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6話

 あたしと白雪さんは、何度か放課後の時間を一緒に過ごすようになっていた。


 毎日だと白雪さんも気を使っちゃうだろうし、周囲にあたしがべたべたしてるように思われたらなんか嫌だった。


 行く場所は増えてはいないけど、一緒にいる間に白雪さんの事はちょっと分かってきた。


 一人っ子だと言う事とか、勉強全般が得意だとか、料理が好きだとかそんなプライベートな事も知ることができた。


 特に、頭の良さはこの前の中間で、学年上位10位に入ってるらしいから相当だ。


 あと、高校では郡司先輩をお兄ちゃん呼びしてるのを見かけられて、それ以降学校で浮きっぱなしだと言う事もどうやら事実だった。


 と言っても、先輩は白雪さんに


『お前は妹なんだから堂々としてればいい。それとも、お前は妹じゃないのか?』


 って言ってくれたから、なじまなくても浮きっぱなしでも気にならなかったらしい。


 でも、そのお兄ちゃんと慕っていた先輩から妹と言う立場をはく奪されたので、毎日がどうしても不安になってしまう。


 そんな気持ちの内を白雪さんがようやく吐き出してくれたのは、出掛けた回数が10回をとうに超えたとき。


 よく行くようになったチェーンの喫茶店で、豆乳ラテを飲みながらだった。


 だけど、相変わらず白雪さんは笑顔を見せてくれない。


 今日の分の宿題を終えて、ゴロンとベッドに転がった。


 白雪さんは、可愛くて優しい。


 それは、短い間だけど一緒にいたあたしがよく分かっている。


 顔立ちは一緒にいるとたまに羨ましくなるくらいだし、声も可愛い。


 見せる仕草も小動物的で、それもわざととかに見えないから素直に可愛い。


 それに、何より気が利く。


 ちょっとでも悩んだり、困ったそぶりを見せたらすぐに気にかけて動いてくれる。


 郡司先輩が『《《妹》》』として、側に置いていたのも何となくわかる。


 だから、分からない。


 なんで、こんな白雪さんをあんなひどいフリ方をしたんだろう。


 確かに、妹って立場と彼女って立場は違う。


 それにしたってこんなにいい子を、あんなフリ方をしたのは理解できない。


 あと、クラスのみんなが言っていた言葉が、引っかかる。


 白雪さんの悪い噂。


 その正体は、未だに分からないしあの白雪さんがそんなことするなんて思えない。


 相手に気遣いもできて、頭もいい白雪さんが善悪判断を間違うなんてあたしには思えない。


 みんなが心配していたけど、それを感じさせる行動もないしあくまで噂って事なんだと思う。


 噂は噂だし、きっと郡司先輩と一緒にいたことに対するやっかみ。


「ほんっと、みんな子供」


 呆れたような言葉と、苦笑いが浮かんだ。


 やっかんだところで、別に自分たちの状況が変わるわけじゃないのに、なんでこんな事するんだろうっては思わない。


 それに噂を信じて勝手に気持ち悪いなんて思うとか、みんな子供だからに決まってる。


 白雪さんは子供っぽいとこもあるけど、ちょっと違う。


 だけど、クラスのみんなは子供だ。


 みんなより白雪さんとはなんとなく話も雰囲気も合うから、このままならいいお友達にはなれそうな気がした。


「ひなー、お風呂―」


「わかったー!いちいち呼ばないでも、大丈夫だって」


 下から聞こえてきた母親の声に、あたしは少しだけ不機嫌に返してお風呂へ入るために体を起こしたのだった。

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