1 進化のダンジョン、その最奥で
天使を退けた俺は、さらに先へと進んでいた。
目的は一つ。
ダンジョンの試練をクリアし、魔族になることだ。
愛するヴィラとずっと一緒に過ごしていくために――。
その後はモンスターを倒しながら、先へと進み、かなり奥まで到達した。
そろそろ最奥だろうか。
と、
「……どうした、シオン」
聖剣からファリアの声が聞こえた。
「えっ?」
「体が震えているぞ」
と、ファリア。
「不安か? それとも緊張か?」
「……両方だ」
俺はため息をついた。
キチンと決意をして、この選択をしたはずなのに――。
やっぱり、いざとなると自分が人間でなくなるというのは怖い。
不安と緊張、そして恐怖――。
「決めるのは君だ。人間のままでいたいというなら、それもまた一つの選択だろう」
ファリアが言った。
俺の考えを尊重してくれるのはありがたいし、嬉しかった。
「仮に君が人間のままでいることを選んでも、彼女は受け入れてくれるのではないか?」
「ヴィラは――そうだな。俺に魔族になってくれ、なんて言わないだろう。むしろ人間でいてほしいと思っているかもしれない」
俺は苦笑した。
「――!」
と、そこで不意に俺は真顔に戻った。
今、妙な気配がしたぞ。
「ファリア」
「分かっている。気配がする。人ならざる者……先ほどの天使とも、そして魔族とも違う」
ファリアの声にも緊張感が走る。
「シオン、私を構えろ」
「ああ」
俺は聖剣を抜き、戦闘態勢に入った。
一体、何が出てくる――?
それとも何かが待ち受けているのか。
どくん、どくん、と心臓が鼓動を早めていく。
『人間……お前がこのダンジョンの試練を受け、進化を望む者か』
前方から声が響いた。
かつ、かつ、と足音を立て、誰かが近づいてくる――。
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