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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第9章 覇王の追憶
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第79話 虐殺

 俺がフレイヤの魔力を追い歩いて行くとゴリゴリマッチョな男を引き留めようとしているフレイヤが居た。


 力の差からか全くと言っていい程男を抑えれていない。

 その光景は、ホストに貢いで捨てられる哀れな女の様な表情だ、正直に思う感情は【憐憫】


「いい加減放せフレイヤ!!」

「だめ!放さない!!貴方をマスターとは戦わせれない!!」

「責めてきているのはお前の主なのか?」

「あの人には絶対勝てない!!絶対に!!」

「お前がそれほど言うとは見込みがある男なのだろう」

「お願いアポロ...私は貴方を救いたい....戦ったら最後あなたはもう...今の自分ではいられなくなってしまう....」


 泣きつくフレイヤを強引に振り払い男はこちらに斬撃を飛ばしてきた。


 正直、急な攻撃に驚きはしたが与えられたダメージに俺はがっかりした、神クラスそれも最強の神と言われている太陽の神。

 その力は大したものでは無かった。

 完全に直撃したが俺はなんでもないかの様に笑って見せた。


「どうやら、俺にダメージは入っていないようだ...」

「多少は頑丈なようだな、ならばこれはどうだ!!」


 次は鋭い斬撃が飛んでくる、多少の痛みはあったがその程度だ、与えられたダメージは2000万程、初めてまともにHPが減ったが。

 それでも膨大なHPを保有する俺としては痛みを感じる程ではない、感覚で言えばテッシュがふんわりと腕に乗ったぐらいのイメージだ。

 その程度で動揺する俺ではない。


「いかに防御が高かろうと防御突破を込めた斬撃は流石に痛かったか?」


 男は俺に対して煽り行為をするがほんとに痛がっている様に見えるのだろうか、それともやせ我慢でもしてるとでも思っているのだろうか。

 俺は初めて俺にダメージを与えた事に称賛と共に拍手を送った。


「素晴らしい、俺のHPを多少なりとも削れたことに褒美をやろう」

「多少だと?馬鹿な事をぬかすな!!人間如きが耐えれる訳がないだろう」


 俺は優雅に歩き男の元まで近づき右手で腹に渾身のボディーブローを決めた、それによって浮き上がる体を左手で抑えるように頭を鷲掴みにする、俺としてはその程度の感覚だが相手は視認すらできていないだろう。


「俺の褒美はどうだ?しっかりと受け取ったか?」

「これが人間の力だと...?ありえん...そんなこと...あってはなら...ない...のだ...」


 力なくぶら下る男をフレイヤの元まで持って行き放す。


「これで大人しくなっただろう」

「マスターアポロは生きて居るのですか!?」

「あぁ殺してはいない、意識を失っているだけだ」

「よかった...」


 死んではいない事に安心できたのかフレイヤは安堵に胸を撫で下ろす。


「マスター....我々はこれからどうすればいいのでしょう...」

「ゼウスの元に案内しろ、何人か護衛が必要だな、トゥー、スター、バル」


 俺が呟くと瞬時に3人のフリューゲルが姿を現す、その身は血に塗れ真っ赤に染まっている。


「転移の魔法は手に入れれたようだな」

「はい」「無事獲得できた」「ご用は何でしょう」

「俺たちは今からフレイヤ達に案内を頼みゼウスの元まで向かう、ついて来るのだ」

「わかりました」「わかった」「りょーかい」


 一応フレイヤ達を連行している風を装い3人のフリューゲルに囲ませ、フレイヤの案内通りに遺跡の様な建物を進む、移動中に辺りから聞こえる悲鳴が止む事はない。

 同僚の悲鳴にロキとフレイヤは酷く怯えている。


「た、助けてくれ――!!」

「や!やめ....」


 断末魔は鳴り響く、それはこの世界の天上の者達の悲鳴、そして俺が近くに通り掛かるとフリューゲル達は満面の笑みを浮かべ打ち取った神の首を見せ手を大きく振る。


「うわぁ...」


 思わずその光景を見ていた俺とマナの口から言葉が漏れる。


「こんなの正気じゃないわ...」

「それはおれも思う」


 俺たちの気持ちはさておき、フレイヤの案内でゼウスが居るとされる神殿へと辿り着く、階段には既に何人もの死体が転がっている。


「ヘルメス...」


 階段に転がる死体を見てフレイヤが名前を呟く、そうかその死体はヘルメスというのか。


 神殿の入り口には母性溢れる女性と眼鏡を掛けた二人のフリューゲルが待機していた。


『お待ちしておりました...ご主人様』

「あぁドミにチェイ、その様子だと中はもう終わっているのか?」

「はい、中にはゼルセラとルノアールとトロンが向かわれました」


 この二人も血で塗れている、純白の翼は真っ赤に染まり血が滴る。

 俺が二人を見るとチェイが一冊の本を差しだしてきた。


「これは?」

「【禁忌聖典(アカシックレコード)】だそうです」

「そうかならばそれはお前にやろう」

「ありがとうございます!」

「ついて来い」


 俺はそう言いドミナミとチェイニーも連れて歩く。



 やがて奥には一際大きな扉が見えてくる。

 その横には黄金のようなものが散らばっている、何かが崩れたのだろうか。


 扉を開くとそこには死体が2つに虫の息の老人が1人それからフリューゲルが3人だ。


「お待ちしておりましたご主人様!たった今敵の首魁を捉えた所であります!!」


 ゼルセラが嬉しそうに報告をする、今まで見てきたフリューゲル達よりも圧倒的に返り血が多い。


「ご苦労だったな、褒美としてゼウスのスキルは複製しお前にも与えよう」

「其方がグレーステ・シュテルケか...凄まじい力よ...」


 這いつくばった老人のゼウスが俺に声を掛ける、俺は只何も言わずこの世界の天上の神を見下ろした。


「そうか....アポロでもだめじゃった....か...」


 俺は何も告げづにゼウスの頭を鷲掴みにし【能力吸収】を発動する。

 ゼウスは力なく倒れ俺の脳内には様々なスキルや魔法の情報が入ってくる。

森羅万象之創造主(理を統べる者)

虚無錬金(ゼロアルケミー)

全知全能(ロード)

混沌之転移門(カオスゲート)

天界之転移門(エデンズゲート)


 そして世界へと言葉が発せられる。


 ≪覇王が誕生しました≫


 さらに覇王となったことで様々な事を手に入れる事が出来た、そのすべてを把握する事は俺だけではできそうになかった。

 そして俺は躊躇う事無く【混沌之転移門(カオスゲート)】を発動させる。

 生み出された扉を潜ろうとすると死にかけの老人が再び声を発する。


「行くのか...この乱れた世界を残して....わしはもう何もできんぞ....わかっておるのか...」


 俺は歩みを止め【混沌之転移門(カオスゲート)】を閉じた。


「そうだな、この世界から秩序は消えた、ならば俺が...覇王グレーステ・シュテルケがこの世界を平定してくれよう」


 そして俺は2年の月日を掛け世界を手中に収める、人間は居ないが平和な世界を築き上げたのだ。


 俺はマナへの干渉をやめる、脳内に流れた俺の記憶をそこで終了させたのだ、何故なら、この時空の狭間の世界に来客が来たからだ。


「はぁ~~この感じ懐かしい~」

「はしゃぎ過ぎだよ、ミーシャ」

「うわぁぁぁぁ!兄様の像が建ってる!!」

「貴女もはしゃぎ過ぎです!ちょっとキーラ」


 はしゃぐミーシャとキーラに後を追うマーシャとシーラ。

 4人は黄金卿を訪れていた、そんな4人を俺は出迎えた。


「あ、覇王様!!」

「兄様!!ここはどんなとこなんですか!!」


 正直俺の口から説明はしたくない...願うならばすべてを忘れて欲しいものだ。


「まぁまずは...」


 俺が喋りだそうとすると俺の後ろに隠れていたマナが姿を現す。


「に、兄様!!そのお方はだれですか?」

「私も気になります!覇王様!!」


 若干取り乱すキーラとミーシャをマーシャが冷静に諫める。


「落ち着いて、この人はさっき会った吸血鬼、魂の色が同じだから間違いない」

「マーシャこそ良く見てよ!!ほらあの胸!!絶対あんなのおかしいよ!!!」

「ほんとだ...さっきより成長してる...」


 マナは不満そうに眉を顰める。


「失礼ね、体全体がしっかり成長しているでしょ!!」


 その光景に全員で笑う、だがそんな微笑ましい空間は帰って来た一行により砕かれるのであった。


 それは聖剣を携えた勇者の様な風貌の青年と銀髪で切れ長の目がとても映えるメイドだ。

 そして開口一番その場を震撼させる。


「ただいま、父さん母さん」

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