第62話 黄金卿
ゼロが生まれてから5年が経過した
ほんとはマナのレベルや能力的にはもう少し早めに次のエリアに行きたかった所だがゼロが「ボクも戦えるようになりたい」なんて言うもんだから今はゼロの特訓に勤しんでいる。
生まれた頃から、ほぼ最高級の食品を食べているのでステータスは平均で1000万程、さすがに我が子の死を仮でも見たくはないのでもう少し強くなってからと思っているのだが以外とマナがイケイケなので、そろそろ次のエリアに向かおうと言うのだ。
エリアボスのステータスは6000万、俺が居る限り万が一さえも起こすつもりは無いが不安は拭いたい...
マナに無理を言ってもう5年はゼロの特訓に時間を貰った。
そしてゼロの10歳の誕生日、その記念日に立派な青年になったゼロは母の血を継いでいるの吸血鬼特有の夜間特攻やマナ特有の日光克服を備えた吸血鬼なので昼間でも十分に戦えるのだ。
さらに吸血鬼特有の自動回復なんかも最初から持っているだが...ステータスは産んだ人の初期ステータスに依存するようだ。
既にゼロのステータスは億の大台に乗るほどにまで成長した。
ここまで来るとゼロの居合の一閃だけで裏エリアボスの巨熊でさえも刹那の内に上半身が下半身と別れを告げる。
何故ゼロが刀を欲しがりその中でも大太刀と言う普通の刀よりも長い刀身を持つ太刀を選んだのかはわからないが...
大太刀に惹かれる気持ちは痛いほどわかる。
俺がそんなことを考えていると刀を鞘に納めたゼロがクルっと向き直り笑みを浮かべる
「父上!!どうでしたか?」
どうもこうも...
「満点だ!!!!」
笑顔で走って来たゼロの頭を優しく撫でる。
俺が子供に甘い?
そんなわけがないだろう。
まぁ、もし仮に負けたとしても「明日戦えばお前の勝利だ」とか言っただろうが...
今回は勝ったのだ褒めても褒めすぎと言う事はないだろう。
そもそもマナはそこまで褒めないのだ。
「私とグレースの子なんだから、もっとできるはずよ」
こんな風にお母さんが言うもんだから何か見てもらいたい事がある時は事あるごとに俺に見せてくる。
甘々な父親と向上心強めな母親。
褒められたい盛りの子供がどちらに甘えたくなるかは考えなくてもわかるだろう。
父の事が大好きなはずなのに...なにかあった時は母親の方に泣きつくのだ...
子供とは不思議なものである...
「グレース、そろそろ次のエリアに行かないかしら」
マナが俺に提案したのはこれで何回目になるだろうか、だが、ゼロの実力も考えれば次のエリアに進んでも全然問題はない。
ならば、そろそろ次のエリアに行ってみよう、俺もそろそろ草原のエリアは飽きてきた所だ。
だが、この世界はエリアで 転移できるのがランダムなのだ、草原エリアをクリアしたから森林エリアに進めるとかではないのだ。
クリアしたら次のエリアは完全にランダムなので運が良ければ俺の城にたどり着けるのだ。
エリアボスの魔法陣で転移するとそこは煮えたぎるマグマが川の様に流れている溶岩エリアだった。
―――あれから10年、他にも毒沼エリア、氷山エリア、深淵エリア、火山エリア、廃城エリア、遺跡エリア等を冒険した、後半のほとんどはゼロが1人で旅に出た。
俺は最初反対したがマナに説得され渋渋許可した、能力値的には問題ないから...と。
能力値的にはマーシャに多少劣る位だ、そもそも死んでも死なないのだから心配する必要はないのだが...
そんなこんなで要約見つけたのだ、シルビアの言っていた都市【黄金卿】恐らくゼルセラが作った拠点の複合体だろうが...もはや国と言える代物だ。
元々のエリア名は孤島エリア、周りを海に囲まれたそれなりに大きさの島だ、海にはマーメイドやらクラーケンなどの魔物がうろついている。
拠点アイテムなどを使い建物を建設した場合周囲に魔物が沸いたりしなくなるのだ。
つまりゼルセラの様に島の至る所に建物を建てた場合島の中に魔物が沸かなくなるのだ。
要約すると、このエリアはゼルセラの貸し切りの様な物、だいぶこの世界の事を知ったようだな
そして俺が何を言いたいかと言うと....来なければよかった...
エリアに転移して早々、巨大な門があり細かい装飾に重厚な扉そしてデカデカと―――
【黄金卿 中央都市グレーステ】
俺の名前が書かれた扉を潜ると綺麗な街並みが続く住人もしっかりと存在するといってもただの友好NPCに過ぎない。
会話もできるがとても簡単なものでしかない。
武器屋、宿屋、酒場、ギルド、診療所、教会、その他にも町としての生活に必要なものがほとんど存在する。
ここで問題なのが、建物の名前などだ武器屋などの建築アイテムはある程度名前を決める事が出来る、建物アイテムのレベルを上げれば販売するアイテムのレア度が上昇する。
そしてこの街の建物は何かと俺にちなんでいるのだ....こんなものを息子に見せたくはない。
一番の問題児は教会だ、普通教会はなんらかの神を信仰し信者達は祈りを捧げるそしてこの教会の信仰対象は俺...。
信者たちは俺に祈りを捧げなにかを願う、そんな信者を目にするのは悪くはないだけどやはり恥ずかしいものがある。
フレイヤはエミールの妹に会った時こんな気持ちだったのだろうか...
俺たちが街を探索していると1人の影もとい俺がゼルセラに鍛える様命じたくのいちが現れる。
――――と同時に霧になって消える。
あれ?
「私が以前遭遇した敵ですね、意外とレアなアイテムを落とすんですよね」
そういい俺にアイテムを見せてくる、確かにレアなアイテムだ、【暗闇之先駆者 常闇 風魔】神格級アイテムであり。
2つ名の俗に言う忍び刀という武器だ。
対人戦のメリットは倒した相手のアイテムを入手できると言う事でメリットは負けた時にアイテムを奪われることだ。
つまり、レアな武器をシルビアに奪われてしまったな...。
敵意を僅かでも抱いてしまったのかシルビアの抹殺対象になってしまったようだ。
ひとまずの観光も済んだので城に向かう、【シュテルケ城】だ。
芸術的な城でサイズもサイズだが城そのものが覇王級に匹敵する程の価値になる。
これほどの城をつくるのはかなり苦労したことだろう。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが...
どうしてくれようこの活き活きとしている3人を....俺の巨像を食い入るように眺め、教会で信者と同じように祈りを捧げ、俺の名を冠する酒を飲む...。
羞恥心で一杯なので、後でゼルセラにはお灸を据えようと思ったのだ。




