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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第9章 覇王の追憶
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第66話 開幕

俺とマナで森を進むと目の前に文字が浮かびあがる。



≪ストーリーモードを開始しますか?≫



俺とマナは迷うことなく【はい】を選択する。


難易度はマナのレベルに合わせて難度25。

たぶん丁度いいくらいだと思うが...。


さらに進めると、世界が暗転し物語が始まる。


世界観の説明を【狡猾神ロキ】が語る。



≪この世界は殺戮と暴力が犇めく世界、魔族と天使は争いを続け人間は滅びてしまった、一匹の妖精はそんな世界に嘆き一人の英雄を呼んだ≫


≪切なる願いに答え英雄はその地を平定する、これはその英雄の辿った軌跡≫



「君はそんな英雄になる、名前を教えて」



ロキが俺たちに名前を問う、ゲームと似た様なシステムを採用しているのでよくあるユーザーネームの入力と言うやつだ。

なのでお互い名前を入力する。



「グレース」「マナ」


「いい名前だね、それじゃあ君は君の冒険を紡いでね、英雄様と同じようにはいかないと思うから」



そして視界が切り替わると再び周囲に森が映る。



「始まったのかしら?」


「あぁこれでスタートだ、まずはチュートリアルだな」



するとかつていた蜘蛛が一匹現れる。



そして近接攻撃、魔法攻撃の指南を受ける。


それをサクサクこなすマナ、この時の蜘蛛は一応無敵判定にしている、なのでこの蜘蛛は倒せない。

そして一定数の攻撃をおこなうと上空から斬撃が飛んできた後一人の女性が現れる。



「人類の生き残りがまだ居るなんて...」



そう、斬撃をとばしたのはエミールだ。



「エミール...」


「誰?グレースの知り合い?」



俺の声にならない声をマナは拾い取る。

俺もつい言葉に出てしまった....嫁の前で元カノの名前を口ずさむなんて...。



「あぁ昔な」



俺はこの物語の結末を知っている、それがハッピーエンドで終わらない事も...。



「グレース...?」



俺の頬には不思議と涙が流れていた。



「どうしたのグレース...いったい」


「いや、なんでもないんだ...ほんとに...」


「なんでもないなら涙なんて...」



俺は涙が止まらなかった、この感情がよく理解できなかった。

拭っても拭っても涙は止まらない。

明らかに異常な俺の姿にマナも動揺している。

声も言葉もあの時と同じだ、俺が泣いても物語は進む。


あの時の様に俺の手を取り走る。



「急いで逃げましょう!走れる?」



俺の手に伝わるエミールの手の温もり、溢れ出す記憶。

そして俺は自然とあの言葉を言う。



「君はあれに勝てないのか?」



そして、あの時と同じ様に答える。



「あれだけなら問題ないわ、ただキングは一夫多妻制なの、だから...]



こっからはシナリオが少し違う、あの時は大量の蜘蛛が犇めき合っていたがこのゲームではそんな無茶な状況ではない。


プレイヤーは皆俺と同じ事が出来るわけではないからだ。


現れた三匹の蜘蛛、俺は深呼吸をして落ち着きを取り戻す、いや取り戻させた、強制的に感情を抑制したのだ。

ここでは、必殺技の講習を受ける事が出来る。



「【崩壊之新星(ジル・ノヴァ)】」



魔法が発動し三対の蜘蛛を倒す。

すると新しく三対の蜘蛛ともう一体特別巨大な蜘蛛【キングジャイアントタランチュロス】だ。


最終ボス戦では連携攻撃を学ぶことが出来る。


俺とマナ、それからエミールの連携攻撃を当ててチュートリアルは終了だ。



「なんか、必要な事に思えないんだけど」


「まぁこれはチュートリアル、ゲームはこれからさ」



戦闘が終わるとエミールが剣を鞘に納めこちらに近付いてくる。



「貴方も生き残りでしょ?私と世界を救う旅に出てみない?」



そしてさらに物語は進む。



「もう少し行った所に私の故郷があるの、よかったら案内するわ」



俺たちは人間の国に向かう、そこは【ノエル王国】そしてエミールは楽しそうに国の事を話す。

だが、俺は知っている、もうエミールの帰る場所が無い事を、ノエル王国はエミールの活躍もあり人間という種族の最後の生き残りの国だった。


だが、人間の王は魔族が国に迫ってくるときにエミールを一人遠征に出した。

王はエミールだけが希望だと信じたのだ。


たとえ人類が滅びたとしても剣姫とまで謳われた彼女が居れば人間は滅びないと。

それゆえに、王はエミールを聖騎士団長から除名し旅に行かせた。


人間の国が滅んだという知らせさえ届かない【龍の都】に―――。



「お母さん元気かなぁ、それに妹たちも...妹エイカって言うんだけど私の真似して聖騎士になりたいなんて言うんだよ」


「さっき元聖騎士って言ってなかったっけ」


「私は除名されたの、王様からの特命でね、龍の都に居る赤龍に密書を届けて欲しいってね」


「ふ~ん、で、届けたの?」


「もちろん届けたわ、でも、やっぱり協力は出来ないって、そうだよね、龍種は基本傍観主義だから」



マナとエミールが話を続ける、先の展開を知って居る俺はその話に入れなかった。

楽しそうな会話を聞けば聞くほど俺の胸は締め付けられた。



そして...その時は訪れる。



「う...嘘...私の街が...嘘....違う...お母さんっ!!エイカっ!!」



俺は泣きながら走るエミールの後を追う事しか出来なかった。

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