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最強は最高にわがままな証  作者: 早乙女 鰹
第12章 伝説の覇王
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第102話 過去の思い出

俺は驚愕した。

それは俺の正体に両親が気付いていたからだ。


俺は両親に呼ばれ別室へと行った。

そこにはテーブルを囲む母親と父親。


真剣な表情をしている両親を眺めながらも俺は正面に座った。

俺が緊張していると母親は肘を付き柔らかな表情をする。



「元気そうね。健太(けんた)


「なっ!?俺は健太(けんた)ではない!!」



必死に誤魔化そうとするが呆れたように母は笑う。



「それくらい分かるわよ。お母さんだもん」


「何故わかった...ボロは出してないぞ」


「ピーマンの肉詰め...昔から食べれなかったものね」


うぐ...まさか嫌いな食べ物でバレるとは思わなかった...。



「それから、兎愛(とめ)は滅多に懐かないのよ」


やはり母親にはなにも隠せそうにないな。

どこで知ったのか俺の事は知っている様だ。


俺の能力の事では無く、俺の正体の方だ。

親父は険しい顔をしていたが柔らかく笑う。



「元気そうだな、それが知れただけで俺はいい」


親父...

俺の中に親父との記憶はほとんど残っていない。

幼少期、それも小学1年生には辛い現実。

父と妹を失った俺はあまり感情を表に出さなくなった。

母は女で一つで俺と姉を育ててくれた。

20歳を越えた俺は上京した。

都会で仕事をして母親への仕送りは忘れない。


そんな俺は27歳と言う若さでこの世を去る。


記憶にほとんどなかったはずの父親。

だがそのやさしい微笑みを見た瞬間俺の中では様々な感情が渦巻いていた。

俺は母親を残し先に死んだ。

優しい母に悲しみを背負わせてしまった。


だが、こうして父親は笑ってくれる。

異世界に転生し俺は充実した生活を送っていた。

今の生活に不満はない心残りがあるとすれば残してきた母親だ。


母親は兎愛(とめ)と親父を失った後いつも浮かない顔をしていた。

そんな母を労り、姉は実家に残り俺は出稼ぎに上京した。


俺を失った母親の気持ちはわからない。

そして今俺の前に居る母親は俺が死ぬことも親父が死ぬことも兎愛(とめ)が死ぬこともしらない。

昔の元気な母親。

笑顔が優しいあのころの母親。


「どの時代から来たの?」


母親の問は俺の胸を締め付けた。

俺は若くして死んだ。


最初は伝えようか悩んだ。

未来から来たのはもうわかっているだろうが、まさか死んだとは思っていないだろう。

だけど...俺は決意を固めた。

この事実を母に教えたとしても未来は変わらない。

未来に干渉する事は出来ないので親父と兎愛(とめ)が死ぬ事は変わらない。



「母さん...いい。これから言う事は嘘じゃない。俺は死んだよ」


「そう...」


母の顔に悲しみが溢れる。

父は驚き別室に居る健太(けんた)を壁越しではあるが見つめる。


「ごめんよ母さん」


「ううん...ごめんなさいちゃんと守ってあげれなくて...」


ごめんよ母さん...

俺には勇気が無かった。

異世界の覇王となった俺でも母親に告げる事が出来なかった。

明日父と兎愛(とめ)が死ぬことを。


その後の母親の表情を想像するととてもではないが俺からその勇気はでない。

俺は干渉することができない...。

今の俺の力では未来に大きく改変が残る事象に干渉することはできない。

親父を助ける事。

兎愛(とめ)を助ける事。

それは未来の俺、ゆくゆくは覇王となる俺自身に改変が齎されてしまう為改変することが出来ない。


俺はただ見守る事しかできない。

この暗い未来が訪れると言う現実を。



その後俺はその説明をした。

俺が干渉できない事、そしてもうじき俺は元の場所に帰ると言う事。


母が紗生(さお)兎愛(とめ)に呼ばれ部屋を出た後、俺は父親にだけ伝える事にした。

兎愛(とめ)が死ぬことではなく、父自身が明日死ぬことを。


だが、父はどこか安心したように笑う。


「そうか...でも健太(けんた)や家族が俺より少しでも長く生きれたのなら

―――父さんは満足だよ」


あぁ優しき父よ...俺は父さんの事が大好きだよ...。

俺に未来を変える力はない、だがそれも今の話だ。


「俺は父さんを死から救うことは出来ない、だからせめて魂だけは救い上げる様にするよ、天国よりも楽しくて地獄よりも遥かに優しい世界に。だから―――」


拳を付きだして親父に笑顔を向ける。


「後は任せてくれ」


親父も俺に拳を付きだして笑う


「やるだけやってみるさ、だがまぁ頼んだぞ!」


拳を付き合わせて笑った。

そのタイミングで兎愛(とめ)紗生(さお)が部屋に乱入する。


「父さんばっかりずるい!!私のオリキャラ独り占めして!!」


「兄さんと~~遊ぶ~~」


良い事を思いついたのか親父がポンと手を叩く。


「全員で寝るか!!」


兎愛(とめ)健太(けんた)は喜んでいるが紗生(さお)だけは少し照れている様子。

思春期真っ只中で流石に両親と一緒に寝るのはきついだろう。


だが、親父が俺を誘うのでそれを了承すると紗生(さお)は嬉しそうに決意する。

さてはこいつ俺の事好きだな?と思ったが俺はこいつのオリキャラだと思われてるのだし...好きでも不思議ではない。


それから布団を敷き俺たちは州の字で寝た。

俺が真ん中で左右に健太(けんた)兎愛(とめ)、その外側に両親、そして一番外側に紗生(さお)だ。

母なりの気遣いだろう。


だが、とても落ち着いた空間だった。

一家団欒。ある意味俺が二人いると言うイレギュラーがあるがそれ以外は仲睦まじい家族だ。

家族はいいな...俺にもゼロと言う息子が居るがやはり家族はいいものだと常々思う。


俺は目を閉じるとすぐに眠りに付けた。


俺が目を覚ます頃俺以外も徐々に起きてくる。

紗生(さお)は目を覚まし恥ずかしそうに急いで洗面所に向かった。

朝食をとり紗生(さお)は高校に向かう。

丁度その時は雨も風もそこまで強くはない。

父は今日丁度休みなので兎愛(とめ)を幼稚園に送る。

母は仕事に向かう。

健太(けんた)は休みだ。

2日連続で休み?と思うかもしれないが世間一般は休みではない。

単純に学校に行かなかったのだ。

雨は強いし...。


俺は健太(けんた)と共にテレビを眺める。

すると番組が切り替わり緊急のニュースが流れる。

それは付近の川が洪水していると言うもの。

ヘリから届けられた現場の映像には濁流にのまれる親父と兎愛(とめ)の姿が映し出される。

住宅街故にヘリは近付く事は出来ない。

救援隊のボートもまだ来ない絶対絶命の時、突如家の電話が鳴り響く、それを健太(けんた)が出ると母親の声が聞こえる。


この時の内容は絶対に家から出るなと言うもの。


俺は完全不可視化の魔法を自身い掛け転移を使用し親父と兎愛(とめ)の元へ向かった。


濁流に呑まれる二人を助けようと手を伸ばしても壁のような物に遮られる。

苦悶の表情を浮かべる二人を見る事しかできない無力さに自分が情けなくなる。


―――待っててくれ...かならず救い出すからな...。



完全に飲み込まれた二人。

そして俺は魔法を発動させる。

すきる【時渡】を付与した転移だ。


転移する場所はシーラの指定された場所だ。


転移すると共に視界が切り替わる。

すると目の前に広がる巨大な魔法の集合体。

圧倒的なまでの魔力の波動こんなものほぼ見た事無い。


完全に俺に直撃したわけだが...一体だれが俺に魔法をぶつけたんだ?

そもそも転移直後に放ったのならあまりにも不自然だ。早すぎる...

しかも若干痛みもある。

俺にわずかではあるが痛みを与えられる存在...それは...。


『グ!グレース!?!?!?』


「ご主人様っ~~~~!!!!」


「ハオーが現れたのだーー!!」


「覇王様...」


「兄様!!よっかたやっぱり無事だったんだね」


「あっ....」


息の合ったエミールとマナ。

嬉しそうに涙を流すゼルセラ。

無邪気なデフォル。

無表情なメトラ。

嬉しそうなキーラ。

そして、確信犯シーラ。


多少の痛みはあったがそれはシーラのものだろう。

その他の攻撃は俺にダメージは与えられていないしなんら支障はない。

俺がシーラを見るとすかさず弁明と言うか言い訳をしてくる。


(お兄様の指定した時間が多少時間がずれていただけです)


ほう。俺が悪いと...

まぁいいか...


どうやら俺に放たれた攻撃はこいつらが協力して放った合体技だったらしい。


さてと...俺の背後に広がる大群。


まだこんなに残っていたのか...

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