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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 6  Sweet dreams
28/50

6-4

「撫山さんとどうでした?」


 会社にへとへとな思いで帰ると、兎がぴょこりと出てきた。


 姉め。

 また余計なことを。


 私は加川さんの笑みを思い出す。

 となると、芋野さんも知ってる?


「安田。二股はよくないと思うぞ」

「……そんなんじゃないです!私が付き合ってるのは武です!」


 思わず大きな声でそう答えてしまい、部長と角木かどきさんがこっちを見る。


「すみません」


 二人にぺこりを頭を下げた後、芋野さんを見上げた。


「今日は、仕事です。景品のワイングラスができたので」

「ふう~ん。そうなんですかあ? 疑わしいな。何かされたんじゃないんですか?」

「そ、そんなことないわよ!」


 加川くんの言葉に再び声を荒げてしまい、部長の痛い視線が私を刺す。


「本当ですか? 実をいうと僕は撫山さんをひそかに応援してるんです」

「?!」

「だって、池垣さんは、うちの姉…」

「加川くん!」


 この馬鹿ウサギ!

 慌てて、加川くんの口を両手でふさぐ。


「姉? 永香さん?」


 芋野さんにその単語が聞こえてしまったみたいで、彼の顔色が曇る。


 しかし、私が誤魔化す時間は与えられなかった。


「安田!こっちこい」


 部屋で騒ぐ私に痺れを切らし、部長に名が呼ばれる。

 ここで加川くんを放したら終わりだと思いながらも、部長に再度呼ばれ、泣く泣く、その可愛い口から手を放した。


「安田。お前、最近……」


 部長の机の前に呼び出され、説教が始まる。その近くの席では角木かどきさんがうんうんと聞いている。

 反省している顔を作りながら、全神経は加川くんと芋野さんに向けていた。


 どうか、加川くんが余計なことを話していませんように……


「安田。聞いているのか?」

「は、はい。聞いています!」


 慌てて顔を上げると部長の目がきらりと光る。


「今日は残業だな。お前が今までサボっていた報告書、書き上げろ」

「えええ??私今、企画もってるんですよ。無理です!」

「無理じゃないだろう?男と遊ぶ暇があれば、仕事をしろ」

「………」


 くうう。

 反論したい。

 しかし、残業できない理由が武と会いたいためなので、何も言えなかった。



「ごめん。今日は残業。八時にいけそうもない」

「そうか。でも、今日はうちに泊まるつもりだろ?家で待ってるから、何時もいいから来いよ」

「……うん」


 武にそう言われ、私は頷く。


 甘い。

 待ってるなんて、嬉しすぎる~。


 飛び上がりたい気持ちになったが、撫山さんとのキスを思い出し、唇に手を触れる。


 言わなくてもいいよね。

 だって、あれは無理やりだもん。


 首を横にぶるんぶるんと振ると、椅子に座りなおし、報告書のファイルを開く。

 時間は午後六時で、部長と角木さんはミーティングで外出、芋野さんと加川くんはいつの間にか姿を消していた。


 そういえば、加川くん。

 言っちゃったのかな。

 あのこと。


 武の女ぐせが悪いことを知ってるから、永香さんとそういう関係であったことはとりあえず受け止めれるけど、芋野さんは……どうなんだろう。


 加川さんも今度はまじめに付き合ってるみたいだし。

 芋野さんが吹っ切れてくれたらいいんだけどなあ。


 優しい先輩の性格を考えると。

うーん。

 でもどうにか乗り越えてほしいなあ。


 私は他人事なのにそう願った。


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