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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第5章 厄災と救世
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第31話 策謀

王女視点でスタートします

覇王が帰ったあと、疲労のあまりソファーに倒れこむ、お付きのメイドが「はしたないですよ」とか言ってるがこればっかりは治せない

四騎士達を呼んでくるように伝えるが決して追い払ったわけではない


たまにはこうゆう一人の時間が大事なのだ、覇王に転生者だということがバレたのはそこまで問題にはならない...と信じたい...

実際、この国には転生者が山程いる、召喚したのはいまだに二人だが、異世界から流れてくる者が多いのだ


そこで問題になってくるのがあの覇王を名乗ってるのが転生者なのかどうか、転生者、もしくは転移者、可能性が一番高いとすれば元々の似た様な異世界からさらに転移してきた存在と言う可能性

あそこまで世界にのめりこんでいる転生者などほとんど見かけていない...

だとしたらやはり転移者なんだろうか


転生者だとしたらここまで世界の仕組みについて知ってるのは不自然だ...



どんなに頭を悩ませようと結論はでない...本人に聞いた方が早そうな気までする

でも、そう簡単には答えなさそうな気がしなくもない

私がそうだったからだ、元日本人のごく普通の高校生だった私がこんな金髪のロケットロールを演じてるなんて...恥ずかしさでもう一度転生してしまいそうだ


ドアの外から鎧の足音が聞こえるので王女としてのスイッチを入れる

ノックが聞こえるのでできるだけ凛々しく「入りなさい」と告げる

王女っぽい話し方を練習したが正直、どれも幼さが抜けきらない...どこか可愛らしさが残ってしまう


いっそ王っぽい話し方をあの覇王に聞いてみようか...実際あいつには王の威厳が感じられた、あれが王の姿なのだとしたら真似をしたいものだ...


四騎士の面々がぞろぞろと部屋に入ってくるエイカにガイルそれにリーエンにリアンこの四人はこの王国ではトップクラスの実力者達だ


エイカは聖騎士団長の妹だしリーエンは周りの国々にも恐れられる程の魔法の使い手だ

リアンはこの国の聖女として常に国全体に結界を張ってくれている、この国が平和なのはこの聖女様のお陰とも言えなくもない

そしてガイル、彼は元々ただの農民だったが力と剣術の才があったからこそ国王つまりは私の父に気に入られた

他国としても喉から手が程欲しい人材達だろう

ただこの面々であったとしてもあの覇王の足元にも及ばない

覇王と唯一戦えると思っていた勇者もあのざまだ


これ以上覇王の好きにさせる訳にはいかない、国の規律が乱れてしまう...


窓の外に視線を伸ばせばこの城よりも大きな城と王都よりも大きな街が既に出来ている

あの男はどれもこれもが規格外であり、対抗手段がほぼ存在しない


唯一対抗手段があるとすれば...


机に置かれている羊皮紙に目をやる、この魔法の巻物(スクロール)に賭けるしかない、これはあの男自身が持っていたものであり強い種族が封印されている可能性が高い

それに気づいたのかリーエンとリアンが食い入るように羊皮紙を見る


「これ程の巻物(スクロール)を一体どこで...」「禍々しい魔力を感じます、これはいったい...」


魔法の知識がないものにはわからないだろうが、少しでも魔法の知識があれば理解できる代物だ


「この禍々しい魔力は、魔族のものです」


そうだったのか、魔族が封印されているのか...だがもう、これに掛けるしか無い、ここで強い魔族を配下にして覇王にぶつけるしか勝つ方法が見つからない

悪魔ならば人間よりも高いステータスを誇る、


「私はこの巻物(スクロール)を使おうと思っているわ」


「やめた方がいいです、これほどの魔力を持つ巻物(スクロール)には何が封印されているか私にもわかりません、最悪の場合―――国が滅ぶ恐れがあります!」


リアンは引き留めるが、リーエンだけは少し気になっているみたいだ、これは好都合だ


「それは大丈夫なはずよ、あの覇王はこの国が滅ぶ事を望んでいない、この国に災いが降り掛かろうとするのなら全力でそれを叩きつぶすはずだわ」


「リスクが高すぎます...私は覇王様には恩義を感じています、今この国の結界を強化し維持されているのは、紛れもない覇王様です」


確かにリアンの言っている事は正しい、この国は今あの覇王に守られているといっても過言ではない、だが、やるしかないのだ、この国を乗っ取られる前に―――


「第一この魔族を召喚したとして我々に従うとは思いません」


「従うのではなく従わせるの、私達はもう戻れないところまで来ているのだから」


「確かに陛下の魔力があれば普通の魔族程度であれば屈服させることが出来るかもしれませんが...やはり私は反対です...」


リアンが話に耐え切れなくなったのか部屋を飛び出していく、止める事はしない、むしろ魔族を召喚するのに聖女は必要ない。


「陛下は、あの覇王様に勝てると思っているんですか」


「あいつは今、私が魔法も禄に使えない雑魚だと思っているはずよ、その意表を突けばなんとかなるでしょう」


実際、さっきの演技はうまく行ったはずだ、その証拠に私に魔法を教えてくる始末だ、計画は順調といえる、それなのに

ガイルが鼻で笑った気がした


「俺も覇王様には恩義があるからこの話には協力できない」


立ち上がり部屋を出ていくガイルも引き留めはしない。


「残ったのはエイカとリーエンだけね...2人も出て行っていいのよ」


「私は自分の意思で残っているのですよ、陛下」


リーエンはきっとどんな魔族が召喚されるか気になっているだけだろう

エイカは―――


「私は...お姉ちゃんが守っている陛下をお守りしたい...でも...お姉ちゃんが覇王様に付いている以上覇王様にも協力したい...それにフレイヤ様だって...」


やっぱりこっちは決断できていないようね、自分の意思が定まっていない者はここに居る必要はない、巻き込むのはかわいそうだしもし上手く行かなかった場合立場が悪くなってしまう、姉との仲も悪くなってしまうだろう


「あなたはエミールの元に行きなさい、今回の事とは無関係にしてあげるわ、もちろんその後、戻って来てくれてもいいから、まぁこの国が残っていたらだけど」


「はい...お役に立てなくて申し訳ありません」


エイカは涙ながらに部屋を出て行った



―――さてと...

さっそく召喚をするとしよう


呼吸を整えてから脅える気持ちを抑え巻物(スクロール)に魔力を流すと、巻物(スクロール)は青い炎に焼かれ消える


突如自分の周りだけが暗くなった気がした

足元が崩れる様な感覚を味わう、まるで、自分が何か脆く崩れやすい場所に立っていてそれが徐々に崩れていき奈落の底から何かが迫って来ている様な感覚だ


視線だけを上げて見ると机の上には一匹の悪魔が立っていた

やたら肌の露出が多い気がする、まるでサキュバスの様な見た目だ、立派な角に長い尻尾、お腹には紋章が


―――描かれていないようだ


後ろでリーエンが「最強の悪魔」と呟いていたがそれ程の存在を生み出してしまったのだろうか...


「どうやってお前()()の魔力しか持たないやつがこの私を召喚で来たんだ」


言葉を返そうとするが声が出ない、相手もそれは理解しているようでこちらの回答を待っている様子では無い様だ


「お前ではない何者かの魔力的干渉を受けたのか...」


「そこの這い蹲っている王女よ、私に協力するのであれば、殺すのは止めといてやろう、どうだ?『喋ることを許可する』」


許可されたことをきっかけに声が出る様になる


「できる限りの範囲でならばお手伝いさせてもらいたいと思います」


「賢明な判断だ、お前も知っているだろう、隣に出来た街の城主の事だ」



願ってもないことだ、この悪魔の要求とこちらの要求が奇跡的に噛み合っている

どうしてこの悪魔があの男を狙っているのかはわからないが丁度いい―――


気配を嗅ぎつけたのか部屋のドアを勢いよく開き飛び込んで入ってくる

ガイルはすぐさま剣先を悪魔に向けるが何か見えない腕の様なものに捕まれるように壁に弾き飛ばされる


悪魔はガイルに近づいて行き首を鷲掴みにする


「なんだ?私に搾取されるための生贄を用意してくれるとは気が利くじゃないか」


まずい、このままではガイルが殺されてしまう、息を吸い込み声を張り合上げる


「お待ちください!!相手が同じ覇王ならば協力し合いましょう!その剣士はこの国では高位の剣士なので何卒お許しを...」


「なに?!相手は覇王だと言ったな...」


「はい、『覇王グレーステ・シュテルケ』という男です」


「そうか...そうか、フフフッそうかそうか遂にあのじじぃ共は滅んだのか!これは傑作だ!いいだろう人族の王女よ、お前の要求を全面的に吞もう」


悪魔は高らかに笑う―――すると急に怯えた様に振り返る、悪魔の視線の先にはこの部屋の窓があるはずだ


窓に視線をやるとそこには銀髪の長い髪をした少女が窓ガラスから覗いていた

その姿は、あまりにも見覚えが合った、あの美しく整った姿は早々に忘れられる存在ではない



―――シーラ・シュテルケ


―――あいつの妹だ



窓ガラスを割ることなくすり抜ける様に入ってくる、その光景はあまりにも異質だった


体すべてが通過すると同時くらいに相手からの重圧が圧し掛かる、それはまるで、悪魔を召喚した時と同じ様なものだ

自分とリーエンは地を這ってしまっているが悪魔はいまだに仁王立ちのまま相手を睨み続けている


もしかしてこの悪魔なら覇王本人には勝てなくてもこの妹には勝てるかもしれない


「良い覇気を持っているようだな」


「それはお互い様です、ですがお兄様には遠く及びませんね」


何故か2人して笑いあっておりこの空間はとても異様に感じた



「兄と言う事は、お前は覇王の妹ってわけか、一人で来るとは哀れとしか言いようがないな」


「いえいえ、こちらとしては『貴女こそが罠に嵌った哀れな淫魔に過ぎません』」


「私をただの淫魔と同じに考えてるなら痛い目を見るぞ」


「なんなら私が貴女に淫紋を付けて差し上げましょうか?」


「言うではないか、小娘風情が...!!」



バチバチとした殺気が可視化され部屋は衝撃波によりメキメキと音を立てている



「明日、私の兄の城に来てください話したい事があります」


「あの世界の者にしては随分と手ぬるい考えをしてるんだな」


「これでも貴女の身を案じているのですよ、素直に命令に従ってください、お茶くらいは出しますから」


「いいだろう、自分の住む所が無くなっても良いと見える、ならば約束通り明日滅びを告げに行くとしよう」


「それではまた明日お会いするとしましょう『超魔王ヴェルダナータ様』」


「フフッ久しぶりに聞いたぞ、その名を恐れずに呼ぶ者が居るとは、ならばそっちの『覇王グレーステ・シュテルケ様』にもよろしく伝えといてくれ」


言いたい事は伝えたと銀髪の少女は消えてしまった


「貴女が伝説の超魔王...」


「随分と楽しい場所に召喚してくれたものだ人族の王女よ、感謝するぞ」




自分達はなんと恐ろしい存在を召喚してしまったのか

ここまで来た以上後戻りはできない...この先どんな結末になろうとも...―――

後ろのリーエンだけが唯一平静を保っている様にも思えた

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