第一章2『記憶』
「団長?どうしたんですか?」
そう言いながら隣で顔を覗き込んでする金髪の少女
彼女の名前はアンリ・ルノエール
その名前も自分はさっき知ったばかりだった。
自分がなぜ見知らぬ場所にいるのか理解する前に、彼女といっしょに買出しに行ってくれないかと言われてしまった。
どうやら団長と呼ばれている自分も含め、あの家でシェアハウスのような事をやっているらしい。
「あのさ、ルノエール。黒猫団?とかいう組織はなんであるんだ?」
さっきから自分は彼女に質問をしていた。
自分がなぜ団長と呼ばれてるのかなどのことを。
彼女は適切に答えてくれた。
そのおかげでいま、やっと自分の立場がわかってきた。
自分は黒猫団という国の聖騎士団の団長でありグレンという名前らしい。
そして間横にいる彼女、アンリ・ルノエール副団長
自分が言うのもなんだが、正直こんな人を殺めることをためらいそうな少女が副団長なんて、とも思ってしまう。
「黒猫団はですね、団長が作ったんでするよ。今の団長は覚えてないようですけど、団長は...グレン団長はとても強い人でした。」
そんなふうに自分の問に答えるルノエール。
「今のメンバーはみんな団長に救われたんですよ。もちろん命も救われましたし、心も。みんな色々と過去にあって。」
嬉しそうに昔の自分を話してくる。
だが、その自分はきっと自分じゃない。
似ても似つかない。
それに、今まで自分は日本という国で暮らしていたのだから。
だからきっとこれは夢だ。
それとも今までの暮らしが夢だというのか?
……
……
…………静かになった血で染まりきった街。
周りに転がる死体の山。
小さく吹いた風に紅く塗られた金髪がなびく。
「ごめんな。助けてやれなくて」
彼は小さく赤髪の少女に向かって呟いた。
少女は声にならない声で三文字呟いた。
……
……
(今の記憶は何だ?)
急に頭の中に映像が浮かんできた。
今のは自分の記憶なのだろうか。
赤髪の少女は誰だ?
見たことがある気がするが……
すると、
「どうしたんですか?団長。またくらい顔して」
と、隣でまた心配してくる彼女。
そんな彼女を見てると心配かけられないなと思って、「大丈夫」と笑って答えてしまう。
そして、彼女も自分の顔を見て微笑みながら「そうですか」と答えた。
何故かその笑顔がどことなく懐かしい。