入浴
「あぁ、こんなに大きなお風呂は久しぶりだわ。気持ちいいわね」カルディアは湯船に体を浸かりながら目を瞑り赤い顔をして幸せそうに呟いた。
ルイも変化を解いて入浴を堪能しているようである。
「イオはやっぱりヒロ様と一緒に入りたかったダニよ……」彼女はまだ諦めがつかないようであった。脹れっ面で仰向けになって浮いている。
「もう、駄目よ!あなたも体だけは女の子なんだから、その辺は気をつけなさい」カルディアはまるで母親のように言った。
「でも、気がつかなかったけれど、カルディア様は意外と巨乳なんだっちゃね」アウラがカルディアの胸元を見てから自分の胸を確認して大きなため息をつく。カカは会話に加わらず泳いでいる。
「ちょ、ちょっと……、何言ってるのよ……、これ位普通よ。アウラちゃんもこれからきっと大きくなるわよ」カルディアは少し恥ずかしそうに胸を隠すように湯船に体を沈めた。
「まるで、もう二・三人子供を育ててそうな胸ダニな」イオはカルディアの大きな胸を見ながら呟いた。
「イオちゃん……。なにか言ったかしら」カルディアの目がきらりと光る。鋭い眼光にイオの背筋が凍る。
「で、でも、ヒロ様も見事な胸だったダニよ」イオは頭にタオルを乗せて表情を隠しながらカルディアと距離を取った。
「えっ、み、見たの!?ヒロって、ぱっと見た感じは痩せて見えるのに……、意外と筋肉質なのかしら?もしかして細マッチョ!?」カルディアは頭の中で上半身裸で爽やかに微笑むヒロの姿があった。その瞬間鼻血でも吹き出すのではないかと思い上を向いた。
「それはそうと今日のヒロ様、なんだか元気がなかったちゃね」アウラは昼間にオリオンと食事をしてからのヒロの変化を感じ取っていた。
カカは会話には加わらず、気持ち良さそうにお湯に浸かっているルイの背中を山にでも登るようにしがみついている。
「そうね。自分が暗殺するべき相手に出会ってしまったのと、その相手が悪人に見えなかったから……、色々と考えているのでしょう、ヒロは優しいから……」カルディアは空を見上げた。露天風呂から見る星は綺麗に輝いている。
「それは、アウラにも解るだっちゃ……」
「私もあのオリオン王子って人は悪い人には見えなかった……」カルディアは両手でお湯をすくうと顔を洗う。
「もしかして、カルディア様はオリオン様も好きになったっちゃか?それなら、ヒロ様はアウラがもらうっちゃよ」アウラは目を細めてニヤリと笑った。
「な、なに言っているのよ!子供のくせに!!私はね、私はずっとヒロの事を……、って何を言わせるのよ!!」恥ずかしさを隠すように湯舟の中に顔を半分沈めた。
「勝手に自分で言っているだけだっちゃよ。でも、カルディア様は本当に解りやすいのに、いつも素直じゃないちゃ」アウラも同じように顔を洗った。
「もう、ほっておいてよ」カルディアは膨れっ面をしてたと思ったらすぐに吹き出してしまった。
こんなに楽しい時間は久しぶりだとカルディアは思っていた。
イオは逆上せてしまったのか、浴場の床に大の字で寝転んでいた。