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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 1  可愛い後輩
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1-2

「安田さん、間に合ってよかった」


 会社に辿りついたのは会議三十分前、一時間の遅刻だった。


「書類できてる?」

「はい」


 栗色の柔らかなそうな髪をした加川かがわ友亜貴ともあきがにっこり笑って返事をする。


 うわあ。やっぱりこの子。かわいい。


 私は思わず見惚れそうになりながらも、加川くんに渡された書類を受け取った。それは今日の会議で使うプレゼンテーションの書類だった。私は席につくと受け取ったものをぱらぱらとめくる。

 よくできたものだった。


 やっぱり頭いいんだ。この子。才色兼備って奴だわ。ああ、でも男の子につかわないか。


「どうですか?」


 可愛い後輩は座っている私の側に立ち、心配そうな顔をしていた。


「うん。ばっちり。さすが加川くん。これメモリスティックに移して。今回は配布する必要はないから」

「はい!」


 彼は私の言葉に可愛い笑顔を浮かべるとぺこりと頭を下げて、向かいの自分の席に戻っていった。


 私の会社はいわゆるイベント会社で、パーティから会議まで色々なことをアレンジする。今回の問い合わせは、フランスではまだマイナーなワイン製造会社からで、プロモーションを兼ねるパーティについてだった。


 今日はその全体の企画を私達の企画実行部が作成し、上司達に説明する。これで承認を得れば、企画は会社に提出される。


 うちの会社に入社して六年たったけど、後輩は半年前に入社した加川くんだけだった。後は先輩達で、この企画は私が主導で動いていた。

 プレゼン作成は一人でやるつもりだったが、なんだか加川くんと一緒にいられるかもとよこしまなことを考え、彼にプレゼン原稿を作ったもらった。

 彼に内容はしっかり伝えていたが、予想外にわかりやすく作られていて、彼の有能さに舌を巻いた。私よりうまいかもしれない。


 私と違って彼は新卒で入社したわけではなく、中途入社だった。前の会社でもそこそこいい評価だったらしく、なぜ転職したのか、上司が不思議そうにしていたのを覚えていた。

 まあ、でも優秀な人材がいることはいいことだからね。


「さあ、行こうか」


 私は会議五分前であることを確認し、書類をまとめると向かいに座る加川くんに声をかけた。





「加川くん。今日の夜、空いてる?」

「え?なんですか?」

 可愛いい後輩は、目を大きく見開き驚いた顔を見せる。


 えっと、誘いにくいな。

 でも口に出したからには最後まで言わなきゃ。


「あ、ほら。今日君のおかげでプレゼン成功したでしょ?そのお礼に夕食一緒にどうかなと思って」

「……いいですけど」

 加川くんは戸惑いの表情を浮かべていたがとりあえず頷いた。




「お酒はちょっと」

「そう?」

「じゃあ。私も今日は遠慮しとこうかな」

「え?!それじゃ、僕飲みます」

「そう?」


 私達は会社近くの居酒屋に来ていた。

 

 人目が気になったが、まあ、襲うわけでもないしと私は気にせずビールを頼んだ。

 ビールが運ばれてきて、私達は乾杯する。


 30分ほどして私は加川くんがなぜお酒を拒否したのかわかった。


眞有まゆ~」

 可愛い後輩だった加川くんは酒に呑まれるタイプだった。


 名前で呼ばれることを嬉しく思いながら、このシチュエーションは限りなく危ないことがわかっていた。

 酒に呑まれる人は翌日記憶がないことが多い、そんな状況でいくらよい仲になったとしても、翌日むなしい思いになるだけだ。


 だから私はどうやって加川くんは家まで送り届けるか考えていた。

眞有まゆって僕のこと好き?当然だよね。僕、こんなに可愛いもん」

 酔っ払いは照れることなく、そういってはははと笑う。


 酔うと本音が出るっていうけど、こんなナルな奴だったなんて。

 私は少し引きながら彼に愛想笑いを浮かべる。

 

眞有まゆ~」

 ナルシストな酔っ払いは私の名前を呼んだと思うと、ふいに力を失い、こてんと机に顔を伏せた。

「加川くん?加川くん?!」

 体を揺すってみたが、反応はなかった。

 

 どうしよう?

 こんなにお酒に弱い子だったなんて……


 家どこか知らないわよ。


 うちに連れて帰る?

 

 だめ、だめ。

 親が変な誤解するから。



「あれ。眞有まゆ?」

 私が頭を悩ましているとふいにたけるの声がした。それは神の救いに思えた。

たける!助けて」


 私は彼の腕を掴むと、ある願いごとをした。



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