休息
「それでは、オリオンの父上を殺害したのは、あのハデスという男なのですね」朝になるとヒロの体は完全に回復していた。イオの治癒術式とこの家の夫婦、リュキア達のお陰であった。
「ああ、まず間違いないだろう。前に来た刺客の中にハデスの腹心ロギンという男が紛れていた。僕には国王殺しの汚名を着せて、あとはグラウクスを殺せば次の王位継承は国王の弟であるハデスだ。きっと君達の里に暗殺を依頼したのもハデスだろう」暗殺者にはターゲットは教えられるが依頼主の事は一切告げられない。捕らえられた時に依頼主の情報が漏れないようにということであろう。
「それでは、ハデスをなんとかしなければ、弟君が……」リュキアが口にする。
「しかし、オリオンはとにかく、俺とカルディアは武器がない。どうすれば……」ヒロとカルディア達は囚われの身であった為に、武具はすべて城の中であった。
「それならお任せください」リュキアが胸を叩いた。「昔、オリオンから賜った剣が一つ、それと俺が護身用に持っている剣がある」そう言いながら二本の剣を差し出した。
個人用と言った剣はごく普通のものであったが、オリオンから貰ったという剣は見事な装飾をあしらった見事なものであった。
「人に見せると、ろくなことがないから家の宝として隠していたんだ。剣も飾られているよりは君達に使ってもらえるほうが嬉しいだろう」リュキアからヒロは剣を受け取った。
確かにそれはヒロが持っていた剣とは雲田の差の業物であった。
「本当に、これを使わせて頂いて宜しいのですか?」ヒロはリュキアに聞く。リュキアは無言のまま頷いた。
「グラウクス、カシオペア、そして母ガイアの命を考えれば、今晩にでもハデスをなんとかしなければいけない。ヒロ……、俺に協力してもらえるか?」オリオンはこの計画実行にはヒロの助けは必須と考えているようだ。
「ああ、俺の体はもう大丈夫だ!なんでも謂ってくれ」ヒロは快く返答をする。
「……私もヒロがやるなら、手伝うわ」カルディアが同調する。
「カルディア、ありがとう」オリオンが深々と頭を下げる。
「ちょ、ちょっと、私はオリオン様の為じゃなくて、ヒロの手伝いをするだけなんだから……」カルディアはプイッと横を向いた。
「ありがとうな、カルディア」今度はヒロが礼を言う。カルディアは頬を染める。
「アウラ達もやるっちゃ!」「おお!!」アウラ達ももりあがっている。
「ありがとう。本当にありがとう」オリオンはアウラ達にも礼を述べた。
「で、具体的にどうやって城に忍び込むんだ。正面突破でいくのか?」ヒロはオリオンの考えを聞く。彼女的には正面突破が自分にあっているように思った。
「いや、出来るだけ衛兵達は傷つけたくないんだ。俺が子供の頃、リュキアと遊ぶ為に使っていた抜け穴がある。そこを使うと城の中に入る事ができるんだ。あれは衛兵達もハデスも知らない筈だ」オリオンはリュキアの顔を見る。リュキアは少し笑っていた。
「そうだなあれを使えば城に行けるな」リュキアもそれを知っているようであった。
「ヒロさん、貴方の服を直しておきました」リュキアの妻がヒロの服を修復してくれた。鞭で体と一緒にボロボロにされた服。とても乙女が着ていられるものではなかった。
「ありがとう!前より素敵だ」ヒロは飛び上がるように喜んだ。継ぎはぎをしていたが、彼女が丁寧に修復してくれた事がよく解った。
「それでは夜に備えて一眠りして体を休めよう」オリオンは皆に指示する。
「イオはお腹が空いたダニよ……」イオが餓死でもしそうな顔をしている。
「あっ、そうだな。食事をしてから休息するか」
「やったー!」一番先に喜びの声を上げたのはカルディアだった。「あっ……」彼女は恥ずかしそうに小さくなる。
「美味しい物を用意するから期待しておいてくださいね」リュキアの妻が微笑みながら台所の方に姿を消した。
そしてたくさんの美味しい食事を終えてから、一同は夜に備えて眠りについた。




