罪と罰
ガムシャラに食事をするイオの姿があった。本来、丸一かかるであろうバーブンへの道のりであったがオリオンの馬とルイが一同を背中に乗せて走り続けたおかげで、半日ほどで到着する事が出来た。到着したバーブンの町でカルディアを休ませる事が出来そうな宿屋を見つけ、目を覚ましたイオに食事をさせているところであった。
「オリオン様……」ヒロは神妙な顔をしてオリオンの顔を見つめる。
「ん、どうかしましたか?」オリオンは落ち着いた感じで、飲み物を口にした。
「申し訳ありませんでした。カルディアを、それにイオ、それから俺もあなたに助けられました。あなたを暗殺しようとしていた俺達を……、あなたは……」ヒロは体全体を震わせながら涙を流した。
「ああ、そのことですか?もう結構ですよ。いい運動になりましたし」オリオンはいつもの爽やかな笑顔を見せる。
「でも、俺達は、あなたを本気で殺そうとしていたんです。如何なる罪も俺が受けます。だから、カルディアとアウラ達は……」ヒロは涙で濡れた顔のまま、オリオンを見つめた。
「それじゃあ、また僕を襲ってくる者がいるかも知れませんので、僕と一緒に旅をして僕を守ってくれませんか?」オリオンは机に腕組をして前のめりになった。
「いえ、俺よりもオリオン様のほうがずっと強いです……よ」ヒロはオリオンの提案に戸惑っていた。
「そうか……、それでは僕の友達になってください。それが君達の罪滅ぼしです」
「えっ!」ヒロは驚きの声をあげた。
「正直言うと、一人旅に飽きて来たところなんですよ。君達と一緒なら、もっと楽しく旅を出来そうな気がするんですが……、駄目ですか?」オリオンは相変わらず爽やか笑顔を見せる。
「イオはオリオン様大好きダニ!!」イオが食事の手を止めて元気に言った。
「おやおや、ありがとう。イオちゃん……だったね」オリオンはイオ頭を優しく撫でた。イオは嬉しそうに微笑んだ。
「解りました。それでは俺達はひとまず従者と云うことでお供いたします。それであなたの国に帰ってから処分を……」
「それはもういいです。言ったでしょ。僕は従者ではなく友達が欲しいのです。だから、友達を処罰などしませんよ。この話はこれで終わりです」言うとオリオンは席を立ち自分の部屋へ向かった。
「オリオン様……」ヒロは彼の人柄に惹かれていく自分がいる事を感じていた。
「ヒロ様、美味しいダニよ!一緒に食べるダニ!」イオがヒロに肉が刺さったフォークを差し出した。
「ありがとう。本当にカルディアが助かったのはお前達とオリオン様のお陰だ」少し涙を目に溜めながらヒロはイオの差し出した肉を食べた。
「不味いダニか?」泣いているヒロを見てイオは聞く。
「ううん、美味しい……」ヒロは微笑んだ。