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出会い

 そうこうしているうちに一行はブランドーの街の入口に到着した。


「いいか、ここからが本番だ。出来るだけ目立つ行動を控えてオリオン王子の動向を探るんだ」ヒロがカルディア達の顔を見ると、彼女達は無言で頷いた。


『ブランドーへの通行料、一人につき二千ガン』


 その表記を見て、ヒロは胸を撫で下ろした。あの時、アウラ達がお金を稼いでくれなければ暗殺はおろか、街の中に入る事さえ出来ないところであった。ただ、お金が無くなった事の最大の要因も彼女達に起因するのだが、そこは触れないことにする。


 ヒロ達は一万ガンを支払いブランドーの街に入った。


「ねぇ、今さらだけど、アウラちゃん達は仔犬の姿で通ったら六千ガンは節約できたんじゃない?」カルディアはアウラ達を見ながら進言した。


「それも考えたが、仔犬の姿だと逆に人目について注目を浴びて行動が制限されそうだからな」ヒロはカカの赤い髪を撫でた。


 このブランドーの街は商業が発達しており、沢山の商人が集まっている。その活気にカルディア達は茫然と辺りを眺めているだけであった。ヒロは子供の頃に一度来たことがあると言うだけあって。落ち着いているようだった。


「うわー、凄いダニ!」イオはテンション高めにはしゃいでいるようであった。その天真爛漫ともいえる青い髪の可愛い少女へ、周りの男達の視線が注がれている。ヒロの危惧していた通り、思いっ切り目立つ存在になっていた。


「先ほど言ったばかりなのに……」ヒロは先が思いやられると少し頭をかかえた。


「きゃ!」だいぶ先の方でイオが誰かにぶつかったようで小さな悲鳴をあげた。当たった相手は大きな刀を持った男とその仲間であった。


「ねえちゃん!気をつけろよ!」男が威嚇するような顔で睨みつける。


「すまないダニ」イオはシュンとした顔で謝った。


「おっ、ねえちゃん可愛いじゃねえか!俺達と遊ばねえか」男達はイオのか細い腕を無理矢理掴んだ。まさにロリータコンプレックス全開であった。


「イオ!!」様子がおかしい事に気がついたヒロはイオのいる場所へ走っていく。その手は、刀の鞘に添えられている。


「痛てててて!!」先ほどまでイオの腕を掴んだ男の顔が苦痛に歪む。


「お嬢さんに失礼じゃないか」白い高級そうな上下の服を身に纏った若者が、男の腕を後ろに回して関節を決めている。男は完全に動きを封じ込められた状態のようであった。


「えっ!?」ヒロはまだイオの所にはたどり着いていなかった。


「なんだお前は!」男の仲間が威嚇するように叫んだ。男の体を突き飛ばすと若者はイオの手をつかんで優しく引き寄せた。


「お嬢さん、大丈夫かい?」優しい顔で笑いかける。まるで神々しく輝いているような錯覚さえ覚える。


「だ、大丈夫ダニ……」イオは若者顔に見惚れて瞳が星のように輝いている。


「てめえ、俺達の話を……」そこまで言ったところで男達は何かに気づいたようであった。


「まさか……、あなたは!あなたは、オリオン王子様!!」男達の態度が激変したかと思うとその場に膝を突いて頭を下げた。


「オリオン!?」その名前を聞いてヒロの表情が少し強張る。


「騎士たる者、民衆を守るのが務め。このような振る舞いは見逃せないところだが、今回は目を瞑る。二度目はないぞ」男達に向けられた顔は、先ほどイオに向けられたものとは違い勇ましい青年の顔であった。


「は、はは、申し訳ございません」そう言い残すと男達は一目散に逃げていった。


「あっ、ヒロ様!この方が私を助けてくれたダニ!!」イオはヒロの姿を見つけて駆け寄ってきた。それはまさに最悪の展開であった。


「俺、……いや、私の連れを助けて頂いてありがとうございました」ヒロは出来るだけ丁寧な言葉でお礼を告げた。


「いやいや、たまたま目の前で騎士の無作法が目についたので……、しかしあなた達が一緒だったなら口出しは不要だったのかも知れないね」オリオンは一瞬鋭い視線をヒロに送ってきたような気がしたが、すぐに表情を変えて爽やかな顔をして少し伸びた髪をかき揚げた。


「いえ……、そんなことは……」ヒロは言葉を選んでいた。暗殺を目論んでいた相手が目の前にいる。自分達の素性を知られる訳にはいかない。それにまさかこんな往来で、この王子を殺害する訳にもいかない。


「君達は旅の途中かい?」


「ええ、……まあ……」まさか、自分達の目的を告げる事など出来ない。


「そうだ!、もし良ければ、一緒に昼食でもいかがかな?」オリオンのその言葉にヒロは目を見開く。


「いや……、それは……」どうやって断るべきかヒロの頭の中が混乱する。


「やったー!ご飯だご飯だ!一緒に食べるダニ!!」イオは何も気がついていないようで、陽気に喜んでいた。


「じゃあ、店は僕に任せて」オリオンは、優しく微笑むとヒロ達を誘導した。仕方なく、その後をヒロ達は着いていくかたちとなってしまった。




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