6 戻る場所
『今、どこにいる……? すぐに戻ってくれ……魔界が……侵略……され……』
「ヴィラ!? どうしたんだ! 何があった!?」
俺は叫んだ。
目の前の白騎士も、今はどうでもいい。
ただ彼女の切羽詰まった様子が心配でたまらなかった。
『戻っ……ううっ……うあぁぁぁっ……!』
最後に響いたのは悲鳴だった。
以降、念話らしき声は聞こえなくなる。
「ヴィラぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は絶叫した。
間違いない。
彼女に何かあったんだ。
直前の『魔界が……侵略……され……』という言葉と合わせるなら、他の魔族の一派が魔王城を攻めてきたのか、あるいは――。
「人間たちが、攻めてきた……!?」
どちらにせよ、ここにはいられない。
すぐに戻らなければ――。
「……俺は戻らなきゃいけなくなった。試練を中断することはできるか?」
と、白騎士にたずねた。
「試練は一度きりだ」
が、返ってきた答えは無情だった。
「一度きり――」
俺はうめいた。
「もし、ここで中断した場合、もう二度と試練を受けられない、ってことか?」
「左様」
つまり――ヴィラの元に戻れば、俺が魔族になる機会は永遠に失われる。
ヴィラと一緒に人生を歩んでいくという道は途切れてしまう。
「――試練を終えたい」
だが、俺はすぐに返答した。
迷っている場合じゃない。
たとえ、俺がヴィラと一緒に歩めなくなくなるとしても――。
今、彼女が迎えている危機を救うことが先決だ。
当たり前だ。
「俺は彼女を救いに行く」
「本当に、それでいいのか?」
白騎士がたずねた。
「構わない」
即答した。
葛藤も、躊躇も、今は要らない。
一刻も早く、ヴィラの元に戻るんだ。
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