第3話 光の園
若干変更しました!
俺の目の前には、まさに【大神殿】と呼ぶにふさわしい、様々な光に溢れ、見るものを釘付けにするような建造物があった。
周りの花々は、まるで花自体が発光しているかのように様々な色があふれ、幻想的な風景を作り出している。
しかし、俺の体はそんな美しい景色のことなど意に介さない様に進んでいる。
意識と身体が分離してしまったような感覚だ。
“この中に、自分を呼び寄せるものがいる”
そう、確信できた。
大きな門をくぐり、長い廊下を渡り……大きな広間へ出る。
そして広がった目の前の光景に、俺は目を疑った。
純白の羽根がついた、16柱と二匹の生物が、左右に並んでいる。
(……いや、羽根って!)
内心は大興奮ながら疑問の嵐だ。
(羽根のある種族が存在する世界なのか…いやまて、そういえばラファエルってもの凄い有名な天使の名前じゃん)
そんなことを考えている間も体は歩きを止めない。
一番奥の中央にある席は、自分の主が座るのだろう。
…この体の記憶だろうか?そう理解している。
そこから斜め左右に3m程離れて、入口側に沿って席が設けられている。
自分の席は明らかに豪華な造りをした左奥の席だろう。
その席へ向けて淡々と歩いてゆく俺の体。そして席の前で6対12翼の純白の羽根を背中から解放し、他の者同様に席へつく。
…なんとなく羽根を出している姿がもとの姿なのかこっちの方が落ち着くが、操られているような今の感覚だと気分的にはなんと表現してよいかわからない。
ここで主を待つことが幸福だ、と感じられるのは、元のルシフェルとしての記憶のせいだろうか?
今の自分には、これが本心からなのかと言えば疑問が残る。
ラファエルや他の天使達を見てもまるで機械ような無表情をしている。感情の色が全く見えないのだ。
―――そして鐘の音色が広間に響く。
コツン…コツン…コツン…
足音が聞こえてくると、体が勝手に頭を垂れる。
「うん、楽にしていいよ」
簡潔で何てことない言葉。だが全身に響き渡るような声が耳にはいる。
それと同時に解き放たれる主の波動に、歓喜を覚えた体が身震いをする。
―――我が主。我が神よ…!―――
思考がその感情一色に変わる。
「今日は君たちに任務を与えようと思って来たんだ。きっと楽しんでくれると思うよ」
にこやかにそう言い放った。
「何なりとお申し付けください。我が主」
そう天使達は一斉に声をあげる
。
「うん、ありがとう。それでその任務なんだけど、ある悪魔達を倒してきて欲しいんだ。面子は決めてある。」
そういって懐から紙を取り出す。
「ルシフェル、これ、読み上げてくれるかな?」
「はっ、ありがたき幸せ」
即座に返事をし、考える必要などないと言わんばかりに動く体。
「今回の任務は、悪魔 イポスを討伐することである。 第2柱べリアル、第6柱バアルゼブル、第8柱バルバトス、第10柱サマエルの以下4柱とその配下。最後に指揮官として私、ルシフェルの出撃とする」
「はっ、承りました」
天使達は声を揃えて返事をした。
だが、その表情は相変わらず無機質だ。
「うん、頑張ってね」
ふわりと微笑みながらそう言うと、主は席を立ち広間を去って行く…。
主が姿を消したとたん染まりきっていた意識がもとに戻るが、主の命に体が忠実に働こうとしているのがわかる。
先程までではないが、またも意識が塗り替えられそうな程に思考が揺らぐ。だが不快ではないのだ。
しかしふと重要なことに気がつく。
(って軍の指揮とか一般人だった俺に出来るはずないんだけど!?)
前世での指揮なんて精々小学校の学級委員をやった程度の俺に、軍を指揮しろという唐突の宣告をされ動揺しまくりである。
顔には出ていないはずだが内心あたふたしていると横に控えていたラファエルから声がかかる。
「ルシフェル様、退室しませんと2柱以降の方々も退室出来ませんので…」
「え?あぁ、ごめんごめん」
ひとまず「早くいけよー」みたいな空気に押されながらこの部屋をあとにするのだった




