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17 寂しさ

 最近、子機達と話すのが楽しい。彼らの反応は本物の人間ではないかと錯覚するほどよく出来ていて、違和感のない会話が成立する。笑ったり愚痴を言ったりと感情豊かで見ていて飽きない。これで情緒が未発達だというのだから恐ろしい。

 彼らはパターンに従って反応を返しているだけで、心底楽しんでいたり腹を立てていたりするわけではない。ただ全く感情が無いわけでもないそうで、反応の選択に本人の意思が多少影響してはいるらしい。

 親機であるサニーにも感情が芽生えているそうだ。人のそれとは多少違うらしいが、同じ魂殻から発展した事もあって相互理解が不能なほど精神構造が乖離していたりはしないらしい。少なくとも人と虫よりは近いそうだ。


「和仁は最近清造さんの話ばかりですね」

「ん?いやだってあのにいちゃん面白いんだよ。口がうまくてさ、話してて飽きない。釣り上手いし」

「それは、そのように作りましたから」

「うん、いやそりゃ知ってるけど」

「私も清造さんのように話した方がいいですか?」

「い、いや、それは困るな。あれは清造さんだからいいのであってサニーにやられると反応に困るというか」

「そうですか」

「サニーにはサニーの良さがあるんだからそのままで良いんじゃないかな」

「そうですね、はい」


 なんかちょっと反応が冷たいような。自分の場合こういう反応をするのは……コンプレックスだろうか。自分に出来ない事が出来る人の話を聞かされるのは辛いのかもしれない。本来の性能的に優れている親機が子機にコンプレックスを覚えるというのは変な気もするが、性能ではなく人格というか性質の問題だしな。清造さんと同じ能力を持っていても清造さんのように振る舞うような性格をしていない。サニーの前では清造さんの話は避けた方が無難か。


「あ、そうだ、今日留吉さんのとこにご飯に呼ばれててさ、サニーも行かないか」

「いえ、結構です。昨日の残りもありますし」

「そ、そうか。なんか機嫌悪い?」

「そんなことはありません。いつも通りです」

「そっか。じゃあ、行ってくる」


 なんか怖い。居心地が悪い。何があったんだろう。いたたまれなくなってつい出てきてしまったが、これで良かったんだろうか。と、考えている間に留吉さんの家に着いた。歩いて五分もかからない近所だからすぐに着く。



 玄関を開けて挨拶をすると、すぐに留吉さんが出てきた。この家にインターホンは無い。


「お、かずちゃんよく来たねえ。まあおあがりよ」

「あ、留吉さんこんばんわ」

「どしたい浮かない顔して。なんかあったか?」

「ええ、実は……」


 サニーの反応について掻い摘んで話をすると渋い顔をされた。


「かずちゃんそりゃ駄目だ。サニーちゃん寂しがってんよ、それ」

「寂しい……?ああ」


 そういやそんな感じの反応か、あれ。俺が小学生の頃、仲が良かった友達が他の友達とよく遊ぶようになった時に俺も似たような反応してたわ。俺の交友関係が広がった……広がったって言っても元がサニーなんだが、まあ広がったのが詰まらないのか。


「最近ちゃんとサニーちゃんにかまってたか?仲良くせにゃいかんでしょうが。ほれ、わかったらとっとと帰る」

「でも、せっかく作ってくれた夕食が」

「まーた作ってやっから。ほらしゃきっとせい。帰れ帰れ」

「すんません、また来ます」

「おーう。気ぃ付けて帰れよー」


 追い出された。帰るといってもサニーになんと言えばいいのか。気にかけてるってのはちゃんと言葉にもしてきたつもりだったんだが。ああ、もう着いた、家が近いのも考え物だな、考えをまとめる時間も無い。仕方ない、顔を見れば何か言葉も出るだろう。入ってしまえ。


「ただいまー。夕食中止になった」

「え?」

「え?」


 家に入って居間の中に顔を突っ込めば、目に入ったのは犬ではなく人の姿。誰だこいつは。何か見覚えがあるような。


「和仁?どうして」

「……サニーか?」


 何故人型に。あーあれか、そのうち人型になるみたいな話になってたっけ。しかしその姿は……


「あの」

「なぜ、その姿を?」

「ええと」


 なぜ、俺の初恋の人をチョイスしたのか。

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