電力の確保
在富は、発達していない技術でも製作可能な機械を探していろいろと再現させていた。
先ずは日本に豊富な水力を利用する為にタービンの研究を始める。タービンにもいろいろあるが、在富はニコラ・テスラのタービンに目を付けた。
テスラタービンは流体の粘性を利用する為、比較的低めの技術でも再現出来る。その代わり、高出力を求めるには限界があるのだが、それでも水車に比べれば効率がいい。
タービンの開発に合わせ工作機械の精度も上げて行く。
タービンの出力が上がれば旋盤にも余裕が出来る。その旋盤でベアリングなど機械の部品を作り直し性能を上げる。
性能が上がった旋盤でタービンの部品を作り直しタービンの出力を上げる。
そうやって最終的に百馬力の出力を確保した。
他にも試行錯誤の末、フライホイールと組み合わせるなど工夫をして安定した動力の確保に成功する。
安定した動力が得られた事により、八幡では本格的な機械工業が始まる。
翌年には、このシステムにイェドリク・イシュトヴァーンのダイナモを組み合わせて発電機を開発。これにより、水力発電として常時利用出来る電源が確保されたのだった。
水力発電と言っても、都市へ電力を供給できる様な規模ではないが、実験室レベルでは十分であり、化学物質の電気分解などに利用された。
在富達の研究により、八幡には19世紀の技術が再現されようとしていた。
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久々に大宰府に赴き、八幡を見学した忠冬は驚いていた。
「300年は時代を先取りしているって、これは凄いんじゃないのか?」
「ははは。我をあがめよ!本当は、焔統衆達が頑張ってくれたんだけどな」
この頃の焔統衆には鍛治師や陶工などの技術者に加え、公家や僧侶、薬師や医師など雑多な知識層も参加し、在富の指導の下で科学者が生まれようとしていた。
「だけど、やっと安定した電源が確保出来た段階だからな。モーターの性能もまだまだ低いし、何より油田やレアアースが足りない」
「レアアースな。なんとかオーストラリア大陸は日本で確保したいな」
「それにはスペインとポルトガルに対抗しないといけない。そのうちオランダやイギリスも台頭してくるだろうしな。海軍までは手が回らないぞ?」
「とりあえず、琉球とは話が出来る様になった。ちょい島津がじゃまだけどな。なんとか台湾までは行けそうなんだけど」
この頃の日ノ本の船は和船のみであり、追い風と艪による推進しか出来なかった。速度も遅く、積載量にも限界がある為に外海の航海には無理があったのだった。
本編はホノボノベースの物語になってます。
そちらもよろしくお願いします。
鷹司家戦国奮闘記
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