第一章3『銀髪の少年と』
「それにしても団長は身長低いよね〜」
めのまえに居る銀髪の少年に言われる
今はルノエールと買ってきた食材から出来た夕飯を食べていた。
黒猫団の女子が作る手料理が思っていたものより上手く驚いていたところだった。
「そんなこと言うけど、お前も十分チビだろ。それに俺は165ある。16歳なら普通の身長だ」
少しムキになって言ってしまう。
しかも相手も自分とさほど離れていない。
離れていてもほんの数センチだろう。
「何言ってんの団長〜?団長は162で、僕が165〜。しかも団長は2037歳。」
「俺、そんな年寄りじゃない。あと、165ある。」
目の前に居る少年のいうことはもしかしたら間違っていないかもしれない。
もしも、本当に自分がずっとここにいた人間なら、の話だが。
「あ、そっか、団長記憶ないんだっけ?じゃあ鏡見てくれば〜?」
ヘラヘラ笑いながら言ってくる相手にイラつきながらも、食べ終わったお皿を洗って洗面台の方にいく。
鏡の前で自分の姿を見て少し驚く。
髪はルノエールと同じような金髪で目は青。
この世界に来る前の自分とは顔は同じなのにまるで別人のような雰囲気だった。
『ほんとにこれが自分なのか?』と、疑いたくなるほど。
銀髪のアイツが言っていた通り前の自分より背も少し小さかった。
身長が小さいのは昔から悩みであったのにひと回り小さくなると中学生くらいにしか見えない。
そんなことを思うと、ついついため息がこぼれる。
「あれ〜?団長ついさっきまであんなに否定してたのに、ちびなの認めちゃった〜?」
後ろからニヤつきながら言ってくる。
だまっていればイケメンのくせに、などと思ってしまう。
身長は低いが、銀髪に紫の目。
整った顔。全体的に美形と言えるだろう。
「認めてない。この鏡が壊れてるだけ。」
そんなやつの顔を見てるとイライラしてくるので、認めていない訳じゃないが言い訳した。
「鏡が壊れてるってすごい事言うね〜。」
笑いながら言ってくるのにどこですごいと思っているのだ?
何か言い返してやろうかと思っていると、「うるさいから外でやれ」と
まだ食事中の一部から追い出されてしまった。
「お前のせいで追い出された。」
そうボヤくと隣にいるそいつは「僕のせいじゃないでしょ〜」などと言ってくる。
夜の七時くらいなので外は少しばかり冷えていた。
まさに、部屋着と言わんばかりの格好をしていたため少し肌寒い。
縮こまって歩いていると、隣から「寒いの?」と声が聞こえた。
だが、話したくないので無視した。
少し歩けば、コンビニのようなものがあるだろう、そう期待して歩いていた。
しかし、思うようにも行かず。
現在の日本とは違いコンビニのようなもの優れたものがあるわけないのだから。
「団長はどこに行きたかったの?それに団長寒いんでしょ?だからちょっと此処で待ってて」
そう言って、そいつは小走りで近くの小さな店に入っていった。
意外といいやつなんだな、と思いもしたが自分の気に入らないという気持ちから勝手に動いてしまった。
最初いた場所から少し離れた細い道を歩いていると、目の前に数人の影が見えた。
「あ?お前なんだ?そこ邪魔だからどけよ」
数人のうちの一人が自分にそう言ってきた。
『なぜ自分が退かなければいけない?』その考えが頭の中に浮かんだ。
その考えのままそこに立っていると、相手がナイフを出して突進してきた。
(そうか、ここは日本じゃない違う世界なのか。)
何故か今そう改めて実感していた。
もしかしたら本当にここで死ぬかもしれない。
それなのに、怖くなかった。
逃げようとも反抗しようとも思わなかった。
ただひたすらその場でたっていただけ。
左胸にナイフが刺さった、そう思った時だった。
目の前の相手のナイフを持った右腕を痛そうに左腕で抑えていた。
その腕からは確かに血が流れていて、地面には短剣が落ちていた。
「だんちょ……待っててって言ったよね……?」
後ろから少しキレ気味の息切れした声が聞こえた。
さっきまで自分をいじめてたそいつの声は少しも笑っていなかった。
(やっぱりこういうやつが1番モテるんだろうな)
そんなことをこんな時に思えてしまう自分がとてつもなくあほらしく感じた。