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友情という名の関係  作者: ありま氷炎
Chapter 3  罪な美形たち
14/50

3-4

「寝不足か?」


 翌朝、どうにか出社した。しかしぼーとしているのがばれて、そう芋野さんに声をかけられる。


「そうなんですよ~」


 はははと苦笑いしながら顔を上げた。


「?!」


 そして、そこにいた人を見て、目を点にする。


「え?芋野さん?」


 側に立っているのはいつのも黒縁メガネの優男ではなかった。二重まぶたのきりっとした男前が私を見つめていた。


 え?

 誰ですか?

 めっちゃかっこいいんですけど?


「おかしい?」


 そうたずねる声は芋野さんと同じだった。


「い、芋野さんですよね?」

「ああ」


 男前はにこりと穏やかな笑顔を見せる。

 

 え?

 こんなのありなんですか?

 まさにメガネを取ったらスーパーマンでしたって感じなんですけど。


「ど、どうしたんですか?」


 入社してから六年間、ずっと彼の元で仕事をしていたが、こんなかっこいい人だなんて知らなかった。あのメガネ、すごく度が入っていたんだ。

 目がすごく綺麗……

 輪郭も全然印象が違う。


「いやあ。ちょっと永香えいかさんとお昼を一緒に食べることになって」


 芋野さんは少し照れながらそういう。


「あ! 今日デートする相手って芋野さんだったんですか?」


 その言葉に私の真向かいで仕事していた加川くんがびっくりしてパソコンの上から身を乗り出してくる。


「で、デートって! そんなんじゃない」


 可愛い後輩の言葉に芋野さんはぎょっとして否定をする。


「芋野さんが相手なら僕、大歓迎です。楽しんできてくださいね~」


 しかし加川くんは話をまったく聞いていないようでるんるんと話を続ける。


「いや、違うから」


 大きく手を振って否定するが、芋野さんは嬉しそうだった。


 デートって。

 そんな展開ありなんですか?

 昨日会って、電話しただけですよね??


 芋野さんが誘ったのか。

 いや加川姉に違いない。


 でもこれなら、遊ばれることはないかもしれない。

 加川さんに並んでも見劣りしない。


 クラーク・ケントだったのか、芋野さん。


 私は先輩と後輩がはははと笑い合う中、寝不足の頭でそんなことを思っていた。




 私もスーパーマンだったらいいのに。

 

 幸せそうな芋野さんの後ろ姿を見送り、私はコンビニで買ってきた弁当を広げる。

 

 すごくかっこよかった芋野さん。

 あんなに変わるとは思わなかった。


 私はどうみても地味な外見で普通のタイプ。

 武と歩いていても彼女には見えないんだろうなあ。


 割り箸で白いご飯を突っつきながら、そう思う。


 昨日はやっぱり自分の馬鹿な気持ちに気づいてしまってよく眠れなかった。

 

 寝てしまえばいい。

 ひと時でも女として見てもらえるかもしれない。


 そんな考えに悩まされる。

 

 しかし寝たら最後だってことはわかっている。

 ベッドを共にするだけの関係、そんな関係は嫌だった。


 下手したら、セックスが下手だと暴言も吐かれそうだしね。

 気分は最悪だった、

 溜息をついて一緒に買ってきたお茶を飲む。


 食欲は完全になくなっていた。


 弁当に蓋をかぶせると、袋に入れる。そしてそれを捨てるために休憩室に向かった。


 

撫山なでやまさん?」


 休憩室で分別箱にごみを分けて捨てて、事務所に戻ろうとすると携帯電話が鳴った。出ると撫山なでやまさんだった。


「はい、今会社にいますよ。ちょっと席をはずしてるんですが。ああ、わかりました。あと三十分後ですね」


 そう答えると電話を切る。


 今日の用はなんだろう?


 思い当たる節がなかった。

 だいたい、言ってくれれば事務所まで出向いたのに。


 首をひねりながらも、来るべき美形を迎えるための準備を始める。


 あれだけの美形、来ることは伝えないと女性陣から怒られる可能性もある。 

 あとお化粧くらい直しておくかな。


 そう決めるとまず副社長の部屋に向かった。


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