12 誕生、勇者シオン2
「な、なんという強さだ――」
「まさしく、これぞ勇者の力――」
周囲が歓声を上げる。
「一瞬で俺たちを無力化した――」
打ち倒されてた英雄たちも、畏敬の念でシオンを見ているようだ。
(なんなのよ、この展開は……)
ティアナは歯ぎしりしていた。
まさかシオンが勇者に選ばれるとは想像もしていなかった。
彼だけが脚光を浴びた状態が、あまりにも妬ましかった。
と、さらに、
「お待ちくださいませ、皆さま」
カトレアが進み出た。
その全身が淡い白光に包まれている。
「カトレア……?」
先ほどまでと様子が違っていた。
彼女から受ける雰囲気が、格段に神々しくなっている。
「わたくしも――戦女神リゼルより力を授かりました。勇者を補佐する『大聖女』の力を」
「大聖女……?」
「その力で持って感知いたしました。シオン・エルフィード様こそ戦女神リゼルに選ばれた真の勇者だ――と」
大聖女のお墨付きを得た、ということか。
「どうして、あたしが勇者じゃないのよ……」
ティアナがうなだれた。
納得がいかなかった。
だが先ほどの戦いぶりを見れば、納得するしかない。
さっきまでは自分よりもずっと『格下』だった、たかが下級騎士が――。
今では、おそらくティアナよりもずっと強い。
その強さで持って魔王軍との戦争での中心戦力となり、活躍していくのだろう。
そして、世界の賞賛を一身に受けるのだ。
「なんで、あんな奴が……あたしじゃなく、あんな奴が……っ!」
新たに勇者が生まれた――。
世界は歓待ムードに包まれた。
だが、ティアナの心には、消えないしこりが残っていた。
絶対に――いつか、あいつを見返してやる。
思えば、あのころから。
シオンに対する『恨み』と『復讐心』が宿っていたのかもしれない――。
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