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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 10 幸せな結末
48/50

10-5

「加川さんが?!」

「そう。撫山が電話してきた」


 ああ、今日電話してきたのはその件だったんだ。


 見山の木村さんのバーに来ていた。

 電話で話を聞いていたけど、武からいい知らせを直接聞きたくて会うことにした。


 木村さんのバーがやっぱり落ち着くということで場所はそこになった。



「なんか……信じられない。永香がアドリの社長令嬢ってことも知らなかったし」

「でもよかったね。これでもしかしたらうまくいくかもしれない」

「ああ」 


 武はやっといつもの彼らしい笑顔を見せる。


 武が用意したホテル建設に伴う損害報告書を、加川さんがお父さんの力を使って、宮元社長に直々に見せることにしたらしい。

 今夜会うことになっていて、港がそれに関して電話をしてきたみたい。

 私が出ないから、武に電話したんだ。


「撫山も、永香も、いい奴だな。これも眞有のおかげだ。ありがとう!」

「え?私、何にもしてないけど」

「だって、お前が彼らに好かれてるおかげで、俺の実家を助けてもらう。多分、お前がいないと動いてくれなかっただろう」


 そう言われるとそうかな。

 だって加川さんも港も武が嫌いだと言ってるし。


「それで、俺考えたんだ。お前のこと一旦諦める。家のことでお前に負い目があって、俺と付き合ってる気がして嫌なんだ。この件、けりがついたら、正式に付き合うか決めて」

「武!」

 

 そんなことないのに。


「撫山はかなり頭にくるけど、いい奴だしな」


 武はいつものように透明な液体と氷の入ったグラスを煽る。


 なんで、でも、そのほうがいいのかな。

 私も武が好きだけど、確かに負い目が感じている。


「じゃ、俺達はしばらく友達な。でも友達以上の友達だけど」


 武は戸惑う私にいたずらな笑みを浮かべる。


「いらっしゃ……」


 ふい私達の目の前で、カウンター越しにカクテルを作っていた木村さんの言葉が止まる。その表情が凍りついた感じで、私と武はなんだろうと彼の視線の先、店の入り口を見つめた。


「霧元さん!」

「部長!」

 

 え?!

 霧元さんって……

 武は部長のこと知ってるんだ!


「霧元さんはお前の部長なのか」


 武は彼が私の部長だったと知らなかったらしく、唖然とそうつぶやく。


「……安田。会社を休んでるくせに、会社近くで飲んでるとはいい度胸だな」


 入り口からこちらに歩いてきながら、部長はそう口にする。


 あちゃー。

 また男と……って言われそうだ。


「霧元さん。たまには眞有だって息抜きが必要だと思うんですけど」


 武はなんだか意味深な笑みを浮かべて、部長にそう返す。すると部長ははっと気がついたような表情を浮かべた。


「……そうだな。たまには。だが、安田。明日は絶対に出社しろ。加川が困っていたぞ」


 そうだよね。

 突然休みとったから、きっと加川くん、あたふたして仕事してたんだろうな。


「はい、わかってます」

「それならいい」 


 部長は頷くと、私達から離れた奥のカウンター席に座る。


「武。部長とよく会うの?」

「うん、まああ。霧元さんはここの常連みたいだから」

「ふうん」


 私はあまり深く考えず、首を振る。ちらっと部長を見ると木村さんにお酒を注文してるのが見えた。


「じゃ、そろそろ帰るか。今日は来てくれてありがとう。本当は家に連れて帰りたいけど、この件が片付くまでは我慢する」


 色っぽい眼差しを向けられ、ふと昨日の夜の彼の口付けを思い出す。


「楽しみにしてるから」


 そんな私に止めを刺すように武が耳元でそう囁き、私の頬は一気に真っ赤に染まった。


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