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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 10 幸せな結末
50/50

10-7

 草の匂いがつんと鼻につく。

 でもそれは嫌な匂いではなく、心を落ち着かせる匂いだった。


 隣に寝そべるのは武。


 週末、商店街を挙げて祝賀会を開くとことで、私と武は彼の実家に来ていた。何か手伝うことがないかと、時間早めにきた私達に弟の学くんは、二人で散歩でもしてきなよと家を送り出した。

 

 しょうがなく、二人でぶらぶらと歩いていたら、武が来いよと私の手を掴んで走り出した。

 そこはよく整備された公園で、綺麗に刈りそろえられた芝が広がっており、到る所に設置してある花壇には色とりどりの花が咲いていた。

 週末ということで、遊び場には小さな子供達の姿が見える。


 そんなにぎやかな公園で武は何を思ったのか、芝生に寝転んだ。

 驚く私に隣で横になるように促し、私は恐る恐る芝生の上に横になる。


「いい匂い」

「そうだろう?」


 隣の武は嬉しそうに、にやっと笑う。


「こうやって草の上に寝っ転がって空を見てると、なんか気持ちがすっとするんだ。まあ、時たま犬のフンとかあるから気をつけないといけないけど」

「嘘?!」


 そんな匂いしないけど。


「冗談だよ。ここの芝生は犬の散歩が禁止されてるから大丈夫」


 慌てて体を起こした私に武が笑う。


 うわあ、優しい顔だ。

 武もこんな顔できるんだ。


「何?」

「いや、そんな表情初めてみた」

「そうか?」

「うん」

「眞有。俺、父さんとかなり仲悪かったんだ。だから家を出た。だけど、この件があって、父さんに感謝されて、今までのこと謝られた。母さんが男と逃げて以来、父さんは母さんに似てる俺を見るのが辛かったらしい。嫌いじゃなくて、どう接していいかわからなかったみたいだ」


 武はそう一気に言葉を吐き出すと、空に目を向ける。その瞳は涙で潤んでるように見えた。


 そんなことがあったんだ。


 それは初めて聞いた話だった。


 だから、あの時、あんなにぎくしゃくしてたんだね。


 でも、やっとお父さんと仲直りできたんだ。

 よかった……


「武。よかったね」 


 ごろんと芝生に横になり、武に寄り添うとその手に触れる。彼はびくっと体を揺らした後、ゆっくりと私の手を握り返した。


 見上げる空には白い雲がぽっかり浮かび、ゆっくりと流れていた。

 私達は二人でじっとその動きをみていたが、しばらくして急に武が体を起こした。


「眞有」


 そして私を呼ぶと、その黒い瞳を向ける。


「眞有、本当にありがとう。俺、やっぱりお前とずっと一緒にいたい。だから、俺と付き合って」

「もちろん」


 体を起こし、武を見つめ返す。


 私はずっと武が好きだった。

 でもその想いに蓋をしてきた。


 気持ちを誤魔化して友達という関係でいいやと思っていた。


 でも付き合ってみて、恋人と言う関係になり、彼がもっと好きになった。


 迷ったこともあったけど、武のことがやっぱり好きだ。


 彼は私の最高の男友達で、最高の恋人だと思う。


「眞有」


 彼の端正な顔が私に向けられる。そしてぎゅっと抱きしめられた。

 私の唇に彼の唇が重なり、その日、私達の関係は完全に友達から恋人になった。


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