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01 巫女姫? 何それ。



昨日見た夢をもとに、楽しく書きました。



20200624




 

 ぐえっと声が出てしまいそうなほど、首が締まったのは、多分後ろの襟を引っ張られたからだと思う。


「巫女姫を殺されたくなきゃ動くな!!!」


 巫女姫? 何それ。

 疑問に思っている私の首元には、鋭利に光を放つ刃物が向けられていた。

 何これ。人質みたいな状況に陥っているのはなんで?

 脅しを向けられたのは、どうやら目元を隠す仮面をかけた男性らしき三人。

 剣を持っているようにも見えて、これは何かの劇かと考え始めた。

 仮面舞踏会みたいな仮面だし、そもそも見たこともないくらい広々とした部屋にいる。まさにパーティーの最中だったみたいに、テーブルが並び、そこに席についている面々は青ざめて固まっていた。やっぱり見慣れない。というか、海外に来てしまったんじゃないかってくらい日本人離れした顔立ちをしているし、髪も明るい人達ばかりだ。

 夢でも見ているのだろうか。

 いや、でも。私、ちゃんと登校したような。


「ふん。貴様如きに巫女姫を殺せはしない」


 仮面の一人が言った。

 金髪がさらさらしていて、青い仮面で目元を隠していても、なんだかイケメンな雰囲気を感じる。

 そんな彼が、動いた。

 刃物を首に突き付けられた私の方へ。


「動くなっつってんだろ!!!」


 私を捕まえているであろう男がまた声を上げたかと思えば、目の前にあった刃物がーーーー。


「!!!」


 私はびくんと震え上がって、思わず首を押さえた。

 けれども、刃物が過ったはずの首はなんともなかったのだ。

 パーティー会場みたいな場所でもない。

 見慣れた学校の教室にいた。それも私は自分の席に座っていたのだ。

 左右を見回して、自分が学校にいることをゆっくりと理解する。

 やはり夢だったのかもしれない。いや夢だろう。

 でも変だな。気付かないうちに眠り込んでしまうものかな。

 そもそも、学校に登校してからすぐに眠ってしまうのは変だ。


 キーンコーンカーンコーン。


 朝の部活動が終わる合図が鳴り響く。

 高校生になってから私は、帰宅部。

 父がアジア系アメリカ人のおかげか、私の運動能力は他の女子生徒に比べて高い方だと自負しているけれど、体育会系の部活のルールには、中学生の頃合わないと痛感した。よって帰宅部である。

 着実と教室はクラスメイトで賑わい始めてきた。


「おはよう、恵玲奈」

「おはようーみそら」


 この教室で一番の仲良しの友だち、みそらが疲れた様子で近くの席に座る。


「部活お疲れ」

「うん」


 みそらは剣道部員だ。中学の頃からだそう。

 私も入らないかと誘われたけれど、断った。


「おーす、みそら、恵玲奈」

淳介(じゅんすけ)、おはよう」

「おはよう」


 私の隣の席の男子生徒、淳介と挨拶を交わす。彼はサッカー部である。

 結構モテると思う。サッカー部はモテるよね。


「聞いてよ、二人とも。なんか変な夢見た」

「夢って? どんな?」


 優しい二人は、鞄から教科書を移しながらも耳を傾けてくれた。


「なんか、外国のパーティー会場で人質にされる夢」

「確かに変な夢だな」


 淳介はこっちを見ることなく、相槌を打つ。


「でしょう? しかも、何故か私のこと、巫女姫だって言ってた」

「何巫女姫って!」

「いや知らん!」


 みそらと一緒に笑った。

 淳介は、話を急かす。


「で? オチは?」

「んー首撥ねられた気がする……」

「何それこわ」

「私も怖くてビクッてしたら、ここにいたんだよね」

「学校に来て早々居眠りかよ、恵玲奈」


 ようやく準備を終えた淳介がこっちを向いて笑った。


「てか、まるでどこかに行ってたみたいな口振り」


 椅子に腰を下ろしたみそらも笑う。


「居眠りした覚えないし、すっんごくリアルだったんだよ?」

「はいはい」

「むぅ」


 流されたから、私はむくれるだけで、もうこの話をすることをやめた。

 例えリアルだったとしても、だからなんだってことになるか。

 夢だったのだ。そう片付けることにした。

 私は頬杖をついて、窓の外を見る。

 すると、キンキンキンっと鉄と鉄がぶつかり合うような音が、聞こえてきた。

 なんの音だろうか。

 疑問に思いつつ、私は耳をすませた。

 その音は次第に、大きくなり、喧騒と言えるほどの音が私を飲み込んだ。

 バッと振り返れば、見慣れた教室なんてものはなかった。

 高級ホテルのだだっ広い廊下に、私は立っている。そこは、まるで戦場だった。どこに目を向けても、剣をぶつけ合う人達でごった返してしたのだ。戦っている、みたいだ。

 立ち尽くす私の足元には、黒いナイフがある。

 なんとなく。とてつもなくなんとなく拾ってしまった私が、顔を上げれば相手を叩き切った人達がこちらを睨むように見てきた。

 ぞっと寒気が走る。鳥肌まで立った。

 ナイフを持っているから、敵と認識されたのだろうか。ならナイフを放すべき?

 丸腰でこの戦場にいるのは心許ないが、こんな短い刃物が役に立つとも思えない。


「やめろ! お前達!!」


 後ろの方から声が飛んできた。

 私はつい顔だけを振り返り、聞き覚えのある声の主を確認する。

 まるでさっきの夢の続きだ。あの目元を隠す仮面をつけた三人がいた。

 先頭を歩くのは、金髪がさらさらした青い仮面の男性。


「彼女が巫女姫だ! 保護しろ!!」


 保護。捕まえられるのか。

 逃げるべきなのか、保護されるべきなのか。

 全然状況がわからない。巫女姫って、やっぱり私のことなのか。

 とにかく、保護と言っているなら、危害を加えられることはないのかな。

 いやでも、私さっき首撥ねられたよね? 金髪青仮面のせいで!

 冷汗がたらりと垂れる中で、私はどうすべきかを悩んでいたが、周りの人達は待ってくれない。

 すると。


 ドッカーン!


 爆発がすぐそばで起きて、私は吹き飛ばされた。

 その方角には、長い階段があって、手擦りに乗るような形で滑り降りることとなる。


「!?」


 爆発に飛ばされた。肌がヒリヒリする。耳痛い。

 これ、絶対に夢じゃない!!


「うわっ!」


 服が引っ掛かり、階段の踊り場で着地した。

 というか、制服ではない。ブレザーとスカートだったのに、今はまるで踊り子のような衣装を着ている。

 腕には透けた布が垂れ下がって、背中から手にまで伸びていた。

 肩と胸の谷間が露出していて、とてつもなく恥ずかしい格好である。

 膨れたズボンも、サイドに穴が開いてて露出していた。 

 なんだこれー!?


「巫女姫は!?」

「また消えたのか!?」


 上で私を捜す声が聞こえた。

 ど、ど、どうしよう!?

 ナイフを持って、恥ずかしい格好で固まっている場合ではない。

 パンプスのような靴で、私は階段を駆け下りることにした。が、踏み外して落ちる。

 でも痛くはなかった。固めのクッションにダイブしたような感じだ。

 見てみると、筋肉があった。これテレビとかで見たことのあるマッチョだ。こんな雄っぱい、初めて触る。

 下にある腹筋はくっきりと盛り上がってて、やばい。私を受け止めたであろう腕なんて極太である。

 ん? つまりは私は誰にキャッチされたのか?

 そこに考えがやっと行き着いた私は、やや焼けたマッチョの持ち主の顔を見た。

 仏頂面。太い眉の下には琥珀の瞳。茶色い髪は長めで顔を包んでいる。そんな男性の耳は、頭の上に合った。

 なんだろう。獣耳って感じだ。人間の耳は見当たらない。この丸みを帯びた三角形の耳は……あ、ライオンっぽい。

 マッチョで獣耳の男性は、私を無言で見下ろす。私は耳を凝視してしまう。マッチョなのに、ライオンさんの耳つけて、なんの仮装だろうか。仮面つけて剣を持っている人達もいるし、やっぱり仮装大会なのかもしれない。いやでも戦場みたいだったし、爆発もあったし……。

 スンスン。

 獣耳マッチョの男性が、私に顔を近付けて、匂いを嗅いできた。


「お前が、巫女姫か」


 琥珀の瞳と私のブラウンの瞳がかち合う。

 すると、文字が浮かんだ。



 

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