第59話 眷属召喚
恐らくミーシャ達が暮らしたであろう木造の建物にノヴァを抱えて入る。
内装は可もなく不可もなく、必要最低限ではないがそれなりに裕福な暮らしが出来そうだ。
建物を探索してみると部屋の一室にベットがある部屋を見つける、そこにノヴァを寝かせ俺は台所に向かう。
さっきノヴァが緑龍を倒したとき、パーティーメンバーの俺にもアイテムが入っている。
龍種の生肉、目ぼしいものはこれくらいだ、大した装備アイテムも手に入らず美味しそうな食べ物も特にはない。
調味料は既に台所に用意されている、俺の思惑通りミーシャ達はここで数年は過ごしたことだろう。
道具や建物には使いこまれた形跡がありそこかしこに冒険の軌跡が置いてある。
成長期の子にありがちな柱に切り込みが入っている。
懐かしいという干渉に浸りメモリを見ていくと恐らくは140程の高さにある。
んー結構長い事ここに居たようだな
さてと、俺に作れるのも限られている...そもそも龍種の生肉なのだからステーキにでもすればいいだろう。
【料理人】のスキルさえあればかなりのレア度の料理も作れるだろう。
特に深く考えることなく俺は台所に立ち徐に肉を焼く、肉は分厚い為片面を役にもそれなりに時間が掛かる、それも炎耐性が多少備わっている為台所の火では熱が通らない。
なので【火炎】の魔法で火力を調整してのんびりと焼く、ほんとはさっと焼いた方がいいのかもしれないけど、俺には料理の知識がない、それならのんびりと焼こうという事。
前世は一人暮らしが長かったが外食ばかりしていたせいで知識がない...こんなことならちょっとくらい料理教室に通っておけばよかったと思う...。
だが、そんな俺でも焼肉のタレの作り方は心得ている、なのでミーシャ達が入手したであろう調味料を使いタレを作る、元の世界なら創造系のスキルで簡単に作れるのだが..。
俺の作った世界では創造系のスキルは使用不可となっている、その代わりにほとんどの物にレア度や能力付与系の付属効果が存在し、ほとんどのアイテムがランダムで手に入る。
といってもモンスターのレベルや能力値によってドロップするレア度が変わってくる、この世界の俺の城である、最終エリア【覇王の居城】にいるフリューゲルの上位勢はほとんどが神格級のアイテムをドロップする。
さらに、裏ボスなどのエリアボスは城を創造する系のアイテムを稀に落としたりする。
しかもそれはそのまま元の世界でも使用できる、城なんかはレア度がそれなりに高いがそれなりに豪華なはずだ、もしかしたらミーシャ達が暮らした城もこの世界にはあるのかもしれない。
俺はそんなことを考えながら調味料を加えてく、醤油、味醂、ニンニク、生姜、砂糖、それらを適量投入し混ぜ合わせる。
俺の秘蔵のレシピだ、まぁありきたりだが...。
肉も焼けてきたのでそれを【収納】スキルに入れておく、温度や鮮度をそのまま保存できる優れものをこの世界に入った段階で能力付与が行われている。
俺には元々より上位のスキルを持っているがたまにはこうゆう不便さも味わってみようと思う、ゲームでもよくあるデータを消して最初からやる様なものかな?
ゲーム開始直後のアイテム所持数の少なさの苦労や、まぁ...強くてニューゲームに近いのでそこまでの苦労は無いが、多少の不便さは合っても、言うなればこの世界を楽しむための縛りプレイに近い。
さてと...料理も終わったが未だにノヴァは眠っている、控えめに言って暇だ、普段の俺なら寝ている姿を眺めるところだが...ちょっとこの世界を散歩しに行こうかな。
「あぁそういえば俺も【眷属召喚】できたな...」
眷属を召喚しようと思い発動してみたが...スキルは発動しない...。
「あぁ...俺に眷属は居なかったな...」
フリューゲルのゼルセラ達は俺が作りだしたので眷属と言えなくもない....だが、あれに血の繋がりは無い、血の繋がりだけで見ればシエラとキーラ...だが...あれも妹だから眷属とはならない。
試しに俺の血から配下を作ってみようか....単純な発想だったが....まさかあんな事になるとは今の俺には知る由もない。
そんな未来の事は知らずに俺は爪で人差指の腹を切り血を垂らし【眷属創造】を使い生み出す。
ノヴァの侍女的な存在にしようと思ったのでメイドかなと思いそれらしい顔や肉体を思い浮かべる、だが....【眷属創造】は俺の持つ【森羅万象之創造者】と比較するとかなり下位互換のスキルだ。
顔や能力値は対して弄ることが出来ない顔なんてほとんどランダムで生み出してからしか判らない、弄れるのも性別と体格くらいだ...。
さらに召喚までそれなりの時間が掛かる1、2分待つとようやく地面に魔法陣が浮かび上がる、やがて銀髪の女性が魔法陣から現れる。
ふむ、俺の眷属らしく美形だ、まずは一安心...もしこれで前世の俺佐藤健太似の眷属が生まれたら嫌だったからな...。
整った顔立ちに切れ長の瞳、俺と同じ銀髪だが、紐は無い為髪は結んでいないしかもメイド服を着ている訳ではないのでメイドとは言えない....のかな...。
俺の血から作り出したからなのか能力値は馬鹿げている、ゼルセラとマーシャを足しても全くと言っていいほど足りていない、おそらく赤子の手をひねるが如く瞬殺されてしまうことだろう...
まぁ、まだスキルは初期の【収納】しか所持していないそれにレベルも1なので多少はゼルセラも粘ると思うが...。
だが...侍女なのだから感知系や探索系まぁそれなりに戦闘もできた方がいいしな。
「10分ほど時間をやる、この世界の敵を滅ぼしてこい、最優先はスキル集めだ、その副産物としてアイテム収集」
「かしこまりました覇王様」
一礼して建物を出ようとするので慌てて止める...恐らく素手でも大丈夫だろうが...。
「これをやろう、対した効果は無いが何もないよりは良いだろう、それと服や装飾も探してくるといい一応メイドを目指すのだ」
「承りました覇王様からこれ程の品を頂けるとは...この宝に似合う成長をご覧入れましょう...」
ただのロングソードを渡しただけでこの対応だ、少々過剰すぎるが....この忠誠度ならノヴァを任せられるだろう。
まぁ、頑張っていただけるようで何より。
「それでは失礼します覇王様」
一礼をしほぼ初期装備の全裸体で草原に飛び出していった。
「またしても俺が暇になってしまった...」
ここの草原の裏のエリアボスのステータスでも見に行こうか。
おっと当初の目的である、俺がちょっと外出している間の警備の役目を完全に忘れていた。
まぁ、魔法で障壁を張っておけばいいだろう。
さてと、障壁を張り俺も草原に出る、眷属に10分と言う制限を賭けた以上俺も10分以内には拠点い戻らないとな。
俺が草原を歩き始めて思ったことがある...敵が居ない...まぁ命令を出した以上ここら辺の雑魚は処理しただろうが....。
この分だとエリアボスも倒しているだろう...まぁ裏のエリアボスに関しては入った時点で再出現するので問題ない。
エリアボスの入場は【覇道之天門】という門によって管理されている。
巨大な門は古代遺跡に似せた作りにしてあるので綺麗で細かい装飾にも苔が生えている、まぁここが草原なので苔なのだが、それぞれの地形に合わせた作りになっている。
中に入ってみれば大きな体格をした巨熊が怒号のような咆哮をあげる。
固そうな体毛に鋭い爪と牙、ステータスは平均6000万程、こちらに来たばかりのシザースでは勝てないだろうな。
「んー今のノヴァのステータスは平均が2000万程、だが...あの魔法連発で勝てるだろうな」
分析もある程度できたのでもうこの熊には用がない、俺は【破滅之怪線】を使用し熊の巨体を焼き切り真っ二つにする。
ボスモンスターはアイテムを3つ落とす、装備、家具、食料これらがランダムかつそのモンスターにちなんだアイテムがドロップする。
武器は素戔嗚、家具は蝋燭、食料は熊の鉤爪、はっきり言ってゴミのレベルのアイテムだ、食料がドロップするといっても食料というよりかはモンスターの素材だ、鉤爪はさすがに食べれない。
家具も蝋燭、一応超級のアイテムだが拠点に配置した際のステータス値上昇と暗闇耐性値上昇くらいしか効果はない。
そして武器、神話級の武器の素戔嗚だが二つ名武器例えばゼルセラの持つ武器の【光の熾天使 神癒 ラファエル】のような二つの呼称があるわけではなくただの素戔嗚なのだ。
能力も大したことはない、少し残念だが最初のエリアのボスなのだから問題ないだろう。
エリアボスを倒した場所に二つの魔法陣が描かれる一つは拠点への転移もう一つは次のエリアに向かう転移。
今回は拠点に戻ればいいので拠点への魔法陣を利用する。
魔法陣が光を放つと視界が切り替わり目の前に木造の建物が見える。
「到着だな、それから....5....4....3....」
そして0と同時に女性が現れる、もちろん俺の眷属だ圧倒的なステータスはさらに伸びているが、見た目や武器は変わっていない。
「ただいま戻りました、それと一つ謝罪したいことが...」
差しだされた物は俺が渡したロングソードだった、だが剣は折れてしまっていた。
謝罪の必要は無いほぼ最下級の武器だし無くしたといわれてもたいして気にもならない。
「別に構わん、それと成果はどうだ?いい服や武器は見つかったか?」
「はい武器は【天ヲ導く光之祭祀 天照 アマテラス】この武器の権能は複製です」
なるほど、それは剣というよりかはナイフの様なものだそして効果は複製、投げても何度でも複製される。
たしかに大きな剣や槍よりかは隠し持てるナイフの方がメイドらしいだろう。
さらにこの武器にはアマテラスが宿っているらしく属性は光、祭祀だからといって杖であると言う事はない。
神の能力が剣に宿っているだけに過ぎないのだ、例えそれは剣の神であっても槍に宿ることもあるのだ。
まぁ正直それはどうでもいい、俺としては服の方が重要なのだから。
「そして装備と装飾なのですが...色々ありすぎてしまい....私では....なので....可能でしたら覇王様に選んでいただきたく」
眷属の願いに、ふむとだけ返し腕を組む。
正直、メイド服はどれもいい物ばかりだ、大体がコスプレのような物だがその中で一つロングスカートで落ち着きのある衣装が一つだけあった。
これ以外どれもコスプレのようなので俺はそれを選ぶ。
どうやらこの衣装は【最奥の侍女 神学 アフロディーテ】中々レアなアイテムの様で能力の上昇値もかなりのものだ。
装備の上昇量は%で上昇していく、元の能力値と適正値次第で上昇量は変動する、つまり、元の能力値が高ければ高いほど上昇量も増える。
なかなか強いではないか....いやこれだと、強すぎるか?
自信があるのかそれを身に纏うと満面の笑みを浮かべる、まぁ強さはどうでもいいか。
かわいいからよし!
だがまだ一つ決めていない事が存在する。
「お前の名前はシルビアだ」




