第1話:不具合
どうもおはこんばんちわわ、永廻境です。
今回は第1章の導入的なそんな感じの雑談回です(`・ω・´)ノ
色々と用語が飛び交いますが、その説明は次回になるかな?(なるとは言ってない)
ここは、都市部の路地裏から秘密の通路を進んだ所にある地下室。
広さは12畳程度、一切の光はそこに入らず、常に混沌としたその空間にはあらゆる実験器具やコンピューターがある。
「メンテナンスはこれで終わりだ。調子はどうだ? 独断戦争」
白衣を纏った艶やかなロングストレートの黒髪を持つ女性、久世美里は、エレベーターのような巨大なカプセルから出てきた布を一枚も纏っていない少女にそう言った。
「悪くないわ。悪いのは今、その名前で呼ばれることね」
そう言うと、独断戦争と呼ばれた少女はカプセルのすぐ隣にかけてある白いタオル(というか手ぬぐい)を手に取ると、その純白の肌から滴る液体が床を濡らす前に拭いていく。
「ふふ、済まなかったよクレハ。独断戦争はあくまで仕事中だけだったな」
そう言って、コンピューターのディスプレイから灯されるブルーライトに照らされる女性は、椅子のすぐ後ろにある試験管を手に取る。
手元を辿れば机には幾つもの同じような試験管が立てられており、全てに赤い粘性のある液体が入っている。
「それ、この前のペネトレーターの血液ね?」
肉体を伝っていた液体を拭き終わったクレハは、タオルを首にかけると若干の興味と疑問を持って問いかける。
「ああ、普段なら調べることもないんだが、件の事件を解決したことから引き続き仕事を頼まれてな」
「続き? 何かあったの?」
「ふむ、クレハ。君はあの時何体のペネトレーターを八つ裂きにした?」
「4体目から数えてないわ」
「52体だ」
「あら、私が(その時点では)生存者から聞いた数より多いわね?」
「君が乱戦している間にも増えていたからね。倍以上増えたというのによくやったものだ」
そう言うと美里は、手にしていた試験管を元の位置に戻す。そして、くるりと椅子を半回転させるとディスプレイを見つめながら、右手でマウスを操作していく。
「これを見たまえ」
そう言いながら美里は、ディスプレイをクレハのいる方向に向け、近づける。
「?」
「君の戦闘記録と録画映像から、分析したグラフなんだが」
ディスプレイの背面を見ているため画面は見えないはずなのだが、特に考える素振りも見せずスラスラと美里はカチカチとクリックを繰り返していく。
画面に表示されたのは、赤い線で表された折れ線グラフだ。縦の軸には出現個体数。横の軸には時間と示されている。
「これは……、時間経過ごとに出現するペネトレーターの個体数のグラフ?」
「その通りだ。見ても分かるように君の戦闘開始を0秒としている。で、問題はここだ」
画面上に浮かぶ白い矢印のカーソルが指したのは、開始0秒から37秒までほぼ平行を保ち続けていた線が急に減少し始めた点だった。
「ペネトレーターの出現数が激減している?」
「うむ、この時何かが起こってペネトレーターの出現が止んだのは確かだ。我々の今回の仕事はそれが何なのかを突き止めることだ」
「ペネトレーターの大量発生……そして、突然それが収まった原因……か、面倒ね」
グラフを凝視しながらクレハは、右手の人差し指を唇で噛む。彼女は、悩む時はいつもこの行動をとる。いわば癖だ。
「いや、原因そのものはもう分かってる」
「へっ?」
悩んでいる所をあっさりと返された。
まるで全力投球したら容易くホームランを打たれたような謎の徒労感がクレハの脳内を一瞬通過する。
「ペネトレーターの出現と減少の原因はこれだ」
美里がディスプレイに表示したのは、黒い箱のような、というより赤いボタンがついただけの一見普通の黒い箱の画像だった。
「リフターク社製、LPD-2024。特殊な電磁波を発生させる装置でその波長は世界の境界を歪ませる」
その言葉を聞いた瞬間、クレハの目の色が変わる。
「境界を歪ませる⁉︎ そんなことしたら……‼︎」
「ああ、ペネトレーターが歪んで脆くなった境界を破って顕現するだろうな。実際そうだった」
「……! あの時のペネトレーターはこれに誘き寄せられたのね⁉︎」
「ああ、このLPD-2……、まあ、ペネトレーター発生装置は本来、フラグメントに属する術者やアンドロイドの実技訓練の最終段階に使われている」
「…………ってことは何?」
クレハの頭の中での思考が最終フェイズに突入した。
そして、彼女の眉間には、深い溝が彫られている。
「あのペネトレーターは人が誘き寄せたもので、誘き寄せた当人たちは予想以上に来ちゃったものだから手に負えなくなってやられたってこと?」
「ま、端的に言えばそうなるな」
「ばっかじゃないの⁉︎」
「落ち着け、それで終わりじゃないんだ」
「………………」
「……そんな嫌そうな顔をするな」
「はぁ、……いいわ、聞かせて」
クレハは、若干前のめりになった体制から再び背筋を伸ばして、美里の目を見る。
一方で白衣姿の彼女は、少し楽しそうに少女を見つめて左頬を釣り上げる。いや、実際楽しいのだろう。
全容をすぐには出さず、徐々に伝えることによって観れる相手の感情の起伏を見ることが……。
「今回出現したペネトレーターには明らかに不自然な行動があった」
そう言って美里は、再びマウスをディスプレイの背面を見ながら操作して、巧みにウィンドウを開閉していく。
画面上の作業はすぐに終わった。
「それは、ペネトレーターが人を襲わず、彼らにとって有益であるはずの発生装置を壊したことだ」
開かれたのはクレハが、大量のペネトレーターと交戦している時に録画された視点カメラの映像だった。
廃墟ビルの一室の中で、左手に持ったサブマシンガンで、巨大な蜘蛛のような怪物の足を吹き飛ばし、右手の刀で脳天を貫くところから再生されたその映像は30秒のところで一時停止された。
そして、奥の映像を拡大すると見ろと一言一喝する。
「この時、このカマキリのようなペネトレーターは装置をその大鎌で破壊している」
拡大された映像は、モザイクがかかったように少しばかり見えにくくはないっているが確かに人間大の何かが持つ鎌のようなものが箱を貫いているのがわかる。
「確かに……でも、なんで?」
「理由は明瞭。この装置が発生した電磁波はペネトレーターにとって害はないが非常に不快なものであるからだ。だが、なぜこれが起こったのか、原因は不明だ」
「普通のペネトレーター発生装置は、そんな電磁波は出さないけど、この装置はそれを出してるってこと?」
クレハは、ディスプレイを前かがみになって覗き込みながら再び人差し指を唇で噛む。
「流石だな、その通りだ」
その言葉を聞いた瞬間、少し指と唇は離れ、右頬が緩む。
「なるほど、つまり今回の仕事はペネトレーター発生装置に前回の事件が起こるように細工したやつを見つけることね」
「うむ、調査には我々47番支部だけでなく他の支部とも連携していく。だから君はまず……」
彼女たちの会話時間は、おおよそ30分。
「・・・・・・まず服を着たまえ」
その間クレハは、文字通り布を一切纏っていない生まれたままの姿だった。
「……君は武器や武術だけじゃなく、乙女の嗜みも身につけたほうがいいと思うのだが」
「だって、ここ襲撃されることなんてないじゃない? 衣服で武装を隠す必要なんてないわ」
「………………はぁ」
いかがでしたでしょう? 一人でも楽しんでくださる方がいらっしゃったのならそれは感激至極に御座います!!(T ^ T)
前回をプロローグとして、今回の投稿で第1話となります(´∀`*)アハッ
いや、続いたよ。吃驚(°_°)
評価してもらえたよ。吃驚(°_°)
(別のとこだけど)コメも貰えたよ。吃驚(°_°)
これからどうなるのか私も分かんないよ。吃驚(°_°)