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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 4  美しき友情
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4-4

 それから一週間ほど、撫山なでやまさんと会うことはなかった。

 というのは本社のほうで準備することがあるらしく、フランスに行きますと連絡があった。


 やっぱりね。

 あのキスはそういう意味はないんだ。

 彼の連絡メールを読んで私は確信した。


 そうして落胆と安堵の微妙な気持ちを持ちながら、パーティーの準備を進めた。撫山さんにはメールで毎日連絡を取り合い、準備は順調に進んだ。

 芋野さんは、男前から元の眼鏡の優男に逆戻りし、どうしたんですかと聞くと照れながら、加川姉に元のほうが好きだと言われたと教えてくれた。


 なーんか幸せそうだ。

 

 私は自分ひとりが取り残されたような気持ちになる。

 しかし撫山なでやまさんの仕事以外にも、色々な企画が舞い込み、忙しい日々を送った。たけるともカレーライスを食べて以来一週間ほど会わない日々が続いた。


 最近、会いすぎてたもんね。

 前は数ヶ月に一度の単位だったのに。


 たけるのおかげでまた変な噂がたったが、惨めな気持ちなるよりはましと噂のことは気にしないように努めた。そうすると噂も自然に消えるらしく、今では好奇の視線を向ける人もいなくなった。


 一週間か…


 携帯電話を見つめながら、武のことを思う。

 今日は珍しく時間通りに帰れそうだった。

 久々に連絡しようかな。


 椅子に座り携帯電話をもてあそんでいると、そわそわしている芋野さんの様子が見えた。 今日もデートらしく午後4時を過ぎたあたりから、彼の動向がおかしかった。


 今日もデートかあ。

 うまくいってるんだ。


 確かに加川さん、本気ぽかったもんね。


 ぽっと顔を赤くした加川姉の可愛い顔を思い出し、うんうんと頷く。

 真向かいに座る加川弟がそんな様子の私に怪訝な視線を向ける。


 そう言えば、この子が好きかもって思ってたこともあったんだっけ?

 私がじっと見つめると、加川くんはびくっとおびえた様子を見せた。


「な、なんですか?」

「彼女とうまくいってるの?」

「え、あ、はい」


 彼は少し顔を赤くしながら頷く。その様子は姉そっくりだ。


 ちょっとおかしな姉弟だけど根はいい人だよね。


 はあ。

 私も素直になろうかな。

 友情ごっこも楽しいけど、やっぱり彼氏といわれる存在がほしい。

 

 たけると会うのは楽しい、でもそれは私が彼を好きだからだ。

 今は彼女がいないけど、そのうちまたできるだろうし。

 

 その時辛いだろうな。


 セフレになるのはごめんだ。


 吹っ切ろうかな。


 そう思って、携帯電話の連絡先を見つめる。そして武に電話しようとしたとき、電話が鳴った。


撫山なでやまさん?」


 番号は国内のものだ。

 そうか、今日帰るってメールで連絡もらってたんだ。


「もしもし?」

「安田さん?今日夜、空いてますか?」


 久々に聞いた彼の落ち着いた声が脳裏に響く。


「空いてますよね?空けてください」


 彼にしては珍しく強引にそう言い、撫山なでやまさんと夕食を一緒にすることになった。


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