第80話 再開と最終戦
闖入者の影響で多少場が荒れる、驚いてないのと言えば俺とシーラくらいだ。
マナは我が子が返ってきた事と既に10000年が経っている事に動揺している、俺も我が子との再会を喜びたい所だが―――
まずは母親との再会だな、俺はシルビアを労ってやるとしよう。
マナは我が子との再会に喜び走ってゼロの元に駆け寄る。
「おかえりなさい!!ゼロ」
「はい母さん、それにしても少し成長しましたか?」
「そりゃあ10000年よ?ヴァンパイアでも流石に成長するわよ」
嘘です。
マナは不老不死のスキルがあるから歳は取らない、なので成長はしない、俺が無理やり肉体を成長させたせいで胸が妙な発達を遂げている。
キーラやミーシャ達は妙な空気を読んでか首をつっこまないようにしている、ずっとこっちを睨んでいるだけだ。
「シルビアよ、旅はどうだった?なんか面白そうなスキルや武器は手に入ったか?」
「はい、覇王級の武器と装備を一つずつ」
俺とシルビアが話を続けようとするとゼロがこちらに駆けてくる。
「そうだ父さん!これをみてください!」
そういいゼロは携えていた剣と着ていた鎧を俺に見せる。
「ほう、これは【時之断罪剣】と【時之勇者之鎧】だなセットで装備することで効果の発動確率が80%に上昇する」
「そんなセット効果があるのですか!!?流石父さん私とシルビアでは気付けませんでした...」
「ま、まぁな」
自分が作った装備なので仕組みは理解している、組み合わせでどんなスキルが発動するかくらいなら知っている。
まぁ....マーシャの様にモンスターを召喚して経験値を弄ってレベルを最大にし転生するのを繰り返す様なやり方があるとは思わなかった。
後はミーシャとマーシャが合体してさらに鎧まで着るとは思わなかった。
以外と俺のやらないような使い方をする奴が非常に多いだが、まぁゼロに関しては大丈夫だろうそれにマナの手に入れた指輪の【血族之指輪】は血の支配だけだからな。
特に問題ないだろう....たぶん。
「まぁ旅の疲れもあるだろう、休んだら色々と積もる話を聞かせてくれないか」
「はい父さん!!」
ゼロはシルビアと共に黄金卿へ入って行った。
さて...あとはゼロの事を知らない奴等をどう宥めるか...だな...。
「あれってやっぱり覇王様の御子様ですよね?」
「兄様がもうパパ様になってしまうなんて....」
「ずるいですよ...」
もしかしてみんな俺の楽園に入りたいのか!?い、いやキーラは無理だろう?だって妹だぞ?
(お兄様は王なので別に妹を側室にしても大丈夫だと思われます)
脳内での思考を読み取り勝手に口を出す、正直やめて欲しい...だが返事はする。
(たしかに妹がハーレム候補にいたらいいなと思ったが...)
(ならば問題ありません、私にお任せください、必ずやお兄様の楽園を築いて見せます)
ならばよし!すべてをお任せしよう!!キーラがハーレムに入るなら喜ばしい限りだ。
「それでもあの人が最初の奥様だなんて...」
その言葉に反応してかマナが能力を発動する。
「あら?私の力に何か不満があるのかしら?」
ミーシャは身動きが取れなくなる。
「嘘!?体が動かない!!」
「ミーシャよりも強い」
「ふふ...残念」
マナは怪しく笑いスキルを発動させマーシャの動きを止める。
「う...動かない...」
「私は貴方よりも強いのよ」
マナはマーシャにマウントを取るそしてシーラにも能力を発動させる。
だが....シーラにはまったくと言っていい程全然効かない。
「あら?今私に使いましたか?」
「やっぱり効かないのね...」
「逆にどうして効くと思ったんですか?」
「なんとなくよ...でも―――嘘!キーラちゃんに効かないなんて...」
おや?この反応からするとキーラならいけると思ってスキル使ったな?
キーラは何事も無かったかのように首を傾げる、実際キーラは何もしていない特殊スキルの恩恵だ。
【|覇王之系譜】キーラとシーラの所持スキルだ、効果は状態異常の無効、精神系の攻撃を生まれた時点で無効にできるのだ。
このスキルは修羅の世界特有の強き者には正々堂々挑まなければならないのルールを強く引きずっている、それと言うのも覇王の身内を人質にとるなどの対策の為だ。
どうしてこのスキルが覇王になった時点で獲得できるのかはわからない。
もちろん子孫であるゼロも【覇王之系譜】を獲得しているので、ゼロにも状態異常攻撃は通用しない。
恥ずかしさからかミーシャとマーシャに掛けていた能力も解除したようだ。
だがミーシャとマーシャもマナの強さを認めた様でこれ以上は何かを追求することは無い。
そして俺達は全員で黄金卿に入る、俺の痛々しい銅像や教会を横目に俺たちはゼルセラと合流を果たした。
全員が揃った所でゼルセラが面白そうな事を口にする。
「ご主人様も居る事ですし【覇王の居城】を攻略しに行きませんか?」
俺以外はほとんどゼルセラの意見を肯定している、そんな状況で断れるわけも無く俺たちは【覇王の居城】を攻略しに向かうのだった。
俺の城への移動中、青白髪の少女とくすんだ金髪の少女の二人が先を歩いているのを発見する。
車輪付きの巨大な大太刀をカラカラと引きながら隣の少女と話をしている。
どうして刀を散歩させるかの様に歩くかと言うとそもそも身長がたりないせいで刀を背負う事も脇に差すこともできないのだ。
なので相方のメトラに骸骨車輪を鞘の先に付けてもらっている。
そんな後ろ姿を眺めていた俺はかなりの愛着を持っていた。
俺達が背後に居る事に気付いたセル・デフォルトが満面な笑みで大きく手を振る横に居るメトラ・ソネフティマは軽くお辞儀をするだけだ。
「ハオー!!久しぶりなのだ!!そしてみるのだ!!この武器を!!」
デフォルトは大太刀の鞘を抜き刀身をこちらに向ける。
「これは【天元之大太刀】か...かなりの強武器だな」
「そーだろーそーだろー!!我輩は最強なのだ!!」
デフォルの話を一通り聞きメトラに視線を移すと嬉しそうに宙に浮かぶ2つの骸骨の武器の話を始める。
「ほう....【死者之英雄】か、ルノアールと同等のスキルだな」
2人が獲得できた覇王級アイテムは正直言ってぶっ壊れだ、特に【天元之大太刀】は確率操作ができる反則武器だ。
剣を所持しているだけで発動するので今の様にカラカラと転がしているだけでも確率を操作できるのだ
悪用しようと思えばいくらでも悪用できる、だが、そんな武器も知能指数の低いデフォルに渡ったのは幸いだったのかもしれない。
少し歩くと俺の城が見えてくる、自分で自分の城を攻略するのは変な気分だが、少しワクワクしているのだ。
期待に胸を膨らませる、そんな俺とは別に他の者達は気を引き締め本気の装備を整える
覇王級の武器をそれぞれが取りだし装備する、この中で一番覇王級の装備を持っているのはシーラを除けばゼルセラだ、そして一番持っていないのはキーラ、正直キーラのステータスでは覇王の居城を攻略することはできない。
そして俺は良い事を思いつく、難度20以上で俺の城のフリューゲルの大天使以上がランダムでドロップする覇王級アイテムをキーラに上げようと思ったのだ。
最初の1個はキーラに、そしてそれ以降はジャンケンだ。
だがそれだけでは少々キーラは分の悪い事になる、そもそも覇王級のアイテム無しで俺の城を攻略しようとすること自体無茶がある。
そこで俺はキーラだけを連れて難度100のゼルセラとの戦闘エリアに向かう。
「お前たちはここで待っていろキーラはこの世界に来てまだ間もないからな、一つだけ覇王級の武器を取ってくる」
「兄様...それは他のみんなに悪いよ...」
「キーラ、ここの城はそんな考えで攻略出来る程甘くはないぞ、素直に受け取るのだ」
俺の言葉を聞いても尚も渋るキーラに俺は提案をする。
「わかった、俺にジャンケンで勝つことが出来たら、渡すそれでいいな?」
ようやく首を縦に振るキーラに合図を出しジャンケンをする。
ジャンケンーーーポン。
は?
俺がチョキを出しているのに対してキーラが出しているのはグー完全に俺の負けだ。
だが違和感を覚えた、俺は俺の思考加速の中でキーラが出した後に超速で負ける様に変えようと思ったのだ。
だからこそ、キーラがチョキを出した瞬間に俺は手をパーの形に変化させた、だが、結果は俺がチョキでキーラがグー、あり得ない改変が起きたのだ、この世界で俺に干渉できる者などほとんどいない。
それなのに...ちらっとシーラを見るとシーラはデフォルトの方へ視線を向ける。
まさかデフォルトがやったのか?当の本人は俺から目を背ける様に口笛を吹き空を見上げる。
確定だな...なんと分かりやすい事か...。
まぁ俺が思い描いていた結果に落ち着いたのでよしとする、だが...意外とデフォルは確率操作を使いこなしているのかもしれないな...。
「さぁ行くぞキーラ、お前たちはここで少し待つのだ、すぐに戻る」
全員の返事を聞き、キーラの覚悟も受け取り俺は難度100に設定したゼルセラのボス部屋に向かう。
ゼルセラのボス部屋はだだっ広い広場だ、この広場を抜けると玉座の間が存在する、ゼルセラは最後の守り手なのだ。
難度100はゼルセラでは攻略できないだろう、難度50さえ怪しいそもそも難度20が互角なのに難度100なんて不可能に近いそんなゼルセラを開幕の一撃で屠りアイテムを獲得する。
使用した魔法は【混沌之炎】赤黒い炎は爆炎となりゼルセラを包み込み3つのアイテムと化した。
それぞれの名称と効果は簡単に説明すると。
【転生スル輪廻】自身のレベルリセット。
【天章之指輪】事象改変。
【末端者之刺剣】事象阻止。
ほとんどが覇王級のアイテムだ、もしかしたら確率操作よりも強い権能かもしれない。
それらを全てキーラに渡す、【転生スル輪廻】を食べた後、指輪を嵌め刺剣を握り元居た場所に戻る。
それを見た他の皆が驚愕したのは言うまでもない。
さぁ―――攻略しようじゃないか。俺の城を。