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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第6章 魔王会議
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第43話 正義とは...

オルフと世間話をしているとひとりの魔王が口を開く



「あ、あの...どうして我々に慈悲を掛けるのですか?あなた程の力があればこの世界を支配するなど容易いことでしょう...失礼を承知で聞かせてもらいます...



―――あなたの本当の目的は何ですか?」



俺は獣魔王の言葉を口の中で転がした




俺の目的は...



―――楽園を作る事?


―――エミールと暮らしやす世界を作る事?


―――仲間や配下の皆が幸せに暮らせる事?


―――俺自身が自由に暮らせる事?



ぱっと思い浮かぶがどれも的を得ない


俺の目的...


そうだな...


子供達が笑って暮らせる世界....



「俺の目的は自分の中の正義を貫くことだ、種族の垣根を越え成功を共に喜び合い失敗に泣き、明日を目指す

そんな世界を俺は作りたい」



「今迄、それを口にしてきた者は多い、力なき理想は妄言であり力のみの支配は破滅でしかない、あなたはどちらを望む?」



手のひらサイズの精霊がそれを問う




「精霊の女王よ、俺を誰と心得る?別世界の統治者だぞ?これを見るといい」




俺は指をパチンと鳴らし魔王達の前に魔法で修羅の世界を映しだす



そこに映し出された光景に魔王達は驚愕する


俺が映し出したのは現在の修羅の世界だ、そこでは魔族、亜人族それから天使と悪魔さらには龍族までもが手を取り合い暮らしている



「この世界をどう思う?」



「とても素晴らしいと思います...ですが....」



精霊女王は気が付いたようだ。


―――その世界には人族が居ない



「貴方が滅ぼしたのか?人族を...」



「勘違いするな、俺ではない、この世界に転生者は転生しないつまり人族に魔族に対抗する手段である勇者は居なかった。

元々この世界は戦いこそが、強さこそが正義だった、強き者はさらに強さを求め弱き者は強き者の配下になるか殺されるかの二択しか選べなかったのだ」




「何故魔族は人族を攻めた?魔王は民を守るために...」



あの世界とこの世界は違う、根本的に守るために戦っていたわけではない




「魔王の始祖は弱者を屠るために剣を取った、暴虐の限りを尽くす破壊の化身として、他の魔王達も始祖に続き剣を取った護るための剣ではなく滅ぼす為の剣をな」



「貴方は人族の生き残りというわけか...」



初めて炎魔王が口を開いた



「俺たちは戦った、平和の為に」


【強き者に従う】世界の法則は単純だった、そして俺たちは強さを求め頂へと至った、頂にはすべてがあると信じていたからだ

富、名声、権力、やりたい放題のはずだった。



「だが―――愛する者は殺された、俺はその報復として魔族の大半とそんな秩序をもたらした神々を滅ぼした

繰り返す訳にはいかないのだ...」



「その夢物語に私は協力させてもらいます、何か御用があればこの精霊女王をお頼りください」


魔王達を見渡せば全員が真剣な表情で頷き協力の言葉を口にしていく




人よりも理解が早いことに少し驚いたが俺は胸を撫で下ろす



「なら各々国に戻り民に聞いといて欲しい新規入学でも転校でも構わない何かあれば思念通信で俺に連絡をくれ」



「一ついいだろうか?それは我々巨人族も入学を認めるとう事か?」



俺の頭に疑問符が浮かび上がる、何故巨人族だけ受け入れを拒否しなければならないのだ?



「巨人族は文字通り巨人だ、私は体のサイズを自由に変える事が出来るが...民たち...これから学ぼうと思う子達にそれは不可能だ...」



確かに...巨人族は子供と言えど巨人は巨人だ教室には入らない...ふむ....




「なら魔道具を使うとしよう」



俺は当然の様に言っただが他の魔王達からしたらそれはあり得ない事なのだ

巨人族の体のサイズを自由に変えるなど並大抵の事ではない、その魔道具は間違いなく伝説級の物になるだろう

そしてそれを生徒たちに配るなど到底行えることではない。それが常識だった。




俺は無造作に魔道具を【収納箱】から取り出しそれを巨人族の王に投げた。

それを受け取ると巨人族の王は驚きの笑みを浮かべる。

それは笑みと呼ぶには実に怪しい微笑みだった。



「それは巨人族に限らず自分の体格を変更できる指輪だ、入学者及び入学希望者とその家族の人数を後で報告してくれ、人数分渡そう」



驚きを通り越し唖然といった表情で了解の意を示す巨人族の王。




「無いようなら各々領地に戻り役目を全うしてくれ、何かあれば先ほど言った様に【思念通信】で連絡をくれ」




魔王達は一斉に転移していった。

ただ一人を残して。


残っていたのは吸血鬼の王だった。



「役目を全うしてくれと言ったが...何をしている」



吸血鬼の王は平伏している、そしてその姿勢のまま言葉を発する



「貴方様のお力を見込んでお願いしたき議がございます、何卒覇王様....」



表情は見えないが声のトーンからどれだけ真剣に言っているかが伝わってくる。

その前に確認したいことがある。




「先に俺の問に答えて貰おう、お前―――魔王では無いな?」




「さすがの慧眼でございます、本来の魔王は現在封印されてしまっているのです」



なるほど、やはりそうだったか....こいつは確かに魔力はそこそこあるが魔王種ではない。

つまり...



「封印されている主を助け出してほしいと言う事か....」



「何卒覇王様...私の命は自由に使ってくれて構いません...ですから...」



俺は手を吸血鬼の肩に置き言葉を止めた。



「その吸血鬼の真の名を教えろ」



「スカーレット・ノヴァと言います」



ふむ、とだけ言い残し俺は転移魔法を使用した。


そこには大きな扉があり、転移疎外や反魔法の類が何重にもかけられている。

並大抵の魔力じゃびくともしないだろう。




扉に触れようと手を近づける、すると中から何やら声が聞こえる。




耳を澄ませば女の叫び声の様だ。




「来るなぁぁぁぁぁぁ!!」




まさかピンチなのか?!もしかしたら何か起きたのかもしれない。




俺は急いで扉に手を掛けドアを開くその瞬間に俺の【常時発動(パッシブ)スキル】の影響で侵入疎外や魔力抑制、魔法禁止区域(アンチマジックエリア)などの魔法が砕け散る。



中は大きな空間があり部屋の奥には大きなクリスタルが宙に浮いているだけであり、それ以外はこの部屋には何も置いていない。



俺はその巨大なクリスタルに見惚れるかのようにゆっくりと近づいた。

罠があろうと特に気にはしないがもし一定距離近づいたらクリスタルが弾けるとかだったらいやだからである。



特に罠も無く無事クリスタルの元まで近づくことが出来た。

驚くことにクリスタルの中には少女が眠っていた、だがこの場合は眠るという表現は間違っているだろうか?

少女は怯えて意識を失ったようだ


少しの間クリスタルの中の少女を眺めていた、だが一向に起きる気配はない。




―――かわいい。



ブロンドヘアに透き通るような白い肌ちょっと尖った犬歯に控えめな胸そして見事なまでの一本線...。



少女は全裸だった。俺は意識を失っている少女をまじまじと見続けた。

真剣な表情で少女の幼い体をじっくりと眺めていた。



ただ眺めていたわけではない。真剣に考えごとをしていたのだ。

どうしたらこの子を俺の配下もしくは嫁にできるのかと...。



10分ほどが経過しただろうか、俺はある結論に至った


―――助けただけで俺に恩を感じるのじゃないだろうか?前世の俺は兎も角今の俺はイケメンのグレーステ・シュテルケだ。

女なんて一目見ただけで俺に惚れてしまうのではないだろうか...。



結論がでたので俺はクリスタルに触れて封印の術式を破壊した。

クリスタルが砕け少女が落ちる。

裸の少女の小さな体を俺はこの手で受け止めた。


お姫様抱っこの様に少女を抱きかかえ転移魔法をしようとし俺はあることに気が付く。


この子の裸を他の者に見せるわけにはいかない...俺だけのものにしよう...。


俺は【変更(エディット)】の魔法を使用し服を生み出した。

黒と赤を基調としたフリルのついたドレスだ。




―――美しい。




俺は再び抱きかかえ転移魔法を使用した。



視界は瞬時に切り替わり俺の前には未だに吸血鬼の男が膝を着いていた。



「戻ったぞ」



声を掛けると男はようやく顔を上げる、そして歓喜し涙を浮かべる。



―――服を着せて正解だったな。



「ありがとうございます...ノヴァ様はどうされたのですか?」



意識を失っていることが不安だったのか心配そうに俺に聞いてくる、いい配下じゃないか...。




「安心しろただ眠ってるだけだ」



俺はそう言い指パチンと鳴らした、お姫様抱っこをしているというのに何故俺は指を鳴らしたのだろうか...まぁかっこいいと思ったからだけど...



少女はゆっくりと目を開らく。



深紅の瞳が徐々に見える。

幼さの残る瞳はどこまでも紅く魅了されてしまう程。


未だ意識の遠い少女を見つめ優しく微笑む。


意識がはっきりしてきたのか自分の状況を認識し顔が赤く紅潮していく。

そのまま少女はうつむいてしまった。



―――となるはずだった...。



「イ...イヤァァァァァ!!!!」



顔から血の気が引いたかのように真っ青になっており俺の想像とかけ離れている。



「え?」



あまりの動揺に腕に力が入らず少女は勢いよく俺の腕から飛び出していく。




飛び出した少女は即座に距離を取り俺に手のひらを向ける。



360度俺を囲む様に魔法陣が展開されるその数は100や200ではない。

すべての魔法陣がこの世界では禁忌とされている魔法の数々だ。



これだけの魔法を同時に展開しすべての詠唱を破棄するなど並大抵の技ではない。



本来ならば感心するべきだが今の俺の心にそれ程の余裕はない。

想像とかけ離れた態度に向けられた敵意。


俺の心を砕くには十分な材料だった。



少女が手を握りしめると魔法陣は光はじめ魔法が発動する。

それは外れることなく俺に命中した。



ダメージは入っていないだが攻撃の一つ一つが俺の心にダメージを与えていく。

俺は少女に嫌われ敵意を向けられ攻撃をされている。



相手から攻撃を受けて膝を付いたのは初めてだろうか...。



俺は膝から崩れ落ちた膝を付いてからも魔法は止まることは無い。

あの表情が俺の頭から離れない。


俺を見て叫んだあの時の表情は完全に化け物を見る目だった。

身体に痛みは無い。


それなのに...。


俺の心のHPはもう僅かしか残っていない...。



俺は...。




俺は...。




嫌われるためにこんなことをしたわけじゃない...。




俺は...。




僕は....。

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