、そのわずかな動作を読めば……」
俺はイングリットの瞳の動きは首の動きなどに着目し、攻撃発動の一瞬前に、それを察知する。
がおんっ!
がおんっ!
がおんっ!
彼女が放つ攻撃を、ギリギリで回避し続ける俺
「ちいっ、ちょこまかと――」
イングリットは苛立ちを隠せない様子だった。
俺はといえば、回避することはできているものの近づけないでいた。
「なんなんだ、あの力は」
「おそらくは――」
聖剣の状態のファリアが語りかけてきた。
「超古代の禁呪法だ」
「えっ」
「以前、魔王との最終決戦の際、彼女たちが君を自爆させようとしたことがあっただろう? 魔王もろとも葬るために」
「……ああ」
それは、俺にとって最も苦い記憶だった。
信じていた仲間に裏切られ、道具として利用され、そして殺されかけた。
あのときの絶望が脳裏をよぎる。
「あれと同質同根の術だと思う。厄介だぞ」
「なるほど……」
俺は表情を引き締めた。
「対抗手段は?」
問いかけると、ファリアはしばらく黙考した。
「おそらく、あの悪鬼の姿になったことで手に入れた力だろう。そして、あの悪鬼は『変身』したのではなく、巨大な外殻に本体が取り込まれているように見える」
その言葉に、俺はハッとした。
「じゃあ、あの悪鬼の中に生身のイングリットがいるっていうのか――?」
もしそうなら、助け出せる可能性がある。
俺は、その可能性に賭けてみようと思った。
「ファリア。どうすれば、あの外殻を破壊できる? どうすればイングリットを救い出せるんだ?」
俺は聖剣を強く握りしめた。
「教えてくれ――」
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