第88話 覇王戦
覇王城最終戦。
俺は最終エリアに足を踏み入れる。
その瞬間、巨大な炎が眼前を覆いつくす。
「キーラたちを入らせなくて正解だったな」
俺は瞬時に【覇邪聖王神斬 刃皇】を顕現させ相手の魔法を防ぐ。
俺に向けて放たれたのは【混沌之火球】だ。
初撃を防いだ俺はシーラに合図を出す。
そして指示に従いシーラはキーラ達を連れて中へと入場する。
全員が恐らく初めて見たであろう、玉座に座り退屈そうに肘を付き足を組むイケメンの姿を。
銀髪は輝くように美しく瞳は真っ赤に燃え叩きつけてくる覇気は圧倒的だ。
なるほどね...これは勝てないわ....
相手の俺は未だに姿勢を崩さない。
右ひじを付き退屈そうにしている。
だが、刹那何も持ってない方の左手の指先を少し動かしたかと思ったら爆風が辺りを抜ける。
おいおい指先動かしただけでこれかよ...
洒落になんねーよ!!
俺は負けずと【覇邪聖王神斬 刃皇】の本来の力を使い斬撃を飛ばす。
だが、目視できないはずの斬撃を相手の俺はいつの間にか手にしていた剣で軽々と防いでいた。
そりゃあ持ってるよな....おまえも....【覇邪聖王神斬 刃皇】....
だが防ぎきれなかったのか顔に微かな切り傷が付いている。
流石に俺のステータスで剣を使えば多少のダメージは入るのか。ほんと多少だが...
傷が出来たことに喜びを見出したのか相手はようやく玉座から立ち上がる、その時には既に先ほど付けた傷はどこにも見当たらない。
相手の俺が立ち上がった瞬間からどこからともなく演奏が流れる、バックコーラスにバイオリン、鬼気迫る様な音楽はさながら魔王。
そしてお互い一瞬の間に間合いを詰め切り合う、周りの者には視認すらできない程速い打ち合い、正直俺もシーラの攻撃予測が無ければとっくに多段ヒットしている。
俺と俺の剣劇の最中、不意に背後から相手へと魔法が放たれる。
魔法による攻撃を受けて相手は吹き飛ぶ。
もちろん攻撃を飛ばしたのはシーラだ。
【混沌之氷鋭槍】
防御貫通を込めた氷属性の究極の貫通攻撃、流石に今のは効いただろう。
だが、相手は平然と立ち上がる。
防御突破を込めた魔法でなんでそんなに平気そうなんだよ!!シーラの魔法なんだからめっちゃHP減ったはずだろ!!
やりづらい相手に思わず俺は舌打ちをしてしまった。
その瞬間、相手は俺の目の前に出現し俺に向けて剣を振る。
「早ッ!!」
俺は回避が間に合わず剣の攻撃と共に放たれた斬撃と共に吹き飛び壁に衝突する。
俺のHPががっつりと減る初めて2割ほどもHPを持っていかれた。
減ったHPも徐々に回復してきているが...こんなのを何発も喰らっていたら間違いなくお陀仏だ。
高い防御力も防御貫通を付与されてしまえば何もないのと同じだ、状態異常無効も相手が同格であれば発動しない。
つまり...痛覚無効が発動しない今、自力でこの痛みに耐えなければならないのだ、ゲームだから多少の軽減はされているが....
くっそ!!痛てぇ!!
半ばやけくそだが、しっかりと冷静に【覇邪聖王神斬 刃皇】に【混沌之火炎】と【混沌之雷撃】を付与しほぼ全力で斬りつける。
周囲への影響などすべて無視だ。やられたら全力でやり返すまで。
俺の攻撃に周囲は激しく振動し空間が歪む。まずい
「お兄様!!それ以上やるとこの空間に捻じれが生じこの時空の狭間自体が消滅してしまいます!!」
シーラの忠告を受け追撃をやめる。
だが5割は持って行けたはずだ。
だがここで手を休めていたらまた自動回復でHPは回復してしまう
「シーラ!!全力で俺の力のサポートに回れ!壊れない限界まで出し切る!!」
「世界の限界値80%まで解放します!!」
俺の身体が軽くなる、さて終わらせるとしよう。
今迄とは比にならない程の速度で移動し相手に膝蹴りを喰らわせ体制を崩させ剣にて打ち上げる
「やるぞシーラ!」
「はい!!」
打ち上げた相手に向け俺は下から【混沌之隕石】を放つ、そしてシーラはその反対側つまり上空から挟み込む形で【混沌之隕石】を発動させる
挟撃を受けたたら流石にひとたまりもない無いだろう
激しい轟音が収まると相手は立ち上がる。
だが後2割。
なんてタフなんだ....
立ち上がった相手の俺はある力を解放した。
どこまでも忌々しいな覇王という奴は!!
吐き捨てる様に言ったがすべては自分自身の事だ。
発動されたのは【覇王覇気】。
これでシーラは戦闘を続行できなくなってしまう。
俺も同時に【覇王覇気】を使用する
覇王覇気は激しくぶつかり合う、それと同じように俺と俺もぶつかり合う
互いに【覇王覇気】を纏わせた攻撃だ。お互い喰らったらひとたまりもない。
俺はまだHPに余裕があるが相手は2割。剣戟による余波で自動回復分のダメージは与えれているので回復は防げている。
だが俺のHPは僅かに減少しつつある。
だがそれでも後2割...勝てる
そう思った瞬間に俺は腹部に大ダメージを受け上空に吹き飛ぶ。
「しまッ!!」
だが遅かった、眼前に広がるのは巨大な隕石。
見事俺に直撃したそれは止まることなく地面に叩きつけられる
【覇王覇気】を纏わせた【混沌之隕石】の攻撃力は圧倒的だった。
俺は6割減少した俺のHPの残りは約3割程。
一気に瀕死だ...。
クソッたれがァァァァァ!!!
油断した自分自身に腹が立つ。
その苛立ちをばねに俺は【覇王覇気】を纏わせた剣で全力を出し斬りかかる、制御はシーラがしてくれているので問題ない。
攻撃は直撃し相手はようやく膝を付く、残りは1割。
もう維持できないのか、相手の覇王覇気は明滅を繰り返す。
止めを刺すとしよう。
俺はゆっくりと歩き剣を構えた。
―――さらばだ、覇王よ存外楽しめた。
かっこつけて言ったが、言葉を発した瞬間に俺の視点は別の場所にあった
壁まで吹き飛ばされた俺は体の上にのっている瓦礫をどかし俺に攻撃を加えた存在を確認しようと辺りを見渡す。
「おいおい....まじかよ...」




