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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第9章 覇王の追憶
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第75話 終幕

 エミールとフレイヤを二人きりにしてから数分、部屋の中から話声が全く聞こえない。

 だが、そんな重い空気の中ようやく口を開いたのはフレイヤだった。


 ――――――――――――



「ごめんなさい...」


 (フレイヤ)は謝った、自分にはそれしかできないから。

 私は導き手でありながらあなた達を導いてあげられなかった。


「謝らないで...」


 私の謝罪を女は遮った。


「私が憎くないのですか?」

「憎いわよ...憎くて憎くて仕方がない‼」


 鋭い目つきで私を睨み剣を突き付ける。


「貴方が望むのならば私は止めません」


 剣が聖なる魔力を纏う、より一層目つきが鋭くなり、剣が震え始める。


「ここで殺せたらどんなに楽だったか...フレイヤ様がもっと適当な神だったらどんなに楽だったか...」


 ゆっくりと剣を鞘に納め女は深く呼吸をする。


「ロキと言う神から色々と聞かせて貰いました、フレイヤ様がどれだけ努力をしていたかを....私はもう、貴女を斬れそうにありません」

「斬ってください...私にはもう導く存在がいませんあなたの知人のお陰で一命は取り止めましたが...もう、悔いはありません」

「なら私を導いて欲しい...あなたの事を信仰している私を...」

「どうして...」

「もういいでしょ...私も貴方も、もう...守るべき者は居ないんだから」


 涙を流し女は唇を強く噛みしめた。


「私の指輪は貴方に祝福された物だった、あの指輪のお陰で私の妹は信念を貫き通すことが出来た、感謝している」

「ですが私にもっと力があればあなたは何も失うことなく済んだ...私にもっと...」

「だからもうやめようよ、私も貴女も...もう一人、一人同士仲良くしようよ。私はエミール」

「貴方がそれでいいなら...私はフレイヤ、敬称は不要です

「よろしくねフレイヤ」


 ―――――――――――――――――――――


 話が纏まった辺りで俺は部屋に入った。


「さてと、蟠りも消えたことだし、さっさと始祖に復讐するとしよう」


 全員の返事を聞き俺たちは千寿の森を抜けた。


 あれから―――始祖の住処を探しながら魔王軍を討伐していった、エミールとマナのレベルは着実に上がっていった。

 しっかりとレベル上げをしないとこの後の始祖との戦いがかなり大変になるのだ、主にエミールが...。


 そして俺達とエミールが旅を始めてから5年が経過しようやく始祖の住処を特定できた。

 いかにも魔王が好きそうな城の近くには案の定魔王軍が駐屯している、なので俺はあの時と同じ言葉をエミールに掛ける。


「これはお前の復讐だ、始祖以外に力は使うな、露払いは俺達が引き受ける」

「ちょっとグレース、まさか始祖の相手をエミール一人に押し付ける気?」


 俺の言葉にマナが反応する。

 もっともだ、復讐相手はあの始祖なのだから決して油断していい相手ではない、だがこれはそうゆうシナリオなのだ...。


 俺は過去のトラウマで震える足を前へと進める、俺は再び繰り返そうとしている、かつての過ちと喪失感、俺はあの感情に耐える事は出来るだろうか...。


 魔王軍の雑兵達は難なく処理できた、後は始祖を残すのみだ。

 始祖に相対するとエミールは一人で始祖に立ち向かう。


「ねぇグレースほんとに大丈夫なの?」


 素朴な疑問をマナが俺に問いかける、なので俺はシーラもとい、精霊に聞いてみろと言う、昔の俺も本当に大丈夫か不安でシーラに聞いたのだ。


≪問題ありません、このステータス差でエミールが負ける確率は99.9%です≫

「え?100%じゃなの!?」

≪ほんのわずかではありますが可能性はあります、ですが大丈夫でしょう≫


 精霊の答えを聞き多少安心できたのかマナはエミールと始祖の戦いに目を向ける、俺はただじっと見ていた、じっと見る事しかできなかった。


 先頭は終始エミールの圧倒で終わる、本来の始祖の平均ステータスは6000万程、それに対してエミールは9999万、負ける要素なんて無いのだ。


 ただ一つの問題点を除いて。


 戦闘の最終局面、エミールが止めを刺そうとすると始祖の前に一人の少女が立ちはだかった。


「これ以上パパを傷つけないで!!!」

「メトラ...」


 始祖の呟きとメトラと言われた少女の叫びにエミールは剣を止めた、少し考えた後、唇を噛みしめながら剣先を下した。


「ちょっとエミールなにやってるのよ!早く止めを!!!」


 マナの叫びはエミールには届かない。


 ―――そして悲劇は繰り返される。


「すまない...メトラ」


 始祖の呟きと同時に少女の身体が光はじめ、やがて砂になってしまった。

 そして持っていた魔剣を自分の心臓に突き刺した。


 そしてそれを真似る様にエミールは自らの聖剣を心臓に突き刺した。


 始祖は死に絶えた、徐々に生命力が弱まっていくエミールを俺はあの時と同じように抱える。


「ねぇ知ってる?...別の世界のこと....その世界にはね...自分と同じ存在が居るんだって...だからさ...もう一度私を探して...ほしい...」


 掛ける言葉が見つからなかった今同じ状況ならば、間違いなく助けられるだろう、だが、あの時は違う、ステータスだけの無能な俺は傷を癒す事なんて出来なかったのだから。


「もしも、生まれ変わったら....もう一度君を好きになる...よ...」


 そしてエミールの伸ばした手は俺の頬に届くことなく光の粒となる。


 そしてエンドロールが流れる、真っ暗な世界で今までの冒険中の出来事が走馬灯のように流れるそんな中悲痛に暮れる俺とは裏腹にマナはキョロキョロとあたりを見渡す。


「え?これで終わりなの?」

「あぁ、これで終わりだ、この物語にハッピーエンドは無い、これにて終幕だ」


 こうして俺たちの冒険は幕を閉じる。


 真っ暗な世界から視界が切り替わり拠点にしていた黄金卿の景色が映し出される。


「戻ってきたのかしら?」

「あぁそれとクリア特典は並列思考だ」


 これだけでもストーリーモードをクリアする価値があるのだ、滅多に手にいれられない並列思考をクリア特典で確実入手できる

 他にも自分のスキルやステータスに見合ったオリジナルの武器が龍の都で手に入る、マナで言えば指輪、俺で言えば【覇邪聖王神斬 刃皇(ヘリド・ジュバン)】だ。


 クリアしたにも関わらず俺もマナも浮かない顔をしている、バッドエンドとはそんなもんだ、後味の悪さが尋常じゃない。


「もぉーなんかもやもやするーー!!」


 マナはどうも腑に落ちない様子、だから俺はある提案をした。


「ならば俺のこの後の5年の物語を見せてやろうか」

「エミールを失った後ってこと?」

「あぁまぁゲームとして作ってないからただ昔の記憶を見せるだけになるが」

「それでもいいから見たい!!」


 マナの額に手を当て俺の記憶を第三者視点で体験できるようにした、脳内で直接追体験するのだ、今回は直接は話したりはできないから完全に見るだけだ。


 せっかくなら俺もマナと共に追体験しようか...

タイトルがあれですがまだまだ続きます

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