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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 5  新しい関係
24/50

5-4

「安田さーん」


 出社すると、きらきらと輝く笑顔で出迎えられた。

 それはかわいい後輩の加川くんで、その隣の芋野さんもなぜか笑顔だった。


 勘違いされてる。

 絶対に。


「昨日。どうでした?」


 加川くんはわくわくした様子でそう尋ねてくる。


「おかげでゆっくり休めたわ。ありがとう」

「そうじゃないです。あの、撫山なでやまさん……」

「あ、家にお見舞いにきてくれたけど。誰かさんが親切に住所を教えてくれたみたいだから」


 私の嫌味に加川くんが言葉を失う。


「安田。加川をいじめるな。彼も一応はちゃんと断ったが、撫山なでやまさんが熱心に聞くから」


 加川姉と付き合い、ますます加川弟を庇護するようになった芋野さんがそうフォローを入れる。


「そ、そうなんですよ!」


 ウサギのような子はそれにうんうんと頷いて見せる。


「わかってるわ。気にしてないから。ただ、この件に関してはプライベートなことだから言いたくないからよろしく」

「えー。秘密なんですか? 秘密なんてつまんないです」

「つまんないじゃないの。加川くん、昨日何があったか、話してくれる? 谷山建設の件はどうなったの?」


 顔をゆがめた後輩に質問する。


「はあ。ちょっと待ってください」


 ちょっと変だが有能な後輩は溜息をつくと、自分の机に戻り、書類を持ってくる。

 そして昨日休んだ分の引き継ぎが始まった。



たける?」


 昼食を取ろうとロビーに降りると、そこにいたのは武だった。受付嬢の野田さんと話していた彼は、私の声に反応して顔を上げる。


「よかった。出てきてくれて。じゃ、野田さんまたね」


 名残惜しそうな彼女にそう言い、武は私に近付く。


「ご飯一緒に食べよう」


 どういう風の吹きまわし?

 私は首をひねりながらも、武とともにビルを出た。


「今日は先に注文しような。えっと、ここは何がうまいの?」

 武は店員を捕まえるとにこりを笑ってそう聞く。その笑顔で店員の顔がすこし赤らむ。


 こいつって本当、女たらしだよね。

 女のことしか考えてないのかな。


「ランチセットかあ。じゃ、ランチセットでいいや。眞有まゆ、お前はどうする?」

「あ、じゃ、私もランチセットで」


 店員は私たちの注文を紙に書き、再確認するとキッチンに戻って行った。


「武。今日は何の用?」

「聞きたいことがあって」

「何?」

「お前、撫山なでやまさんと寝たの?」

「!?」


 こいつ昼間からなんてこと聞くのよ!


「そ、そんなわけないでしょ。仕事とプライベートは一緒しないの。私は」

「そう、それはよかった。じゃ、付き合ってるの?」

「付き合ってるって……まだだけど」

「まだってことは、まだ付き合ってないよな。だったら俺と付き合えよな」

「武……。昨日から言ってるけど、目的はなに?」

「目的って。好きだからに決まってるだろう」


 スキッテ

 

 簡単に言われる言葉に私は戸惑う。


「本気なの?」

「本気だよ。神に誓って本気」

 

 それが嘘くさい。

 そう思いながら私の心の中の恋する女の子は目を覚ます。


 信じてみようか

 

 そんな望みを持ち始める。


眞有まゆ。俺はお前が好きだ。奴にお前を渡すつもりはないから」


 奴……撫山さんのことだよね。

 二人の美男に、一人の美しくない女。

 笑えるシチュエーション。でも私は今その中のヒロインらしい。


 信じてみようか。 


 勇気を出してみようか。


眞有まゆ。俺はお前以外の女と寝るつもりもないし、付き合うつもりもない。だから今日から俺の純粋な彼女になってくれ」


 純粋な彼女……

 そういえば私、以前純粋な女友達って言ってたんだっけ。


「……浮気とかしたら許さないから」


 覚悟を決め、武と見つめるとそう口にする。


「わかってるよ。俺も純粋な彼女が男と会うのは嫌だからよろしくな」

「わかってるわ」

「じゃ、乾杯しようぜ」

「乾杯?」

「そう、乾杯。俺たちの新しい関係に」


 私逹は水に入ったコップを持つとカチンと重ねる。


 そうして私逹は新しい関係を始めることにした。


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