3 試練を受けるか否か
「シオン――」
聖剣からファリアの声が響いた。
「よく考えろ。今ならまだ引き返せる」
「……引き返すつもりなんてない」
「君の決意の強さは分かっている。だが、試練に失敗すれば、君は消滅する」
ファリアが言った。
「私は……」
「なんだよ、妙に弱気だな」
「違う。私は――君に消えてほしくない」
ファリアの声に熱がこもった。
「もし君が魔族になった場合、私は君の元にいられないかもしれない」
「えっ」
突然の宣告に俺は呆然となった。
「どうして――」
「先に言っておくが、君の判断に対して何かを言うつもりはない。相棒として素直に応援している」
と、ファリア。
「だが、私は聖剣だ。君の体が完全に魔族のそれになったとき、君が私を今まで通り振るうことができるのか――私には分からない」
「ファリア……?」
「もしかしたら聖剣として、君は私に――ファリアレイダに拒絶される可能性がある」
今まで考え付かなかったが、確かにあり得る話だ。
大いに――あり得る話だ。
「お前と別れることになるのか……?」
「分からない。あくまでも可能性としてあり得るというだけだ」
ファリアが言った。
「本音を言えば、これからも君の力になりたいさ。君は相棒であり、私にとって無二の友だ」
「……ありがとう、ファリア」
俺は礼を言った。
「俺にとっても、お前は友だちだよ」
「だが、その友と――これから先、一緒にいられないかもしれない」
ファリアが続ける。
「いや、君を引き留めようとしたのは、私の中に未練があるからかもしれないな。友を失うかもしれない……聖剣として側にいられないかもしれないことが、私には寂しいのだ」
「ファリア――」
俺は驚いて絶句した。
そんなふうな言葉をかけられるとは思っていなかったのだ。
「もし君がここで魔族になった場合、私と君はお別れかもしれないからな。最後に本音を話したのさ」
告げるファリアの声には、どこか照れが混じっていたような気がする。
やけに人間らしい、照れくささが――。
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