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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 9 The End of the Party
43/50

9-6

十五禁ギリギリの表現があります。


「港?!」


 エレベーターで一階に降り、バーに向かってを歩いているとぐいっと引き寄せられた。

 それは港でぎょっとして彼の美しい顔を見上げる。


「眞有。やっぱり、私は耐えられない。本当は池垣さんとなんてうまくいってほしくない。友人なんてなれません」


 彼は眉を苦しげに寄せ、かすれた声を出す。


「最低だとはわかってます。本当は、こんな結果望んでなかった」

「港?!」


 彼は私をぎゅっと強く抱きしめ、私の肩に顔を伏せる。

 その様子が弱弱しくみえ、私は拒絶することもできず、体を硬直させる。


 早く離れないと。こんなのだめだ。


 そう思いながら、身動きができなかった。


「眞有?撫山?」


 そう声が聞こえ、私は顔をそちらに向ける。

 すると一メールほど先に武がいて、こちらを凝視していた。


「武!」


 彼は私達の様子をみて、顔を引きつらせた後、皮肉な笑みを浮かべた。


「そういうことか。馬鹿は俺か」


 武はそうつぶやくと、くるりと背を向けた。


「武!待って」


 私は港の腕の中から抜け出ると、武を追う。


「武!」


 必死に追いかけてそう声をかけるが、彼はホテルを出て、タクシーを拾おうとしていた。


「武!」


 武の前に飛び出し、それを止めようする。


「馬鹿!」


 タクシーが私を轢きそうなり、武がとっさに私の腕を引き、その胸に抱く。


「何やってるんだ!」


 車を慌てて止め、タクシーの運転手が窓から顔を出し、怒鳴りつける。


「すみません」


 武は私を抱きしめながら頭を下げる。

 彼の鼓動が早鐘を打っているのがわかった。


 ごめん、武。

 馬鹿なことをした。

 わかってる。

 でもこのまま、武と別れたくなかった。


 結局私達はそのタクシーを別の客に譲り、タクシーを待つ列から離れた。


「眞有。お前、本当は撫山が好きなんだろう?」


 ホテルの入り口の端っこで、武はその腕から私を解放し、そう問う。

 その瞳は真っ暗で、いつもの輝きは消えていた。


「……違う」


 とっさにそう答え、彼を見つめる。


「じゃ、なんで奴の腕の中でじっとしていた?」

「それは……」


 彼に見つめ返され、うつむく。


 それは私にもわからない感情だった。

 答えに困ってる私に武はため息をつく。


「それは奴が好きだからだ」

「違う!私は好きなのは武だもん」

「……じゃ、俺の部屋に来て。今夜は俺と一緒に寝て」


 そう言った武の瞳は真摯で、射るように私を見ていた。


「うん」


 私はゆっくりと頷く。


 武が好きだ。

 その気持ちに嘘はない。

 

 だから決めた。




  私達は何も話さなかった。


 タクシーから降りて、無言で武の部屋に入る。


 彼が寝室に来るように私を誘う。

 ベッドに座った私に彼は優しくキスをした。

 何度も繰り返されるキスは、私の思考を失わせる。


 熱を帯びた彼の瞳が私を見つめる。


「眞有。俺は奴にお前を渡すつもりはない。お前が奴を好きでもだ。好きだ。ずっと俺の側にいて。俺だけの眞有でいて」


 彼は顔を上げ、私をじっと見つめてそう口にする。

 その表情は懇願するようなもので、その声がなぜか掠れていた。

 私は何かに突き動かされるように彼の頬を両手で包む。

 

 武が泣いているように見えた。

 初めて見る、彼の様子に私の胸が締め付けられる。


「武。私はいつも側にいるから。安心して」


 そう言うと彼の頭を胸に抱きかかえた。


 彼のことが心配だった。

 なんだかほっとけなかった。


「眞有……。側にいて。俺の側に」

 

私はその夜、初めて武とひとつになった。

 


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