想いよ届け
冬の乾いた冷たい風が吹く屋上で、私は貴方に恋をした。
放課後、屋上のフェンスに寄りかかり、切なそうに空を見上げる横顔に恋をした。
「1人で居て、寂しくないんですか?」
初めて見かけてから数日が経ったある日。
私はついに声を掛けた。私が彼について知っている情報は上履きの色からわかる学年と放課後は必ず屋上にいるということだけだ。私より1コ上の先輩だ。
「別に……」
「じゃあ、なんでいつも切なそうな顔をしているんですか?」
キョトンとした表情を浮かべる彼。
「切ない?」
「そうです。悲しそうな顔をしています」
「別に悲しくない。ただ……お腹すいたな、とはいつも思ってる」
「ポッ」
切ない顔と思っていたのは、お腹がすいたの顔だったことに唖然とし、異音が口をついて出る。
「ポッ?君、おもしろいね」
おもいっきり顔をゆるめて笑う彼。
それを見て、私は彼のことがもっと好きになった。彼の笑顔は間違えようのない、心の底からの笑顔だった。
「じゃあ毎日、食べ物作ってきてあげます」
「毎日?じゃあ休日も?」
信用していない、冗談だと決めつけているような彼の声。
「いいですよ。365日、私が死ぬまで作ってあげます」
彼の眼を見て、どうか気持ちが伝わりますようにと願う。
「君って重いって言われない?」
伝わったのだろうか……
「先輩が初めてなのでわかりません」
「じゃあ、お願いしようかな。死ぬまで」
伝わった。