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暗殺者

 あるオフィスの部屋。そこは社内でも解りにくい場所にありその存在を知っている社員は少ない。


 その部屋に二人の男が机を挟み商談のような会話をしている。

 黒い上下のスーツにノーネクタイ。その頬はこけて体は異様なほど痩せていた。この男は暗殺を生業なりわいにしている。彼はこの世界では『龍』と呼ばれていた。それ以外、彼の情報を知っている者はいない。


 今回の彼への依頼は、ある会社の大株主でもある社長、その妻と娘の処分であった。

 彼の暗殺の手段は完璧であり、今までもその仕事が事件として扱われた事はなかった。その代わり報酬は莫大な金額で、そう易々と依頼を出来るものではなかった。


「今回のターゲットの写真だ」依頼者の男は三枚の写真を龍に手渡した。


「ふーん、解った……」受け取った写真を順番に眺めていく。

 父親、母親そして娘。写真を確認する龍の目が娘の写真に釘付けになる。


「どうかしたか?」依頼人は龍の様子に気づく。


「い、いや、綺麗な娘だな……」珍しくターゲットに興味を持つ暗殺者に依頼人は意外な一面を見たような気がした。


「ああ、お前みたいな人間でも、その娘にはかれるか」依頼人が笑う。


「何だと!?」龍は少しの殺気を込めた目で依頼人を見つめる。


「あ、いや、その子は昔から社長の自慢の娘でな。なにか催し物があれば必ず同伴させていた。その娘は本当に美しくて誰もが惹き付けられる。しかし、その娘を生かしておいて何処の馬の骨か解らん男に会社を乗っ取られるのも困るのでな……」一瞬この龍という男から放たれた殺気にも似た気配で、依頼人の男の背中は冷や汗で濡れた。


「そうか……」


「変な気を起こすなよ。まあ、殺す前に何をしようと、それはワシらも知らんけどな」依頼人はいやらしい笑いを見せる。


「下衆が……」龍という男は小さな声で吐き捨てた。

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