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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 9 The End of the Party
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9-1

 『眞有まゆ。おはよう。今日はパーティーだな。がんばれよ』

 

 会社に来て、メールをチェックしてると携帯電話が鳴る。それはメールを受信した音で、開くと武からだった。


 送信先は彼の会社になっており、会社のメールを私用で使わない彼にしては珍しいことだった。

 それだけ玲美さんのチェックが厳しいってことだよね。 

 昨日も公衆電話だったし。


 しょうがないよね。


 でもとりあえず、こうやって連絡をとってくれることが嬉しい。


「安田さーん!なにかいいことあったんですか?」


 私の緩んだ表情を見たのか、加川くんが興味津津と真向かいの席から身を乗り出す。


「なんでもないわ。それより、今日十一時には会社出るから、留守番お願いね」

「はい~」


 面白い話でも聞けるかと思った加川くんはしょぼんとした様子で席に座りなおす。

 それを見た芋野さんが加川くんの肩をぽんと叩いて、私のほうを見た。


「安田。俺は五時に会場に行けば大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます」


 そう、今日は本人からの申し出もあり、受付を芋野さんに手伝ってもらうことになっていた。

 MCをする加川姉が心配なのか、今日の芋野さんはすっかりスーパーマンだった。

 いつもの黒縁眼鏡をはずし、男前に変身している。


 いつもこうだったら、いいのに。

 

 ああ、でも加川さんに止められてるんだっけ?


 そんなことを思いながら、席に戻るスーパーマンの背中を見送る。



 

「じゃ、今日はよろしくお願いします」


 十二時にパーティー会場に着いて、待っていると舞台設置スタッフがやってきて、作業が始まった。

 機材を運び入れ、舞台が組み立てられていく。

 

 腕を組んで、その様子を見ていたが、問題はなく、次々に作業は進んでいた。


 よかった。

 これなら時間通りに設置が終わりそうだ。


 

「こんにちは」


 安堵しながら作業と見つめていると、一時間後、港が現れた。


「進んでますね」


 私の隣に港は立つと、嬉しそうに出来上がっていく舞台を見ていた。


「眞有、本当にありがとうございます。いいパーティーになりそうです」


 彼は本当に嬉しそうに微笑む。


「そ、そんな、ありがとうなんて。仕事なので当然です」


 その笑顔になぜか罪悪感を感じ、ぎこちなく答えた。


「仕事ですか。そうですよね」


 港の青い瞳が光を失い、深い海の底のように見えた。


 がっかりしてる? 

 でも、嘘は言ってないし。


 どうしようかと困惑してると、港の瞳が再び光を帯びる。


「眞有。今はまだ友達になったばっかりなので、期待はしないようにしますから」

「期待?!」

 

 いったい、何の期待?!

 

 顔を歪めて彼を見る。


「そのうち、友達を超え、その上の関係を目指しますから」


 彼の笑顔は麗しく、クラクラしきた。

でも、その上って?


「池垣さんには負けるつもりはないですから」


 戸惑う私に彼はそう言葉を続ける。


「安田さん」


 何か言おうと口を開く前に、高い声が私を呼ぶ。

 それは華やかな美女の加川永香だった。


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