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3話

 学校はいつも通りでクラスでは、授業の合間にワイワイ話で盛り上がっている。


 あたしもそんな中で、いつものように身を置いていた。


 話題は取るに足らない事だけど、こうして色々話を聞いているのは楽しい。


 そんな中、ちらっとあたしは白雪さんの席を見た。


 いつもは目に入っても気にならないんだけど、昨日の今日。


 普通にも見えるし、やっぱり昨日の事を知っちゃってるから沈んでいるようにも見える。


「どーしたの?ねぇ、ひな」


「ん、何でも。っていうか名前呼び止めて。嫌いなんだから」


「えー、可愛いのに」


「そ・れ・が・嫌なの」


 あたしは、友達に詰め寄りながら言った後肩を落とした。


 あたしのひなって名前は、どうも可愛すぎて趣味じゃない。


 好みとして大人っぽいイメージのが好きだし、子供っぽいのは嫌い。


 と言うか、子供っていうのが嫌だから早く大人になりたいって思ってるのに、どうしても名前のイメージが邪魔しちゃう。


 もっと大人っぽい名前だったらって、毎日思ってる。


 この名前でいいと思ったことなんて、名前を手書きするときに楽ってことくらい。


 親には悪いけど、名前は大嫌いだ。


 第一、可愛いって言われるのもどうも好きになれないし、あたしの普段のキャラから言っても正反対だから本当に大嫌い。


「で、何?あっちに何か見えるの? さっきから、たまにチラチラ見てるけどさ」


「ああ、ちょっとね。白雪さん」


 くいっとあごを動かして、みんなの視線を白雪さんに向けるように促した。


 そこにはたぶん、いつもと変わらない様子の白雪さんが居た。


 長い黒髪のおさげで、身体にちょっと合ってない大きめの制服を着てる様子は本当に子供っぽい。


 その後ろ姿は高校生っていうよりも、中学生。


 もう入学式から数か月経って服も夏服に変わったっていうのに、高校の制服を着た中学生っていう雰囲気を出してる。


 それに、今日もいつも通りスマホをいじりながら一人でいる感じで、クラスですっかり形成されたいくつかのグループのどこにも入ろうとしてない。


 フラれたってことはあるけど、こういう時こそ話を聞いてもらったりする相手がいるはずなのにって思う。


 それをしないってことは、友達とかいないんじゃないかなって思っちゃうから気になってしまうのは当然。


 昨日、郡司先輩にフラれたことは内緒にしておいてと言われてるので、みんなには当然言わない。


 ただ、気になってることも隠すの変だったので名前だけは告げておいた。


「珍しいね」


「あ、いや、席も近いのに話したことないなーっていうのと、なんかいつまでも浮いてるのが気になって」


「世話焼きだなー、間森は」


「ほんっと気遣いできるし、大人だよねー」


「別に、好きで世話焼きな訳じゃないし。あたしはただ、当たり前のことしてるだけ」


 誤魔化すように言った話題に周りが感心してくれたけど、大人って周りの事を考えるもんだし子供を助ける存在。


 あたしはみんなより大人なんだから、それ考えるのは当たり前。


「でもさ、白雪さんってあんまりいい噂、聞かないよね。あんま、関わらない方がいいって。危ないよ」


「え?そうなの?」


「うんうん。なんか結構悪い事してるとか聞いたことあるよ」


「見かけによらないけど、結構あたしも聞いてる」


 周りの子たちか頷くってところを見ると、どうやら噂は結構有名らしい。


「あのさ、悪い事って、何?」


「よくは知らないんだけど、噂になってるってことは危ないんじゃない? あ、あたしは一応知ってるけど、間森は知らない方がいいんじゃないかな……ってこと」


「そうは、見えないけど?」


 そう言われてみても、悪い事に手を染めるようには見えない。


 あの中学生っぽい印象だし、すごく大人しい。


 それがみんながやばいって思うくらい悪い事を、平気でできるようには全然思えない。


「ま、あんまり関わらない方がいいよ。噂が本当だったら、間森も疑われちゃうよ。ああいうのは、関わらないのが一番だよ」


「うんうん。そうだよ。あとさ、あと、なんとなくキモイし。白雪さんとはあたしあんまり関わりたくない」


「あっ、わかる! なんか引きこもってキモイゲームしてるのとか似合う感じするし。あ、あとさ、知ってるでしょ?郡司先輩との話」


「知ってる知ってる、お兄ちゃんとか呼んでるんでしょ?あり得ないよね、普通高校生にもなってそんな呼び方する?あー、寒気してきた。自分の立場分からないとかなのかな?あ、でもさ、それを笑顔で許しちゃう郡司先輩マジかっこいい!あー、あたしも囲ってほしい」


「あんたたち、そう言うのよくない。キモイとか言っちゃダメだって。自分が言われるようになったらどうするの?白雪さんだって、何か事情あるんだと思うから、それを知らないで言うとか絶対ダメ」


 どんな事情があるにしたって、誰かの事を気持ち悪いとか言うなんてあたしは見過ごせなかった。


 なので、口調が強くなっちゃうけどあたしは大人だから曲げる気はない。


「もう、間森は真面目なんだから」


「はーい、わかったってば。お堅いなー、間森は。そこまで怒る事じゃないよ」


「ダメ。こういうさりげないとこから、エスカレートしちゃうんだから。そうしたらクラスが変になっちゃうよ」


「でも、そゆとこ大人っぽいよね。あ、でさ、話変わるんだけど最近――」


 あたしがきっぱりと言うと友達が白雪さんの話題はここまでって感じで、逸らすように変わった話題に、あたしも自然に乗っかった。


 でも、意識のどこかでは白雪さんの事が引っかかっていた。

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