1 最終決戦の結末は
コミカライズ版、ニコニコ静画で配信中です!
※内容はダッシュエックス文庫版に準拠しているため、なろう版とは内容が異なります。
俺、勇者シオンが率いる『勇者パーティ』と『魔王ヴィラルヅォード』との戦いは最終局面を迎えていた。
「食らえ、魔王! 【光帝剣】!」
「ぐああああああっ……」
勇者の固有スキルを受けて、苦鳴を上げる魔王。
「お、おのれ……」
しゅううう……っ。
魔王の全身から白煙が上がっていた。
クールな美女然とした容貌は傷だらけで、痛々しい。
けれど、同情しているような局面じゃない。
相手は人間世界全体の宿敵である『魔王』なんだ。
倒せるチャンスに確実に倒す――。
それが勇者である俺の使命だった。
「いいぞ、シオン!」
「わたくしたちも勇者シオンに続きましょう!」
「いっくよ~、魔王!」
「攻撃……全員攻撃……」
と、仲間たちが次々と攻撃を繰り出した。
ごうっ!
ざしゅっ!
「ぐあああ……ぁぁぁ……っ」
そのたびに鮮血がしぶき、魔王は苦鳴を上げる。
「あははははっ。あの魔王を一方的にいたぶれるなんてね!」
「ふふふ、痛いですか?」
「魔族なんて何やってもいいんだからね。ほら、ストレス解消~!」
「一方的にいたぶる……快感……」
魔法弾が次々に彼女へと打ちこまれていく。
「あああぁぁぁ……ぎぁ……い、いたぃ……ぃぃぃぃ……っ」
苦鳴を上げながら後退する魔王ヴィラルヅォード。
並の魔族ならとっくに消滅している。
けれど魔王は圧倒的な再生能力を持っていて、どれだけ攻撃を受けてもなかなか死にきれない。
それが――俺には哀れに見えた。
「た……助け……て……」
とうとう倒れた魔王が声を絞り出す。
彼女の視線が俺と合った。
そのとき俺の中で沸き上がった感情は――魔王をようやく討ち果たせるという達成感や使命感ではなく。
ただただ、哀れみだった。
こいつは確かに魔王だ。
いずれ世界を闇に包み、すべてを滅ぼすと予言された存在。
だけど……だからって、ここまでいたぶる必要があるのか?
「もう、やめないか……」
俺はポツリとつぶやいた。
「えっ、シオン?」
「何をおっしゃっているのですか?」
仲間たちが俺を振り返る。
「ここまでやる必要はないだろう。殺すにしても、もっと楽に――」
俺は苦い思いをかみしめて言った。
「相手は魔王でしょ」
「うふふ、わたくし、美女が苦しみもだえる姿に興奮しますわ」
「うわー、ちょっと変態だよ~」
「嗜虐嗜好……ドS……」
仲間たちは楽しげに笑いながら、なおも攻撃を続ける。
魔王を倒すという使命感ではなく、明らかに快楽として――。
これが……こいつらの本性なのか……!?
――そして、運命の時が訪れる――
「さて、と。いくら傷ついても、魔王はまた復活してしまうわね。そろそろトドメと行きましょ」
「アレをやって仕上げ、ですね」
仲間たちがうなずき合う。
「仕上げ?」
なんの話だろう?
首を傾げた瞬間、
「【カオスバインド】」
大聖女カトレアが呪文を唱えた。
同時に俺の全身が魔力の鎖で縛られる。
「う、動けない――」
どういうつもりだ!?
「言ったでしょ。これから仕上げだって」
聖騎士ティアナが笑う。
「魔王には無限の再生能力と【不死】の固有スキルがある。それを打ち破るために、勇者の命を使って『強制自爆』させる――勇者だけが使える禁断の最終奥義だね」
弓聖イングリットが冷たい表情で告げた。
「勇者の……命……?」
つまり、俺の――。
「説明はここまで……」
極魔導師ユーフェミアが冷然と告げる。
「がはっ!?」
次の瞬間、彼女たちから矢継ぎ早に攻撃や魔法が飛んできた。
斬撃が、気弾が、矢が、魔法弾が――。
次々に叩きつけられ、俺は激痛に叫んだ。
体が動かないから、攻撃され続けることしかできない。
痛みと苦しみで意識が遠くなる。
「シオン、あなたは魔王を道連れに死んで、世界を救った英雄になるの――」
「安心してください。あなたの武勇伝はわたくしたちが後世に伝えますわ」
「ボクたちはこれからの人生を楽しく過ごすからね~」
「褒賞……名誉……楽しみ」
「お、まえ……ら……」
意識がどんどん薄れていく。
激痛がどこまでも続く。
こんな形で、俺の人生は終わるのか。
勇者だなんだと祭り上げられて――。
これが……俺の最期か……。
…………
……。
――そして。
「うう……っ」
俺はゆっくりと目を覚ました。
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今までの僕の書籍化作品と違い、今回はウェブ版から内容が大幅に変更され、新エピソード満載です! とはいえ、基本コンセプトの勇者シオンと魔王ヴィラがイチャラブする部分などはそのまま……というかラブ度300パーセント増しくらいになっているので、ぜひよろしくお願いします~!
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