収穫
日が昇り辺りが明るくなってきた。
ヒロは皆より少し早く起きて軽い運度をする。それがヒロの毎日のルーティンなのであった。
皆が目を覚ましてから分担して、朝の食事の食材を確保する。アウラ達とルイは魚を調達、ヒロとカルディアは山菜を集める事にした。
「そういえば、カルディア。お前は里を出る時に旅用の資金を支給されたんじゃないのか?」すでにヒロの財布の中は空っぽになっていた。ちょっと浪費が過ぎたかと反省している。ここでカルディアと出会えた事で、淡い期待が芽生える。
「私の分は……、私の分も含めてあなたに支給されていたはずよ。確か、そう五十万ガン!」カルディアは、何故か焦ったような表情をしてからヒロを指差した。
「いや……そうだったのか……、俺が貰った金は……、実は……、全部無くなった」ヒロはカルディアから視線を反らした。
「えっ、ええ!!ご、五十万ガンを!!って、村を出てからそんなに経ってないのに!?一体、何に使ったのよ!!」カルディアは驚きのあまりひっくり返りそうになった。カルディアには、多少なりとも金銭感覚がヒロよりは備わってるようである。
「いや、あの、アウラ達を……、助ける為に……」相変わらず宙を見つめたままであった。
「アウラちゃん達を……、ふーん、まあ仕方ないというか、それにしても本当にヒロらしいわね」カルディアは呆れ過ぎて逆に吹き出してしまったようだ。
「あっ、これ食えるのかな?」ヒロは少し誤魔化すように木の根っ子に生えている茸を指差した。
「それはワライタケ!食べたら幻覚症状が出て死ぬまで笑い続けるわよ」カルディアは少し呆れ顔でヒロの手を払った。
「じゃ、じゃあこれは?」別の茸を指差す。
「それはタマゴテングタケ!食べたら強烈な嘔吐と下痢で衰弱死するわよ」また、ヒロの手を払い落とした。
「お前、ヤケに詳しいな!」カルディアに叩かれた手を擦りながら近くに生えている別の茸を手に取ろうとした。
「それは触っては駄目よ!カエンタケ!触るだけで皮膚が爛れるわよ!」
「ゲッ!!」ヒロは飛び上がるように退いた。
「あなたねぇ……、師匠が教えてくれたでしょ!全然覚えてないのね!!」カルディアは再び呆れた顔をしてヒロを見つめた。「食べれるのは、それとそれとそれ!」彼女は辺りに生えている茸を指差した。
「あっ、ああ」ヒロは言われるままに、カルディアが示した茸を集め、皆が食べれる位の量を確保してそれをポンチョを袋の代わりにして運んだ。
「ちょ、ちょっとあれ……」驚くカルディアの視線の先には大量の魚が積み上げられていた。
「こら!また不要な殺生を……」ここまで言いかけたところで、コイツらならこれくらい食べるのだろうと思い言うのを止めた。カルディアの使い魔であるルイも嬉しそうに魚を捕まえている。その光景は、まるでアウラ達とルイが親子のように見えた。
そういえばルイは雌の狼であった事をヒロは思い出していた。
「もうそれぐらいでいいから、今度は調理師するぞ」ヒロは消えかかっていた焚き火の中に、集めておいた木の枝を放り込み、火の勢いを復活させた。周りには、アウラ達の捕まえた魚を串刺しにして並べ焼いた
「ああ、もうお腹一杯!これ以上は食べられないダニ!」イオは膨らんだお腹をさすりながらゴロリと寝転んだ。
「本当、それに凄く美味しかった」カルディアも満足したようだった。案の定、あの大量の魚を彼女達はすっかりとたいらげたのだった。
「こりゃ、いくら捕まえても足りないわ……」ヒロは呆れて溜息をついた。