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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 5  新しい関係
21/50

5-1

眞有まゆさん、それじゃ、また明日」

 

 結局私達はそれから店を出た。

 どこか行きましょうかという撫山さんの提案に首を横に振り、帰ることを選んだ。


 このまま、彼と一緒にいたら流される様な気がした。

 彼の優しさに甘えてしまいそうだった。


 撫山さんの指は私の悲しい涙を拭ってくれ、彼の空のような瞳は私を気遣ってくれた。  


 でも気になるのは奥で楽しげに飲み続ける武の様子だった。


 なんて私。

 こんな超美形が目の前にいて、こんなに優しくしてくれるのに……

 あんな奴の方が気になるなんて。

 

 何か言いたげな撫山なでやまさんに手を振り、改札を抜ける。

 電車に乗り、輝くネオンを見つめた。


 青い光は撫山さんの瞳を思い出す。

 優しい光を放つ彼の瞳、太陽のように輝く美しい彼の髪……

 

 それでいて月のように穏やかな彼……


 頼ってしまえばいい。

 彼の腕に身を任せれば、もう傷つくこともない。


 でも彼の手を取れなかった。

 武への想いを捨てることができなかった。


 溜息をつくと、電車を下りる。

 鞄の中でうなり声をあげる携帯に気がつき、足を止めると鞄の中を探る。


たける?」


 それは武からだった。


 もしかして気にしてる?


 どきどきしながら、電話に出る。


「もしもし」

「……眞有まゆ。今、邪魔か?」

「邪魔じゃないけど」


 平静を装ってそう答える。


「まだ彼と一緒にいるのか?」

「……だったら?」


 賭けのようにそう口にする。

 彼の反応が見たかった。

 

 私のことを少しでも好きであれば、何か言ってくれると思った。


 これが最後の賭けだった。


「そうか。邪魔したな」


 しかし武はそれだけ言うと電話を切った。


 ツーツーと通話音だけが電話口から聞こえる。



「ふっ、うっ、くっ…」


 とたん、笑いと共に涙があふれてきた。その場に立ち竦み、携帯電話を持った手を下ろす。


 馬鹿な私。

 期待しちゃってさ……


 本当馬鹿だ……


 私は泣いてるのか、笑ってるのか、わからない声をあげて泣き出す。

 声を上げないと気持ちに押しつぶされそうだった。

 

 胸が痛かった。

 馬鹿な自分がおかしくて、惨めで可哀想だった。



 翌日、休みをとった。 

 撫山なでやまさんのパーティが一週間後に控えている今、そんな余裕はないのだが、無理やりとった。こんな状態で誰とも会いたくなかったし、会社に行っても仕事ができるとは思えなかった。


 母は私のひどい顔にゆっくり休みなさいと、何も聞かなかった。


 洗面所に行き、顔を見ると、目の周りに隈ができ、唇がかさかさ、髪がぼさぼさでひどいものだった。とりあえず、気持ちをしゃんとさせようとシャワーを浴びる。


 シャワーから浴びて、気持ちが少し落ち着いたところでドアベルが鳴った。



「母さん~。出てよ!」


 そう叫ぶが反応はなく、溜息をつくと玄関に歩いていく。


「はい~。どちら様ですか。?!」


 がちゃっとドアを開けるとそこにいたのは美しい男、撫山なでやまさんだった。


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